作業安全の実現に向けたヒトの内面状態推定技術とは、作業中の人の身体反応を手がかりに、作業者の内面の状態(認知・注意・疲労など)を捉え、作業安全に活用することを目的とした技術です。
私たちNTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)は、内面状態の中でも特に危険への気づきや判断に直結する「注意状態」について、その変化を外部から捉える技術をNTTコミュニケーション科学基礎研究所(CS研)と連携した研究と業務活用を見据えた実用化を推進しています。
私たちが日常的に使っている通信サービスは、屋外に設置された多くの通信設備によって支えられています。これらの設備の運用・保守には、人による現地作業が欠かせません。
一方で、通信設備の現場作業では、電柱や電線に関わる高所作業、通電設備の取り扱い、地下空間での作業など、さまざまな危険を伴う場面があります。
NTTグループでは、こうした現場を支える作業者の安全を守るため、人身事故ゼロ化を目標に、安全対策や安全意識向上の取り組みを継続的に進めています。
作業の安全性を高めるためには、作業手順や安全器具の整備だけでなく、作業者が危険をどのように認知し、どこに注意を向けているかといった内面状態が重要になります。
例えば電柱の点検作業では、作業者は電柱を昇りながら、
といった複数の危険要因に同時に注意を向けています。
こうした認知や注意の在り方は作業者の内面で生じるため、周囲からは把握しにくいという課題があります。実際には、「認識していたつもりだった」「一瞬注意が逸れた」といった内面状態のわずかなずれが、事故につながるケースも少なくありません。
この見えにくい内面状態を捉える手がかりとして、CS研との連携により瞳孔の変化と内面状態(特に注意状態)との関係に着目した技術検討を進めてきました。その結果、瞳孔のわずかな変化から、秒単位で作業者の注意状態を推定できる手法を見出しました。この成果により、作業安全に深く関係する注意の変化について、身体反応を手がかりに内面状態を捉える新たなアプローチの可能性が見えてきています。

私たちAS研はこの手法を活かし、作業者の注意が危険箇所へ適切に向けられていることをチェックすることで、事故防止につなげるシステムの実現をめざしています。今回は、作業者の安全意識向上をめざし、目視による危険箇所への注意状態を評価できるVR研修システムを実用化しました。本システムでは、VRゴーグルから取得したアイトラッキング情報を基に、作業映像上の危険箇所に対するユーザの瞳孔の変化から、ユーザが危険個所に対して正しく注意を向けているかを分析し、その結果をフィードバックすることができます。
これにより、ユーザ自身が自分の注意の向け方や見落としに気づき、より安全な作業行動につなげることが可能となります。

実作業において作業者の注意をリアルタイムに評価し、作業安全を支援するシステムを実現するためには、外部環境の変化や作業条件、個人差など、内面状態に影響を与えるさまざまな要因に頑健に、低コスト・高速に内面状態を推定できる技術へと発展させていく必要があります。
今後は、作業者の内面状態(認知・注意・疲労など)をリアルタイムに把握できる技術について、引き続きCS研と連携しながら研究開発を進めていきます。これにより、作業者の状態に応じた安全支援の高度化に貢献していきます。
内面状態推定技術ってなに?
人の目(瞳孔)などから、注意してるかどうかを見える化する技術だよ。
どうしてそういう技術が必要なの?
作業中の事故は、ほんの一瞬の見落としや注意のズレといった、小さなミスがきっかけで起きることがあるからね。だから、その「気づきにくい状態」を把握することが大切なんだ。
なるほど、見えない「注意」を見えるようにして、事故を防ぐための技術なんだね!