TsuKuBa 年史-TsuKuBa History -

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コンクリート構造系設備の技術

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アクセス系の通信基盤設備では、とう道やマンホール及び電柱にコンクリートが使用されています。アクセスサービスシステム研究所では、コンクリート構造系設備に関し次の技術の開発を行ってきました。

(1) とう道に関する技術

とう道の建設から維持管理までを目的として以下のような技術開発を行ってきました。

  1. シールド工法は、非開削でとう道建設を行うために開発された工法で、土砂崩壊を防ぐために、鉄またはコンクリートの形わくを掘削面に当てながら掘削を進めます。NTTでは、シールド工法を1963年に初めて東京・白金電話局のとう道工事で採用しました。研究所では事業の要求に対応するため、シールド工法の開発を進めてきました。

  2. ケーブル収容率が設備容量限界に近い状態のとう道が多くなってきたため、本来の防災壁の機能を損なうことなくケーブルの高密度収容を可能にする多条収容止水装置を2002年に開発しました。

  3. アクセス系ケーブルを効率的に収容するため、シールド式とう道の任意の位置からケーブル分岐を可能とするSTICを1985年から1987年にかけて開発しました。

  4. シールド工法により建設されたとう道の維持管理を効率化するための評価技術として、2009年にシールドとう道の使用性能評価技術、2013年にシールドとう道の構造性能評価技術を開発しました。

  5. 2016年に、とう道点検における計測稼働の削減や点検データの定量化を目的に、点検現場への導入が進められているタブレットPCを活用した劣化部位計測技術を開発しました。

  6. 2021年に、とう道点検の効率化と安全性の向上を目的として、画像認識を用いた劣化の検出と劣化の計測を自動的に実施する変状計測技術を開発しました。

(2) マンホールに関する技術

マンホールの強度や安全性、信頼性の向上および軽量化を目的として、以下のようなマンホールの技術開発を行ってきました。

  1. 1972年に、早期交通解放、作業能率の向上と安全確保を図る、分割型のプレキャスト化したセメントコンクリート製ブロックマンホールを開発。

  2. 1975年に、蓋高調整の容易な接着接合による築造ブロックを用いたマンホール首部築造工法を開発。さらに、2002年に、高強度材料の採用と材料特性に基づく構造変更により、十分な強度を保ちつつ軽量化した新型MH(マンホール)鉄蓋・首部を開発。

  3. 2005年に、安全に除雪作業が可能で、除雪車のブレードの衝撃に対する耐久性に優れた積雪地域用マンホール鉄蓋を開発。

  4. 2007年に、マンホール首部構造へ新素材「超高強度繊維補強コンクリート(UFC)」等を導入して長期的な安全性・信頼性の向上を実現。

  5. 2011年に、無筋マンホールの早期解消を目的として、標準補強工法より経済的な無筋マンホールの簡易補強技術を開発。

  6. NTTは、全国に約68万個のマンホールを保有し、5年周期でマンホール鉄蓋の定期点検を行っています。車道上に設置されることが多い鉄蓋は、車両荷重等の影響で上蓋と受枠に段差が生じると蓋飛び事故につながる恐れがあるため、設備不良の有無を確認し、補修・補強、更改を施すことが重要です。現行の点検方法は車道上に保安施設を設置し、点検者がノギス等を用いて段差を計測するが、事業会社では路上作業の安全性と作業性の向上が実現できる点検方法の導入が望まれています。そこで、2013年にデジタルカメラで撮影したマンホール鉄蓋の画像から、段差箇所を自動的に検知し、最大段差の位置と段差量を計測可能なデジタルカメラ画像を用いたマンホール鉄蓋の段差検知技術を開発しました。また2015年にはデジタルカメラ画像から鉄蓋表面の摩耗度判定するデジタルカメラ画像を用いたマンホール鉄蓋の摩耗度判定技術を開発し、1枚の画像から段差計測と摩耗度判定の両方を実施することが可能となりました。
    2019年に、現在一律5年周期のマンホール鉄蓋定期点検に対し、過去の点検データの統計解析により劣化推定モデルを構築し、劣化特性に応じたグループ化を実施することで点検稼動の低減を図る「マンホール鉄蓋の劣化予測技術」を開発しました

  7. マンホール維持管理手法
    マンホールの今後の老朽化進行を踏まえ、劣化設備の早期発見等の適切な維持管理が求められています。そこで、従来のようなすべてのマンホールを同じ維持管理基準ではなく、劣化予測等を活用して不良の可能性が高いマンホールは早期に点検し、不良の可能性が低いマンホールは点検周期を延伸するなど、設備個々の状態に応じたメリハリのある維持管理手法の開発に取り組んでいます。
    劣化したマンホールを早期に発見するため、これまでの点検データを分析し、劣化の可能性が高い設備から点検できるよう優先順位付けする「点検プライオリティ付け技術」やコンクリート内の鉄筋の腐食進行速度からリスク管理水準への到達時間を算出し点検周期とする「点検周期の最適化」開発を行いました。
    また、2019年に鉄筋コンクリートマンホールを首部長によりグルーピングし、より適した点検周期を設定する「鉄筋コンクリートマンホールの劣化予測技術」を開発しました。更に2021年には、点検データから設備に内在する劣化要因を推定することで点検を効率化する「鉄筋コンクリート(マンホール)の劣化予測技術」を開発しました。
    そして2023年には、1993年の車両制限令改定以降行えていなかった現実に近い安全性評価をFEM構造解析により実現する「旧規格マンホール設備の安全性評価技術」を開発しました。

  8. マンホールをより安心・安全に使い続けていくため、2015年に劣化状況に応じた「マンホール耐力評価技術」により、定量的かつ簡易な補修・補強判断基準を設定しました。

  9. 2017年にマンホール鉄蓋の表面模様の抜本的見直しにより、維持管理コスト削減と路上作業縮減に貢献する新型マンホール鉄蓋(テーパーダイア鉄蓋)を開発しました。

(3) コンクリート構造物の非破壊検査技術

現在、我が国では高度経済成長期に建設され、老朽化した社会資本ストックの維持管理と更新が重要な課題となっています。設備の安全性を確保するには、設備の状態を詳細かつ高精度に把握しておく必要があります。非破壊検査は、設備を「破壊しない」で状態を評価する手法であるため、大規模な設備全体に対して適用することができ、劣化状態を効率的に評価できるといった利点があります。

図1に、鉄筋コンクリートの劣化過程を人間の病状進行に例えて、鉄筋コンクリート構造物の維持管理の現状とあるべき姿を示します。病気の場合、定期的な健康診断で発病前の潜伏期で病状が発見されれば、深刻な状況にならず、大手術を施す必要がありません。コンクリート構造物に対しても目に見える劣化が発生する前の段階で、効率的な手立てを施すことが重要です。
そこで、研究所では、既設設備の永続的な維持管理の実現を目指して、非破壊検査を用いた高精度な設備評価技術の開発を行ってきました。

RC構造物維持管理の現状とあるべき姿

図1 RC構造物維持管理の現状とあるべき姿

† 巨視的超音波法:コンクリートから反射される散乱現象の生じている波を散乱波のままマクロ的(巨視的)に受信し、受信波に含まれる目的外の散乱波(反射波)を低減除去することにより、目的とする反射波を鮮明化する計測技術

(4) コンクリート柱のひび割れ検査技術

コンクリート中鉄筋の腐食では、腐食生成物の膨張圧力でコンクリートにひび割れが発生します。このひび割れはコンクリート表面に到達して拡大し、剥離等が発生すると鉄筋の腐食は一層加速されます。
研究所では、機械によるひび割れ検査の自動化のため、2011年にデジタルカメラ画像を用いたコンクリート構造物のひび割れ検査技術を開発しました。
NTTが保有・管理するコンクリート柱は全国で約800万本あり、このコンクリート柱を安全な状態に保つために日常・定期点検を実施しています。具体的には、目視または双眼鏡を用いたひび割れ状態の確認や、超音波センサによる非破壊検査での地中部や貼紙防止シート部に潜在するひび割れの探査、磁気センサを用いた非破壊検査によるコンクリート柱の内部劣化の探査を行っています。しかしながら、微細なひび割れや内部劣化を的確に捉えるためには、いずれの点検においても、点検者に視力や体力だけでなく専門的知識や技能、熟練度も求められています。最近では、膨大な量のコンクリート柱に対する点検稼働量に対して熟練した技術者の人数が減少してきており、点検の質と量の両立が難しくなってきています。
NTTが保有・管理するコンクリート柱は全国で約800万本あり、このコンクリート柱を安全な状態に保つために日常・定期点検を実施しています。具体的には、目視または双眼鏡を用いたひび割れ状態の確認や、超音波センサによる非破壊検査での地中部や貼紙防止シート部に潜在するひび割れの探査、磁気センサを用いた非破壊検査によるコンクリート柱の内部劣化の探査を行っています。しかしながら、微細なひび割れや内部劣化を的確に捉えるためには、いずれの点検においても、点検者に視力や体力だけでなく専門的知識や技能、熟練度も求められています。最近では、膨大な量のコンクリート柱に対する点検稼働量に対して熟練した技術者の人数が減少してきており、点検の質と量の両立が難しくなってきています。
このような背景を受け、NTTアクセスサービスシステム研究所では、点検者の技能や熟練度によらずに現行の点検よりも正確かつ効率的に点検できる手法の確立を目指し、コンクリート柱点検診断技術に関する研究開発を進めてきました。具体的には、目視によるひび割れ確認と超音波センサによるひび割れ検査の代替技術としてNTTマイクロシステムインテグレーション研究所との共同開発により2011年にデジタルカメラ画像を用いたコンクリート構造物のよるひび割れ検知技術、および、2012年にミリ波イメージングによる貼紙防止シート下のひび割れ検知技術を開発しました。また、磁気センサを用いた内部劣化の探査の代替技術として2012年に打撃固有振動モード解析による健全度診断技術を開発しました。

(5) コンクリート電柱の補強技術

NTT東西が所有するコンクリート電柱には、電話線だけを載せる単独柱と、電力会社と共用する共架柱があります。
経年劣化したコンクリート柱を建て替える場合には、電線の移設のために仮電柱の設置や用地の確保など、多くの作業と時間が必要になります。
研究所では、コンクリート柱を撤去することなく継続して利用可能とするために、コンクリート柱の補強技術の開発を行ってきました。この技術は、コンクリート柱を建て替える場合に比べ、工事を簡便、短期間、低コストで行えるようにするとともに、環境面でも有益です。
図2に示す、アラミド繊維シートとアラミド繊維ロッドを使用したコンクリート柱補強技術の開発を行ってきました。

コンクリート柱補強工法の種別

  • アラミド繊維:工業用高機能素材として開発された全芳香族ポリアミド繊維という非導電性の有機繊維で、軽量、高強度で、耐衝撃性、耐蝕性が高い。
  • アラミド繊維シートは、アラミド繊維を一方向または二方向に配列してシート状にした材料
  • アラミド繊維ロッドは、アラミド繊維を組紐状に編み、エポキシ樹脂で硬化したコンクリート用の 補強筋および緊張材

図2 コンクリート柱補強工法の種別

2001年に、アラミド繊維シートを用いた電柱補強技術を開発し事業導入しました。しかし、アラミド繊維シート補強技術では地際部の掘削が必要であり、掘削が不可能な場所には適用できなかったため、2004年に地際部の掘削ができない場所でも適用が可能なアラミド繊維ロッドを用いた中空充填補強技術を開発し共架柱に導入しました。さらに、2005年に、単独柱にも適用可能な中空充填補強工法を確立しました。

(6) その他

架渉ケーブルの地上高や外径電柱の計測など、屋外作業の効率化と迅速化のために、2001年にデジタルカメラの写真から画像処理によりこれらを計測する電柱計測ツールを開発しました。

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