通信用トンネル(とう道)の点検では設備状態を目視で確認し、変状を確認した場合に補修の必要性や優先度を判断するために変状の計測を行います。変状の計測は現地で点検員がメジャーを用いて計測しているため多くの稼働が発生します。さらに、手が届かない場所は脚立等を用いて計測を行うため不安全な作業が発生します。
そこで、点検の効率化と安全性の向上を目的として、デジタルカメラで撮影した構造物の画像から自動的に劣化の検出と劣化の大きさを計測できる変状計測技術を確立しました(図1)。
画像から劣化の実際のサイズ(実サイズ)を計測するためには、劣化の場所(画素領域)の検出と画像中の大きさを実サイズへ変換するための尺度(画素分解能※1)が必要です。本技術はStep1「設備・変状の検出」において画像中の各種設備・劣化の画素領域を検出します。Step2「変状の長さ計測」において画素分解能を算出し、変状の実サイズを計測します。各Stepの詳細機能を以下に記載します。
とう道に発生した90本の露筋を対象に、変状計測技術の性能検証を行いました。変状計測技術による露筋の計測値と現地でメジャー計測した実寸長と比較しました(図2)。メジャー計測と本技術により計測した露筋の長さの相関関係は0.96と高い値を得られました。この結果から本技術による計測値は劣化の規模を把握できる精度であるため、実運用における補修要否や優先度の判断に活用できます。
本技術によりメジャー計測や計測時に用いる脚立での作業が不要となるため、点検業務の効率性と安全性の向上が可能です。
※1 画素分解能
1画素(pixel)あたりの実サイズ(mm)のこと
※2 露筋
鉄筋コンクリート構造物に起こる不具合の一つで、内部鉄筋の腐食膨張により表面コンクリートが押し出され剥離し、腐食鉄筋が露出した状態になる現象