マンホール補修・補強方法の簡易判定技術
マンホールをより安心・安全に使い続けていくため、劣化状況に応じたマンホールの耐力評価を行い、適切な対応方法を選択できるよう定量的かつ簡易な補修・補強判断基準を設定しました。
(1) 劣化マンホールの耐力評価
マンホール上床版の耐力低下の要因は鉄筋の腐食に伴う鉄筋断面積の減少にあることから、マンホール上床版の鉄筋腐食モデルを作成し、FEM解析により耐力評価を行うこととしました。
鉄筋腐食モデルを作成するため、マンホール点検写真により上床版の露筋状況を精査しその傾向を分析した結果、一方向に複数本現れる露筋傾向を確認しました(図1)。この露筋傾向は、露筋部分の割合が多く上床版全体の平均鉄筋腐食率が高いと想定されることから、この一方向に複数本現れる露筋をベースに最大鉄筋腐食モデルを作成しました。
この最大鉄筋腐食モデルにマンホール上床版に想定される最大荷重が加わった時の挙動についてFEM解析にて検証したところ、耐力評価の対象とした10種類のマンホールのうち2種は壊れてしまう可能性があることが分かりました。
(2) 補修・補強判断基準の設定
耐力評価により、最大鉄筋腐食モデルでも壊れてしまう可能性が低いと判断された8種のマンホールについては、露筋が確認されても、補修による対応で安全性が確保できることが分かりました。一方、そのほかの2種(旧規格4号、5号)においては、鉄筋腐食が進んだ場合、補強による耐力回復を図る必要があることが分かりました。そこで、詳細な補修・補強判断基準を設定することとしました。
基準の設定にあたっては、点検者が見た目だけで容易に判断できるよう簡易かつ明確な基準とすべく、露筋の本数で判断が可能かについて検証しました。そこで、鉄筋が何本以上露筋した場合に補強が必要となるか、最大鉄筋腐食モデルから露筋本数を1本ずつ減らしながら繰り返しFEM解析を行うことで、補修と補強のしきい値を設定しました。
その結果、露筋本数等に基づく、劣化マンホールの補修・補強判断基準を設定することができました(図2)。