鉄筋コンクリートマンホールを首部長によりグルーピングし、より適した点検周期を設定する技術について紹介します。
(1) 背景
NTTが保有する通信用マンホールの大半は鉄筋コンクリート製であり、経年劣化の懸念があります。既往の研究より、マンホールの躯体の中で劣化しやすい部分は上床版であり、鉄筋の露筋からリスク管理水準までの到達時間は10年以上であるため、現在の点検周期は一律10年となっています(詳細はこちら)。しかし、マンホール設備の維持管理コストの最小化は引き続き課題となっており、劣化の特性に応じた維持管理の適正化が求められています。
(2) 技術のポイント ①結露が腐食を促進させる
上床版の露筋の腐食速度を促進する要因を調査するために、実際のマンホールに温湿度計と、露筋を模擬した腐食量調査用の鉄筋サンプルを設置しました。その結果、上床版温度とマンホール内気温の間に温度差が生じ、結露が発生すること、そしてその結露があるマンホールにおける鉄筋の腐食量は大きいことが明らかになりました。鉄の腐食には酸素と水が必要ですが、結露によって水分供給がなされた結果、鉄の腐食速度が大きくなったと考えられます。
(2) 技術のポイント ②首部長が短いと結露が発生しやすい
具体的にどの程度温度差が生じると結露が発生し腐食速度が大きくなるのか、ACMセンサを用いた実験により検証しました。その結果、結露は上床版温度とマンホール内気温との温度差が1℃以上になると腐食を促進させる程度までに成長することがわかりました。そこで、実際のマンホールにて温度差が1℃以上となっている時間を「結露時間」としたところ、「結露時間」はマンホールの首部長(深さ)と相関があることがわかりました。マンホール上床版温度と気温の間の温度差は、主に冬に地上の冷温が上床版に熱伝導することで発生しますが、首部長が長いと冷温があまり伝わらず、結露が発生しないためと考えられます。実際のマンホールで検証した結果、首部長が110cm以上になると腐食量が小さく、露筋からリスク管理水準に到達するまでの時間が20年以上であることが分かったため、点検周期を20年へ延伸することが可能であるという知見を得ました。