社会環境の急激な変化に伴う多様性に対応するため、サービス・商品を提供するための業務プロセスが複雑化しています。このような複雑な業務プロセスの改善には、網羅的・客観的なデータに基づいた正しい業務プロセスの把握・分析が重要となります。NTTアクセスサービスシステム研究所では、これらの課題を解決するため、2つのNTT技術を具備したプロダクトとして「操作プロセス分類型業務デザイン支援技術」を開発しました。
一般的に業務改善を進める場合、「現状把握」「分析・改善計画立案」「改善案実行」のステップを踏む必要があります。「操作プロセス分類型業務デザイン支援技術」は、これらのステップを現場ですぐに実践できるツールとして、PC端末上で行われた操作をログファイルとして出力し、業務の現状把握を支援する「ログ取得ツール」、出力されたログファイルを分類・可視化し、分析・改善計画立案を支援する「分析ツール」、分類・可視化した結果から自動化シナリオの編集・RPAシナリオファイル生成をサポートし、改善案の実行を支援する「自動操作シナリオ編集ツール」を提供しています。(図1)
これらのツールを利用することにより、分析者はPC端末上で行われる作業の客観的・網羅的な情報を取得したうえで、その情報を可視化することによりさまざまな観点での分析が可能となります。これにより、従来のヒアリングや市中ツールなどの方法よりも効果的に業務の問題点抽出を行うことができ、現場主導DXにおけるRPA適用だけではなく、BPM(Business Process Management)のような一般的な業務改善活動にも適用することが可能になります。
次に操作プロセス分類型業務デザイン支援技術の中核をなす2つのNTT技術について解説します。
■NTT技術の特長1 業務モデル導出技術
業務モデル導出技術は、分析ツールに組み込まれており、実際の業務で発生し得る入替り、手戻り、割込といった操作の揺らぎを吸収しつつ、作業ごとに操作イベントを自動分類する技術です。(図2)
本技術は、連続する操作イベントの共起性に着目し、任意の長さの複数の操作イベントから互いに共起する回数をカウントし、各操作イベントを共起ベクトルとして表現します。そして、操作イベント間の関連の強さを、共起ベクトルをもとにコサイン類似度によって算出しています。コサイン類似度が近い操作イベントを1つのまとまりとして判定することで作業グループごとにログを分類することができます。ここで作業グループとは同じ作業に該当する複数の操作イベントの集合として定義しています。この技術により、実際の業務で発生し得る入替り・手戻り・割込といった操作の揺らぎが発生していたとしても、同一作業グループとして正しく分類することが可能になります。
■NTT技術の特長2 メインフロー抽出技術
メインフロー抽出技術は、分析ツールのプロセス可視化に組み込まれており、各作業グループの業務プロセスにおいて操作頻度が高く改善効果が期待できるメインフローを特定する技術です。(図3)
本技術はゲノム解析等で用いられる複数の文字列を整列させるシーケンスアライメント技術を応用することで、上述の作業自動分類技術で分類した作業グループに対し、同じ操作イベントが同じ列になるよう整列させることができます。さらに共通して出現する頻度の高い操作イベントを抽出し、抽出した複数の操作イベントを時系列に結びつけることで、改善効果の高いメインフローの特定が可能になります。