TsuKuBa 年史-TsuKuBa History -

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管路系設備の技術

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NTTは通信用ケーブルを保護し収容するための管路系設備を地下に埋設しており、電話やインターネットを利用した多種多様な情報通信サービスを支えています。
アクセスサービスシステム研究所では、管路系設備に対して (1)構築に関する技術、(2)点検診断に関する技術、 (3)補修・再生に関する技術、について様々な技術開発を行ってきました。

アクセス網の通信基盤設備の種類

(1) 構築に関する技術

  1. 管路設備を構築する際には、道路を掘削し管路を埋設する開削施工、掘削することなく管路を埋設する非開削施工があり、それぞれについて開発を進めてきました。

    開削施工に関する技術としては1984年に小型バックホウを開発し、歩道等の狭隘な箇所に乗り入れ小幅掘削が可能となり当時の施工能率を大幅に向上しました。
    掘削後の構内で管路を安全に布設するための土留め技術についても開発し、1975年に、DK式土留め装置、1984年に小幅溝土留装置を開発しました。その後1985年には、掘削構内へ入溝することなく管路の布設までを実施可能なSAPIC工法を開発しました。
    また、地下空間は都市機能の高度化に伴い、通信・電力・上下水道の埋設物が張り巡らされているため、埋設する管路は複雑な曲げ加工を必要とする場合が多くなり1982年に、金属管の曲げ加工方法としてPS管ベンダを、1988年に、硬質塩化ビニル管の曲げ加工方法としてV管ベンダを開発し、安全かつ高精度に曲げ加工が可能となりました。
    管路を布設した後には掘削溝を埋戻す必要がありますが、昭和40年代の初頭より道路管理者の意向を受けて大幅に採用されてきた砂、砕石等の材料を用いた入替工法は、昭和50年頃から材料採取による環境破壊や残土捨場の不足が懸念されていました。そのため、1979年に、掘削時の発生土を有用な埋戻し材料とする事が可能なソイルミキサ車を開発し、同年に、構内に入る事無く埋戻し材料を十分締め固める事が可能な加圧式コンパクタを開発しました。また、1994には、発生土に石灰を添加・混合して埋戻し材料として再生利用するSRシステムを開発しました。
    開削施工の場合は歩行者、車両通行への支障及び地域住民の迷惑を極力防止するため、1日の作業終了時には掘削溝を埋戻していますが、再掘削が必要な箇所へ土砂を埋戻すと2重作業となるため、1988年に、経済化及び効率化を目指し簡易に埋戻し及び再掘削が可能な仮埋戻し材を開発しました。

    非開削施工に関する技術としては、1975年に、電電型削進機を開発し、その後、1984年に、エースモール(ACEモール)を開発した事により、交通量の増加などによる開削施工の困難な箇所についても管路埋設が可能となりました。エースモールについてはその後も改良を重ね、関東ローム層などの粘土質地盤に対応したコンパクト型の「PC-10」、同長距離用の「PL-30」、さらに砂礫地盤に対応したコンパクト型の「DC-15」、長距離用の「DL-35/50/70」、振動させながら掘削していく「VLシリーズ」などを開発してきました。
    2001年には、完全な非開削化を実現した最新鋭の次世代エースモールを開発し、2004年には、エースモールVL工法によって適用先を従来のφ250 mmからφ450 mm中口径管路まで拡大しました。
    NTTでは、研究所が開発したエースモールが通信管路工事以外の多方面に活用されるように、1987年に関連機器のレンタルや施工、管路診断や非破壊検査、コンサルティングなどを担う企業としてアイレック技建(株)を設立しました。1992年には、通信建設会社をはじめとする関連企業参加によるエースモール工法協会が結成され、現在ではNTTの工事だけでなく下水道などの他社埋設管の布設等に幅広く利用されています。

  2. 地下配線方式はお客様宅へ地下からケーブルを配線する方式で通信設備として信頼性が高く、保守時における作業性、安全性の面からも、電柱を用いて架空に直接ケーブルを配線する架空配線方式と比べ優れているほか、都市景観との調和が図れる等の特徴を有しているため社会的にも地下配線方式に対する要求が高まっています。しかし、「建設工事費が架空配線方式に比べ高い」「工事期間が長いため地域住民の協力を得にくい」という問題点を抱えていました。このような状況下で地下配線方式を推進するため開発を進めてきました。

    昭和初期の連担地域配線方式をはじめとして、1973年には、歩車道の区別のある道路に適用するUG-P方式、歩車道の区別のない道路に適用しケーブルの接続部にハンドホールを使用するUG-H方式を開発しました。
    また、同年に、住宅地等に適用し管路を用いずケーブルを直接埋設するUG-B方式を開発しました。

    しかし、当時の地下配線方式は、電柱にケーブルを添架し配線する「架空配線方式」に比べ約10倍の建設費用がかかる事や施工性が悪いなどの問題があったため、1985年にSUD-1方式を開発しました。SUD-1方式はUG-H方式の改良方式で、ケーブル接続部のハンドホールを小型化し長尺可とう管を使用する事を特徴としています。
    さらに、1988年にはSUD-2方式を開発し、ハンドホールの設置数を削減する事が可能となり建設費用削減を実現しました。

  3. 1980年代までの設計思想では、管路内に土砂が流入しケーブル布設及び撤去に支障をきたさないように管路の中だるみを避けてきましたが、ダクト止水栓の改良や後述する管路洗浄技術などの導入により技術的に実現できる見通しがついたため、1990年に、U-Line管路方式を開発しました。
    U-Line管路方式を導入した事により、既設の埋設物をかわすために新たにMHを追加する必要が無くなり建設費用を削減する事が可能となりました。

    1990年代後半から、メタルケーブルを用いたインターネット接続サービス「フレッツ・ADSL」を商用開始し、2001年には光ケーブルを用いた「Bフレッツ」を商用開始しました。これらIP系サービスの拡大とこれに伴う光ファイバケーブルの布設の増加に対応するため、1993年に、既にケーブルが入っている管路の内部にインナパイプと呼ばれるケーブル保護パイプを布設し、最大3条までケーブル布設が可能な多条布設方式を開発しました。
    また、通常NTTでは、呼び径φ75mmの管路を必要なケーブル数に応じてマンホール間に布設する多条多段方式により管路を構築していますが、ケーブルの収容率の向上及び設備のコストダウンに向けて、フリースペース管路設備の開発を進めました。

    特に重要なケーブルが多条数存在するルートのフリースペース化と経済化及び信頼性向上を目指して、φ250mm~φ500mm程度の管路の内空間をスペーサ―と呼ばれる小径の管で区分してケーブルを収容する中口径管路方式を開発しました。
    中口径管路方式は現在2種類あり、1994年にスペーサ―の隙間をモルタルによって充填する内空充填中口径管路方式を、1999年にスペーサ―間の隙間を充填せずに設備容量の柔軟性を向上させたフリースペース中口径管路方式を開発しています。

    また、少条数区間のフリースペース化と経済化を目的として、1999年に、φ150mmの管路にφ75mm管路3本分のケーブルをまとめて収容可能にする事で、管路構築時の建設費用削減と新たにケーブルを布設する際の空間を確保可能なフリーアクセス(単管)方式を開発しました。さらに、2003年には、中口径管路方式と同様にスペーサ―を用いる一般管路区間用φ150 mm 管路方式を開発しました。

(2) 点検診断に関する技術

  1. 地下空間は都市機能の高度化に伴い、通信・電力・上下水道の埋設物が張り巡らされているため、管路布設の際には埋設管の位置を確認するために試験堀を実施していましたが、それでも埋設管に傷をつけるなどのトラブルが発生していました。そこで、1988年に、道路を掘削せずに精度良く地下埋設物を調査する技術としてエスパー(ESPAR)を開発しました。

  2. 管路はケーブルを新増設する場合、または老朽化に伴い更改する場合など、タイミングを捉えて点検を実施する必要があります。ケーブル布設に関する点検は、マンドレルと呼ばれる試験体を管路内に通過させる事により、ケーブル布設が可能な空間があるか否かを確認しますが、試験体が通過出来なかった場合には客観的に原因を把握する必要があります。

    1970年代までは、管路の診断を全て作業員の感覚的な判断に頼るしかありませんでしたが、確実に不良状態を把握し適正な補修を実施するため、1982年に、高解像度ビデオカメラ・FRP(Fiber Reinforced Plastic)ロッドを用い管路内に押込み施工が可能なパイプカメラを開発しました。また、2006年に、既にケーブルが1本入った管路内にケーブルを追加布設(多条布設)する際の事前点検用に、狭い空間内に挿入できるよう先端のカメラ部分を小型化した多条布設用パイプカメラを開発しました。

  3. 橋梁に添架されている管路については目視点検にて劣化状況を判定していますが、約1割強は大河、渓谷、高速道路越しなどの点検困難な条件下にあり、足場の設置や大型車両などの使用等大がかりな作業となっていました。そこで、1991年に、テレビカメラを橋梁の欄干越しにアームを張り出し、安価で迅速にかつ簡易に点検可能な橋梁添架設備点検技術を開発しました。その後、2020年に劣化判定の効率化を図るため、点検時に撮影された画像に対して、画像認識AIを用いた錆の検出技術を開発しました。さらに2021年には、橋梁添架管および添架金物の錆による劣化判定を自動化するため、画像中の橋梁添架管および添架金物と錆を高精度に認識・検出し、腐食面積率を自動で推定する技術を開発しました。

(3) 補修・再生に関する技術

不良が発見された管路は、道路を掘削して不良部分を取除く開削施工と、管路の両端にあるマンホールやハンドホールを利用して管路内面から補修する非開削施工があり、それぞれについて技術開発を進めました。また、橋梁に添架された管路に対する補修技術に関しても開発しています。

  1. 開削施工を実施する際に、不良管路が多条並び多段積みの中央に発生した場合、不良管路の周りにある管路にケーブルが入っていない空管路であれば、その管路を切断して作業スペースを確保する事が可能ですが良好な管路を傷つける事になります。また、不良管路の周りにある管路にケーブルが入っている場合には、補修を諦めて増管を行うか、一旦ケーブルを取除く必要があり、莫大な費用が必要となります。そこで、1986年に、ジャッキにより周りの管路を押し広げ、中央の不良管路を露出し補修を可能とするパイプスレッダを開発しました。

  2. 道路掘削が伴う開削施工は管路構築時と同様に、工事費が高く工期が長期間に及ぶ事や、即時サービス提供が難しいこと、また、路上作業により交通渋滞や騒音などの問題が生じることなどから、縮減が求められているのが現状です。そのため、アクセスサービスシステム研究所では非開削施工技術に特に注力して開発を進めています。
    不良管路の原因の大半は、経年劣化による錆腐食及び土砂流入であるため、まず、それら管路内の異物(錆・土砂)を除去した後に管路を再生する技術が必要となっていました。
    ケーブルが入っていない空管路内にある異物(錆・土砂)を除去する技術として、1984年に、高圧水を噴射する回転ノズルを管路内に引込み洗浄する事で異物(錆・土砂)を除去する空管洗浄技術を開発しました。
    その後管路を再生する技術として、樹脂により金属管の内面に新たな被膜を成形するライニング技術を開発しました。
    ライニング技術の先駆けとして、1984年に、管内面ライニング技術を開発しましたが、施工の際に多くの工程が必要で施工性が悪く工事費も高額であったため、1999年に、1/3の工程で施工可能でライニング膜を1.5mmから0.3mmにまで薄くした超薄膜ライニング工法を開発し補修費を削減しました。
    さらに、2001年には、負圧式ライニング工法を、2002年には、TMライニング工法を開発し、補修費の削減と適用管路の拡大を図りました。
    ライニング技術では、部分的な不良に対してもマンホール間全てを一挙に補修してしまうため、1988年に、部分的に補修可能な方法として管内面部分塗装技術を開発し経済化を図りました。

    また、機械的損傷を受け部分的に偏平した管路を補修するための技術として、1986年に、偏平(金属管)矯正技術を、1988年に、偏平(塩ビ管)矯正技術を開発しました。1995年には、部分的な偏平ではなく屈折・急曲した金属管路を補修する技術として、鋼管線形矯正技術を開発しました。

    2000年代中盤において、光サービスの拡充に伴い光ケーブルとメタルケーブルの重畳期を迎え、特に都市部では管路設備が逼迫してきたため、管路の有効活用を目的として既にケーブルが1本入った管路内にケーブルを追加布設する、多条布設が行われるようになりました。
    しかし、経年劣化が進んだ管路の増加により、多条布設が困難な場合が増えたため、不良となった管路を補修し多条布設が可能な管路に再生させる技術が求められました。
    既にケーブルが1本入った管路(ケーブル収容管)に対しても、空管と同様に管内の異物(錆・土砂)を除去し再生する必要がありますが、空管用の技術と異なるのは、既設ケーブルを撤去せず管内に残したままで補修し,かつ,補修時に通信に影響があるような損傷をケーブルに与えてはならない点であり、サービス提供中のケーブルが収容されているというデリケートな環境下で不良管を補修・再生する技術の開発を進めました。

    ケーブル収容管に生じた異物(錆・土砂)を除去するための技術として、空管と同様に洗浄技術について開発を進め、2010年に、72穴高圧洗浄技術を開発し、2013年には適用管路の拡大及び経済化を図った回転ノズル式洗浄技術を開発しました。

    また、ケーブル収容管の再生補修技術として、2010年に、空管と同様に樹脂により金属管の内面に新たな被膜を成形する「空間確保タイプ」と、自立強度を備えた新たな樹脂製管路を形成する「PIT新管路方式」の2種類のケーブル収容管再生技術を開発し、「PIT新管路方式」については2014年に部材の基本構造を見直すことにより適用管路の拡大を図りました。さらに2017年には、地下管路区間のみの適用から橋梁区間(橋梁を含む管路区間)へも適用拡大しました。
    また、ケーブル収容管補修技術(PIT新管路方式)による既設設備の耐震性を評価し、地震動や地盤変状に対しケーブル被害を軽減できる耐震対策として効果があることを確認しました。

  3. 橋梁に添架されている管路は大気中に暴露されているため、海水の塩分を含んだ粒子や大気中の亜硫酸ガスなどにより劣化が進行しやすいという環境下にさらされています。また、橋梁から受ける制約により様々な添架形態を呈しており、密着添架による作業空間の制約などにより、更改等に多大な費用と時間が必要となっています。

    橋梁に添架されている管路に対する補修は、錆等の表面劣化に関しては錆を除去し塗装を塗り替える方法、管路に穴が開いているような著しい劣化箇所に関しては取替えるという方法を用います。
    塗装に関しては、1989年に、錆の除去に薄い研磨ベルト使用する事で狭隘な箇所にも適用可能なパイプサンダを開発し、同年に、細径の先端ノズルにより塗料を吹き付ける狭隘箇所塗装技術を開発しました。また、2015年には、既存の塗装補修方法の3倍程度の防錆寿命を実現する橋梁設備の長期防錆技術(MARY工法)を開発しました。
    取替えに関しては、管路内にケーブルが収容されている場合にはケーブルの撤去等に多大な費用がかかっていましたが、1989年に塩害地域においても十分な耐食性を有するステンレス鋼を用い、ケーブルを収容したまま補修可能な橋梁添架補修用半割管を開発しました。しかし、橋梁添架補修用半割管は非常に複雑な構造で物品コストが大きく製造が困難となったため、2008年に、軽量、高強度かつ腐食劣化の発生しないFRPを用いた橋梁添架管路補修技術(I&C工法)を開発することで、メンテナンスフリーとなる取替え補修を補修長2m、支持間隔2.5mまで可能としました。さらに、2014年には、適用補修長および支持間隔を既存設備最大長(5.5m)まで拡大することを目的に、FRP補修管の断面形状を中空矩形に、ガラス繊維方向を管軸方向にすることで物品コストを抑制しつつ剛性値を大幅に向上させたST-LONG(ストロング)管を開発しました。
    取替えを実施するためには管路を切断する必要がありますが、ケーブルを収容している場合には一般的な切断工具が使用出来ず、特殊な切管工具を用いて手動で管路を切断していたため、多くの労力と時間が必要でした。また、管路同士が密着しているような狭い箇所には前述の切管工具が取り付けできず取替えが不可能な場合がありました。さらに、切管時のケーブル防護も作業者の感覚に頼った方法しかなく、有スキル者の減少が問題となっていました。そこで、2014年に、従来の切管工具が使用出来ない狭隘なケーブル収容管路を誰でも安全かつ簡単に切管可能な狭隘箇所切管施工技術を開発しました。

    橋梁に添架されている管路の下に可燃物があり、火災の恐れがある場合には耐火防護を実施していますが、1980年代前半までは、吹付石綿工法及びアスベスト板工法が用いられていました。しかし、人体に有害な石綿及びアスベストを世界的に使用禁止しようとする動きがあり、これに代わる耐火防護方法が求められていました。そこで、1982年に、耐火繊維であるロックウールを用いる事で軽量化も可能とした橋梁添架耐火防護技術を開発し、1995年に、セラミックファイバーを用いたプレキャスト耐火防護技術を開発しました。

(4)設備管理に関する技術

  1. これまで通信管路設備は、2D図面で道路際から何mという相対座標で管理されていました。これでは、道路工事などにより形態が変わった際などにも更新されず、図面と現実設備のアンマッチにより他社工事による通信設備の切断事故などが発生します。これを緯度・経度・標高といった絶対座標での3D管理にすることで、道路形態が変更されても設備位置の管理が可能となります。設備位置を現地で正確に取得する技術として、露出管路の絶対座標取得技術を開発しました。

(5)鋼製構造物に関する関連技術

  1. NTTの鋼製構造物の点検ノウハウを活用して、2022年に画像から電柱に付属する鋼材や道路付属物(ガードレール・歩行者用防護柵・標識・カーブミラー)の腐食を検出する技術を開発しました。
    動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=XQFvIYT9BWE

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