TsuKuBa 年史-TsuKuBa History -

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光設備管理・運用・保守技術

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大量のFTTHの実現には、光メディアネットワークにかかわる開通・支障移転・保守等の各運用業務(図)のコスト抑制が必要になります。これには、作業しやすい物品に加え、所内外の光配線設備の選択・管理・識別や光線路試験の効率化も必要になります。

光メディアネットワーク運用技術

図 光メディアネットワーク運用技術

(1)アクセス系設備管理支援

1)アクセス系マネジメント支援

アクセス網には、それを構成する各種データベースが関係しており、これらを統一的に扱うことができるシステムが求められていました。これに応えるアクセス系マネジメント支援システム(MARIOS)は、アクセス網設備の計画策定支援システムで、オブジェクト指向プログラミング技術を用いることにより利用者がシステム開発することができます。この技術に対して1996年にスミソニアンアワードが贈られ、成果が米国スミソニアン博物館に収録されています。

また、今後の設備の老朽化と、技術者の減少に対応して、設備管理業務を効率化するために、基盤設備業務のデータを管理する基盤設備DBマネジメントシステムを開発(2009年)しました。

2)開通時の光設備選定支援

多数のお客様のサービス申込に対し、サービス提供に必要な光設備の選定と、選定した設備に対する接続工事、登録、試験等を行う光アクセス設備業務工事の迅速化が求められます。この工事に先立って用いられる光アクセス設備選定システム(PAS:Plant Allocation System)を2002年に開発し、サービス開通の即応化を進めています。

3)光アクセス設備業務の改善支援

光アクセス設備業務には、①外部要因による変動と多様化、②地域により異なる、という特徴があり、この業務にワークフローを適用し、柔軟な光アクセス設備業務が可能となるフレキシブルプロセス制御技術(FPC-OSS:Flexible Process Control-Operation Support System)を2006年に開発しました。

(2)開通・支障移転工事支援

光アクセス網の開通・支障移転や保守を行う場合には、光ファイバ心線の誤切断や誤接続の回避のため、通信光に影響を与えない光ファイバ心線対照や、所内・構内の光ファイバコードの対照が必要になります。

  • 光ファイバ湾曲の漏洩光検出による心線対照
    2003年に光ファイバを湾曲させて漏洩した光を検出する光ファイバIDテスタを開発しました。

  • R15心線対応漏洩光検出による心線対照
    光アクセス網において、光ファイバ曲げに強い(曲げることによる損失増加や漏れ光が少ない)R15心線†の導入が進んでいます。このR15心線の少ない漏洩光を検出できるR15心線対応の光ファイバ心線対照技術を2007年に開発しました。

†半径15mmまで曲げることのできる光ファイバ(ITU-T G.675A1で規格化)

  • スプリッタ下部の心線対照
    ONUからの上り信号を、光ファイバを曲げ漏洩光として取り出すことでMACアドレスを工事現場で表示し、スプリッタ下部での心線対照ができる技術を2019年に開発しました。

  • 電源断ONU検知技術
    スプリッタ下部の光ファイバが電源断のONUに接続しているか否かを工事現場で判定する試験技術を2020年に開発しました。

  • 上位レイヤ(MACフレーム)処理FTTH区間通信モニタによる心線対照
    GE-PONによるFTTHでは、複数利用者間でOLTや光ファイバを共用しているためコスト削減のメリットがありますが、支障移転やケーブル収容替え等により他利用者への影響(サービス中断)が生じます。この回避策として、多重伝送路上で上位レイヤ(MACフレーム)処理により各利用者の利用状況を把握して工事を行えるようにするため、FTTH区間通信モニタを開発し、2009年から導入しています。また、GE-PONに加え、10G-EPON(GE/10G-ONU)や、ビジネス向けサービスで広く使われているメディアコンバータ(M/C)の信号光からMACアドレス・接続状態・通信状況などONU情報を取得する光信号モニタ技術を確立し、本技術を採用した高機能型通信モニタツールは、2019年から導入されています。

  • インサービス試験光遮断フィルタを用いた心線の現用・非現用確認
    サービスの開通(SO)工事の現場であるクロージャにおいて用いる、心線の現用・非現用確認ツールを開発し、2010年に導入しました。これは、現用回線では光線路の終端付近にインサービス試験光(1650nm)遮断フィルタが設置されており、そのフィルタからの反射光検出の有無から、該当光ファイバ心線が現用か非現用かを判別するものです。

(3)運用・保守支援

竣工時や、伝送路障害発生時にも光ファイバ布設場所に出向くことなく試験可能とすることにより、保守の迅速化と省力化を達成しました。

1)光線路試験

光ファイバケーブル網の竣工試験、故障切り分け試験、心線の対照試験、ケーブルへの浸水検知などの遠隔自動化が可能な光線路試験システム(AURORA:AUtomatic optical fibeR OpeRAtions support system)が1990年から導入されています。これは、光パルス試験(OTDR: Optical Time Domain Reflectometer)機能を有し、ファイバ端からファイバ損失分布を測定することによってファイバ破断点の標定を行うことが可能です。1996年には経済化・高性能化され、2000年には他の運用管理システムとの連携を実現しています。
また、光ケーブル試験には、小型・軽量で持ち運びが可能で、接続/試験/解析/良否診断/帳票作成までが自動化できる光線路試験ツールmini-TEM(mini-Test Equipment Module)を1998年に開発しました。
更に、設備管理業務における光ファイバ線路の設備データベースと実設備位置の対応付け、及び地下光ケーブル確認作業の効率化に向けて、2019年に、マンホール入坑を不要とする、マンホールへの打撃とファイバセンシングによる地下光ケーブルルート確認技術を開発しました。

2)光線路試験の遠隔自動化

作業者の派遣なしで定期試験ができる小規模ビル向けの遠隔自動化については、小規模ファイバセレクタを導入した光線路試験システムを2009年に実現しました。

3)光線路試験の高度化

・FTTH加入者増加に伴いさらなる光設備の効率的な運用が重要になりますが、2009年に地下光設備の保守効率を向上させる複数箇所での浸水検知が可能な浸水検知の高度化を実現しました。
また、2014年に超多心高密度地下光ケーブルに対応した浸水検知モジュールが開発されました。

・既に布設されている光ファイバを用いて高速伝送をする場合に、光ファイバの高次偏波モード分散による信号劣化の問題がありました。その信号劣化区間を高精度(数十cm以下)で検出する方法として、位相雑音補償光周波数領域反射計(PNC-OFDR)を2010年に開発しました。
また、2014年には、長距離海底光線路試験に用いられているコヒーレントOTDR(C-OTDR: Coherent Optical Time Domain Reflectometer)の試験時間を飛躍的に短縮することができる周波数多重型コヒーレントOTDR(FDM-OTDR)を開発しました。

・FTTHとして世界的に普及しているPON(Passive Optical Network)方式は、光スプリッタ~ユーザ区間の光ファイバ損失計測が困難であるという課題がありました。2017年に遠端反射ブリルアン利得解析法を用いて光スプリッタ分岐下部区間を個別に損失計測可能な、分岐光ファイバ損失測定技術を開発しました。

・2020年に浸水光クロージャの改修時における最適な浸水改修方法選択を可能とするために、MTコネクタ接続部の浸水状況を把握するためのMTコネクタ接続部正常性判定技術を開発しました。

・光線路試験で利用される光ファイバ測定技術を応用して、光ファイバケーブルの周囲の環境情報を取得する光ファイバ環境モニタリング技術の実現に向け、光ファイバに加わる振動を極めて高精度に測定する技術を実証しました。

(4)設備点検

1) 所外設備点検の効率化

・現行の点検業務は、保守者が現地に行き、設備1つ1つの安全性を目視で判定しており、膨大な時間と労力を要しています。さらに、有スキル保守者の減耗に伴い、少人数の保守者で業務を実施していく必要があります。2018年に3D点群データから電柱を抽出し、不安全の指標となる電柱のたわみ・傾きを高精度かつ効率的に自動計測する構造劣化判定システムを開発しました。2020年には、電柱だけでなくケーブル、支線、支柱まで測定可能な、構造劣化判定システム(対象設備拡大)を開発しました。

(5)エコな光配線を実現する次世代所内光配線技術

NTTグループ会社では、通信ビルのスペース活用におけるコロケーション事業およびデータセンタ(DC)事業を推進しています。これらの事業では、空調(電力)コスト削減や開通リードタイムの短縮が重要課題となっており、これらの最適化に向けて、通信ビル/DCビルで大勢を占める2重床吹出式の機械室を対象とした床下気流空間を確保する配線設計技術と本技術を実装した自動配線設計ツールを開発しました。

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