空飛ぶ基地局HAPS-HAPSを支える多層NTNルート制御

目次

1. HAPSとは?

携帯電話サービスはいつでもどこでも利用できると思われているかもしれません。しかし、実際はアンテナの設置が困難な山間部や離島では圏外となることが少なくありません。車の自動運転やドローンによる宅配サービスなど近未来を想像させるようなコンセプトが数多く提示されますが、圏外に出てしまったら制御不能というわけにはいきません。そんな中、空からエリアを構築する非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)が新たに登場し、地球の上空数百kmを周回する数百~数千台の低軌道衛星(LEO衛星)を用いて全世界をカバーするLEO衛星ダイレクト通信サービスが始まっています。しかし、膨大な数の衛星を打上げ管理するにはコストがかかり、通信距離も数百kmと大きく地上の通信と比較して十分なパフォーマンスを実現することは困難です。そこで、NTTグループでは上空約20kmという比較的低い高度でソーラー発電を使って数ヶ月間同一エリアで旋回し続けることが可能な無人航空機(HAPS:High Altitude Platform Station)によるエリア拡張をめざしています。

2. 空飛ぶ基地局と課題

NTNにおいてHAPSはカバーエリア内のユーザ端末(UE:User Equipment)からの電波を集約して地上に設置されたゲートウェイ(GW:Gate Way)局との間を中継する空飛ぶ基地局になります。ユーザ端末とHAPS間の通信をサービスリンク(SL:Service Link)、HAPSとGW間の通信をフィーダーリンク(FL:Feeder Link)と呼びます。HAPSは上空から広く地表をカバーすることになりますので、空が見える環境であればどこでも携帯電話サービスが利用可能になります。HAPSがカバーするエリアは半径約50kmにおよび、災害時であってもHAPSが被災地上空にやってくることによる携帯電話サービス復旧が期待されています。地上の道路が寸断されていてもHAPSには関係ありません。しかし、HAPSにも課題はたくさんあります。HAPSを運用するにはGW局が必要になりますが、一番HAPSに活躍して欲しい山間部や離島ではGW局を設置することが困難です。また、広大なエリアをカバーするためにはフィーダーリンクの大容量化が必要となるため、十分な無線リソースの確保が可能な高周波数帯の利用が検討されていますが、一般に高周波数帯を利用した無線通信は降雨の影響を受けやすく降雨量が大きくなると通信品質が劣化することが知られています。

空飛ぶ基地局HAPS
空飛ぶ基地局HAPS

3. 多層NTNルート制御技術

そこで、NTTではLEO衛星やHAPSだけでなくはるか上空3万6千kmにあって1台で日本全国をカバーできる静止軌道衛星(GEO衛星)までを相互に接続した立体的かつ巨大な多層NTNを構築して、HAPSが飛んでいきさえすれば多層NTNを介してどこでも高品質なサービスを提供可能な世界をめざしています。多層型NTNは、通信エリア・費用・伝搬遅延などの観点で一長一短があるHAPS、LEO衛星、GEO衛星を連携させます。GEO衛星は1機当りの通信エリアがもっとも広域ですが、地上との伝搬遅延はもっとも長くなります。GEO衛星よりも低高度なLEO衛星は、伝搬遅延がGEO衛星と比較して100分の1程度と短くなっていますが、GEO衛星とHAPSが地上の1点から常時接続可能なのに対し、LEO衛星は上空を時々刻々と移動するため常時接続性を維持するためには多数のLEO衛星を打ち上げる必要があります。HAPSは、伝搬遅延が最短ですが、1機当りの通信エリアがもっとも狭くなります。以上のことから、将来的には各国の地域特性や通信事情を考慮してこれらをベストミックスすることで、柔軟に接続可能な世界をめざします。このとき、HAPSで受けたUEからの情報を効率よく確実にGW局まで届けられる最適な中継ルートを決定するのが、多層NTNルート制御技術です。多層NTNルート制御技術では、NTNコントローラが制御に必要な情報(各通信リンクの伝送容量、通信されているトラヒック量、伝搬遅延、サービスの要求条件など)を収集し、各セッションに対してこれらを考慮したトラヒック通信ルートを割り当てます。NTNコントローラは、各通信リンクのコスト値を計算し、その合計値が最小となる通信ルートを各セッションに対して割り当てます。サービスごとに要求条件に応じた係数を用いて制御することにより、例えばビデオ会議のような低遅延かつ高速な通信が要求されるサービスを利用するセッションについては、衛星を経由せずに複数のHAPSをマルチホップ(HAPS間の直接通信)する通信ルートを優先的に割り当て、電子メールはSNSのような長遅延かつ低速が許容されるサービスを利用するセッションについては、HAPSからGEO衛星を経由する通信ルートを割り当てることで、より多くのお客さまに対して要求条件を満足した高品質なサービスを提供することが可能となります。

空飛ぶ基地局HAPS
多層NTNルート制御技術

4. どこでもモバイルサービス提供

HAPSと多層NTNが作り出す未来を想像できたでしょうか。イベント等で一時的にトラヒックが増加することが予測できるときにHAPSを使ってネットワークを増強することができるかもしれません。HAPSが巡航しながらセンサ情報を収集するようなIoTサービスもできるかもしれません。通信ではありませんが、HAPSにカメラを搭載し航空写真を撮影すれば、衛星よりも高度が低い分高精細画像が期待できるでしょう。災害時などで迅速にテンポラリなエリア展開も可能です。HAPSと多層NTNの先には無限の可能性が広がっています。

関連する記事

地上だけじゃなくて、空にも通信を支える存在がいるんだね!

HAPSって、衛星とは違うの?

うん、ちょっと違うんだ。衛星は宇宙を回っているけれど、HAPSは高度およそ20km。旅客機より上、でも宇宙よりは手前の高さにいるんだよ。

そうなんだ、中間にいるんだね。
じゃあ地球のまわりをぐるぐる回っているわけではないの?

そう。衛星のように軌道を回っているわけじゃないんだ。
大気の中を飛び続けながら、上空でゆるやかに旋回して、同じ場所の上にとどまっているんだ。