NTTでは、1952年の日本電信電話公社発足以後、電話の積滞解消と全国自動即時化という目標の達成に向けて電話ケーブルの布設、交換機の開発・設置を進め、1978年3月に積滞解消、翌年3月に全国自動即時化という目標を達成しました。また、1990年代に入ると、通信のマルチメディアと高速・広帯域というニーズに対応するため、次世代通信網構想として「VI&P構想」を1990年に、また1994年12月には、「アクセス網の光化について」を発表し、き線点(NTTビルからの地下加入者ケーブルが地上に立ち上がった地点)までの光化を2010年までに全国整備するという目標を立てました。さらに、通信のブロードバンド化とIP化の進展に対応して、2001年8月にBフレッツ、2008年3月にNGN(次世代ネットワーク)のサービスを開始しました。
NTTでは、以上のような事業の一環として、アクセス網において、公社発足時から電話用のメタル(銅線)ケーブルの布設を、1990年代からは光ファイバケーブルの布設を行ってきました。アクセス網の構築のために、NTTが設置した通信インフラストラクチャとしては、通信ビル内で用いられる通信装置、電源、空調設備だけでなく、ビル、鉄塔、電柱、マンホールなどの構造物設備のほか、ケーブル、とう道、管路、き線(電話局からき線点までの加入者回線を束ねた地中ケーブル)などがあり、これらはわが国の重要な社会資本を構成しています。とう道は全国で約1000km(共同溝を含む)、管路の総距離は全国で約67万kmあり、これは地球約16周半に相当します。これらを通して膨大な長さのケーブル、き線が布設されています。
アクセスサービスシステム研究所では、アクセス網の構築に向けた事業からの要求に対応して、以上述べた設備の構築、電話ケーブルや光ケーブルの布設に関する技術の開発を行ってきましたが、今までに構築された設備は膨大なものであり、設備の維持・管理などの作業の効率化や経済化のみならず、環境への影響の軽減という観点から、設備の効率的な利用、不良設備の補修、長寿命化が重要となっています。
研究所では、このような状況において、ライフラインとしての通信の維持とネットワークの信頼性確保に寄与するため、設備の老朽化が進行する中、メタルケーブルから光ファイバケーブルへの円滑な移行、適切なメンテナンスによる設備の長寿命化、および大量に保有する設備の維持・管理コスト削減を目指して、次のような研究開発を行っています。
1.管路系設備の技術
地下配線管路、一般管路、中口径管路、とう道からなるアクセス系の管路系設備の構築、および点検診断や経年劣化により生じた不良箇所の補修・再生などの維持管理の技術
2.コンクリート構造系設備の技術
非破壊でのコンクリート柱の点検診断など、電柱やマンホール等のコンクリート構造物の維持管理に関する技術
3.通信基盤設備の防災・セキュリティの技術
通信基盤設備の耐震対策と耐震性の評価、光ファイバセンシング技術を適用したとう道、道路の監視、およびとう道設備の維持管理とセキュリティなどの運用業務に係わる技術