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レジンコンクリート製マンホール非破壊検査技術

2018年(平成30年)

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破壊検査に頼っていたレジンコンクリートの強度測定を、超音波計測を活用した非破壊検査で実現する技術を開発しました。

(1) 背景
NTTが保有する通信用マンホール68万個のうち11万個(16%)を占めるレジンコンクリート製マンホールは、建設後50年以上の躯体が存在し、劣化の顕在化と強度の低下が懸念されています。これに伴い、NTTはレジンコンクリート製マンホールの維持管理手法(劣化予測、強度計測時期策定、補強工法)を提案しました。補強の要否を判断するには強度計測を実施する必要がありますが、従来の強度計測手法には破壊検査しか存在せず、作業性と安全性に課題がありました。これらの解決に向け非破壊検査技術を開発しました。

本技術の背景-破壊検査の課題

図1 本技術の背景-破壊検査の課題

(2) 概要
本技術は、作業者がマンホール壁面で超音波計測を実施することで、コンクリートを伝搬する音速等の特性値からマンホールの残存強度を自動で算出することが可能です。本技術を用いると、壁面からの供試体を切り抜く破壊検査が不要となり、強度計測は15分のマンホール内作業で完結するようになります。これにより、作業時間の短縮とケーブ損傷の危険性の排除が可能となります。

本技術の概要

図2 本技術の概要

(3) 技術のポイント①音速測定の高精度化
レジンコンクリートの強度を正確に算出するためには音速を精密に測定する必要があり、図3に示すような2つのアプローチで音速測定の高精度化を実施しています。

  1. 複数の探触子間隔で音速測定
  2. 音速は、探触子間隔 L (m)を表面波の伝搬時間t (s)で割った値L/t (m/s)として求められます。音速はレジンコンクリートの骨材ばらつきにより左右されるため、骨材ばらつき誤差を低減するために、探触子間隔を変化させて複数回の音速測定を実施しています。

  3. 探触子間隔の精密な制御による音速測定
  4. 探触子間隔 L (m)のばらつきが音速の精度に大きな影響を及ぼすため、探触子を特定の間隔で固定できる治具を開発しました。これにより、フリーハンドや定規で探触子の位置決めを行う従来手法より音速測定のばらつきを大幅に低減することができました。治具はスライド機構を採用しており、複数の探触子間隔で測定するにあたって探触子を固定したまま簡単に間隔を変更することが可能です。治具は片手で持つことができ、現場でも容易に操作することができます。

音速取得の高精度化

図3 音速取得の高精度化

(4) 技術のポイント②強度推定式の高精度化
超音波計測の結果から強度を算出するために、図4に示すような強度推定式を構築しました。一般の音速(第1項)のみで強度を算出する既存の推定式では精度が不十分でした。そこで表面波では捉えられない内部の劣化を反映するために、水浸透による強度低下(第2項)と内部空孔・剥離(第3項)を考慮しました。
強度推定式の精度を現場サンプル50個で検証した結果、本技術の強度推定式の精度は決定係数R2=0.88、誤差3σ=3.6 MPaとなり、一般の強度推定式を用いた際の精度(決定係数R2=0.76、3σ=5.0 MPa)と比較して高精度となりました。

強度推定式と推定精度

図4 強度推定式と推定精度

(5) レジンコンクリート製マンホール非破壊検査技術の運用方法
本技術は提案済みの維持管理手法(レジンコンクリートマンホールの維持管理技術)に基づき、補強要否を判定するための強度計測に用います。図5に一連の維持管理フローを示します。精密点検時期(S-4号マンホールでは建設後50年)にレジンコンクリート製マンホールを一律で精密点検し、強度が補強基準未満だった場合は補強工法を施し、補強基準以上であった場合は補強せず継続使用とします。

本技術の運用方法

図5 本技術の運用方法

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