開発概要
衛星通信では、各地球局が様々な要求帯域の割当と解放を繰り返すため、衛星中継器の周波数軸上に細かい未使用帯域が散在します。これらの未使用帯域は他の地球局に再割り当て出来ないため、周波数利用効率が悪い状態で運用しています。また衛星通信機器はライフサイクルが長いため、既存設備の有効利用が必要です。NTTアクセスサービスシステム研究所では、シングルキャリア変調信号を分割し未使用帯域に分散配置することで、周波数利用効率を最大2倍に向上できる動的スペクトラム伝送技術を確立しました。
(1) 基本機能(スペクトラム分割・合成)
送信側ではシングルキャリア変調信号を任意の分割数、帯域幅のサブスペクトラムに分割して未使用帯設備の有効利用が必要です。NTTアクセスサービスシステム研究所では、シングルキャリア変調信号を分割し未使用帯域に分散配置することで、周波数利用効率を最大2倍に向上できる動的スペクトラム伝送技術を確立しました。これにより衛星通信の高速化を実現できます。
(2) スペクトラム圧縮・復元
基本機能に加え、送信側で分割した一部のサブスペクトラムを削除(圧縮)、受信側で削除したサブスペクトラムを復元することで、分割前の変調信号の占有帯域幅が未使用帯域幅を上回る場合でも伝送速度を維持した通信を実現します。
(3) スペクトラム制御アダプタ
市販されている衛星通信モデムとアンテナの間に、基本機能(分割・合成)を有する「スペクトラム制御アダプタ」を挿入、送信側では既存モデムが出力するシングルキャリア変調信号を分割、分散配置、受信側で合成することで、既存設備をそのまま利用して周波数利用効率を向上できます。
謝辞
本研究は、総務省の受託研究「動的偏波・周波数制御による衛星通信の大容量化技術の研究開発」の成果の一部を活用したものである。