
街中の道路や歩道でよく見かける丸いフタ、マンホールは、多くの人にとって水道や下水道を連想させるかもしれません。しかし、実はNTTの通信インフラを支えるためにも欠かせない重要な設備です。これらのマンホールのフタの下にはコンクリート製の本体があり、地下に敷設された光ファイバーケーブルなどの通信ケーブルを守る役割を果たしています。これらのケーブルは、私たちの日常生活に欠かせない電話やインターネットサービスを支えるため、常に安定して稼働することが求められます。また、ケーブルを守る役割以外にも、地下から地上へケーブルを接続したり、地下ケーブルのルートを分岐させるための接続点としても機能しています。こうしたインフラのおかげで、私たちは日々快適な通信を利用できているのです。
マンホールは、安全性・信頼性の向上に向けた高強度化および経済性・施工性の向上に向けた軽量化の両立をめざし、長年、技術開発を行ってきました。1972年には今まで現場施工していたものを、事前に工場で作るプレキャスト化したセメントコンクリート製ブロックマンホールを開発し、交通規制の早期解放、作業能率の向上と安全確保を図りました。1975年には、蓋高調整の容易な接着接合による築造ブロックを用いたマンホール首部築造工法を開発し、交通規制の早期解放、熟練作業の削減等を図りました。
積雪地域では、冬季道路交通を確保するために、除雪車が運行されますが、マンホール鉄蓋の周辺舗装が摩耗して削れていた場合、マンホール鉄蓋の受枠が路面より突き出た状態となり、マンホール受枠に除雪車のブレードが衝突して受枠が破損してしまうばかりか、除雪車の運転者にも強い衝撃を与えてしまう恐れがあります。そのため、安全に除雪作業が可能で、除雪車のブレードの衝撃に対する耐久性に優れ、さらに、メンテナンス頻度が少なく経済的な積雪地域用マンホール鉄蓋が求められていました。そこでアクセスサービスシステム研究所では、テーパ型マンホール鉄蓋の機械的性能を踏襲し、新たに除雪車の衝撃回避機能を付加した積雪地域用マンホール鉄蓋を開発しました。この鉄蓋には、あらゆる方向からの除雪作業において、除雪車ブレードの衝突を回避するため、受枠と上蓋に衝突回避機能を持たせました。
高い信頼性が要求される線路土木設備の新たな設計方法・材料等の検討には、構造物の耐久性・劣化度等の検証が必要です。下の写真は、マンホール等の実物大供試体を用いた破壊・疲労試験や、マンホール鉄蓋等の長期信頼性評価のため実際の重車両の通行を再現できる輪荷重繰り返し載荷試験の為の装置です。
NTTは、全国に約68万個のマンホールを保有し、5年周期でマンホール鉄蓋の定期点検を行っています。車道上に設置されることが多い鉄蓋は、車両荷重等の影響で上蓋と受枠に段差が生じると蓋飛び事故につながる恐れがあるため、設備不良の有無を確認し、補修・補強、更改を施すことが重要です。現行の点検方法は車道上に保安施設を設置し、点検者がノギス等を用いて段差を計測しますが、事業会社では路上作業の安全性と作業性の向上が実現できる点検方法の導入が望まれています。
従来のようなすべてのマンホールを同じ維持管理基準ではなく、劣化予測等を活用して不良の可能性が高いマンホールは早期に点検し、不良の可能性が低いマンホールは点検周期を延伸するなど、設備個々の状態に応じたメリハリのある維持管理手法の開発に取り組んでいます。劣化したマンホールを早期に発見するため、これまでの点検データを分析し、劣化の可能性が高い設備から点検できるよう優先順位付けする「点検プライオリティ付け技術」やコンクリート内の鉄筋の腐食進行速度からリスク管理水準への到達時間を算出し点検周期とする「点検周期の最適化」開発を行いました。また、2019年に鉄筋コンクリートマンホールを首部長によりグルーピングし、より適した点検周期を設定する「鉄筋コンクリートマンホールの劣化予測技術」を開発しました。更に2021年には、点検データから設備に内在する劣化要因を推定することで点検を効率化する「鉄筋コンクリート(マンホール)の劣化予測技術」を開発しました。そして2023年には、1993年の車両制限令改定以降行えていなかった現実に近い安全性評価をFEM構造解析により実現する「旧規格マンホール設備の安全性評価技術」を開発しました。
NTTのマンホールは、通信インフラを支えるための重要な設備であり、通信ケーブルを外部環境から守り、定期的なメンテナンスを行うために必要不可欠な存在です。そのため、NTTの研究開発により生まれた最新の技術を用いた維持管理を行っています。AIやドローン等のスマート技術を導入し、マンホールの維持管理を大幅に効率化してきました。私たちの快適な通信生活は、こうした目に見えない部分での努力に支えられているのです。今後もさらなる技術革新が進むことで、マンホールを含む通信インフラの進化が期待されます。
わたしの仲間のマンホールについて、よく理解できたね!
NTTのマンホールは、ぼくたちの生活を守る重要な役割があるんだね。
ところで、どうしてマンホールの蓋の形は丸が多いの?
四角だと落ちたりする可能性があるけど、丸だとどんな向きでも蓋が落ちないんだよ!それに作業でフタを取り外す時、転がすことができるから扱いやすいんだ。
なるほど!安全性や効率性を考えて丸の蓋が多いんだね。
マンホールという名前の由来って何?
「マンホール(manhole)」という名前の由来は、人(man)が穴(hole)を通じて地下に入ることからきているんだよ!