TsuKuBa 年史-TsuKuBa History -

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光ファイバケーブル技術

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図1のオプティカルファイバアクセス技術の進展に示すように、アクセス網に(スーパーデジタル専用線用として)最初(1984年)に導入された光ファイバは、中継網に用いられた接続が容易なグレーデッドインデックス(GI)型マルチモードファイバでしたが、1988年からはシングルモード(SM)ファイバが適用されています。それには低損失で簡易なシングルモードファイバ技術の実現により、光ファイバが、海底光ケーブル中継系光ケーブルを含む基幹中継網と共通化できたことが大きく寄与しています。また、保守性を高めるためにケーブル防水技術も開発されました。

需要拡大に対応するために、1995年には光ファイバテープ被覆の薄肉化技術やスロットロッド型光ファイバケーブル技術を開発し、1000心高密度ケーブルを実用化しました。これにより、大規模な光サービス需要への経済的かつ柔軟な対応が可能となりました。

オプティカルファイバアクセス技術の進展(ファイバ接続、試験を含む) 

図1 オプティカルファイバアクセス技術の進展(ファイバ接続、試験を含む)

図2に示す光アクセス網に適用されるさまざまな光ケーブルについて、1997年には、低価格化、作業性向上、細径・軽量化を図った配線系光ファイバケーブル構内系光ファイバケーブルドロップ光ファイバケーブル超高密度光ファイバケーブルを開発しました。

1998年には、施工性向上、さらなる細径・軽量化を図った 幹線系光ファイバケーブル(WBB)、配線系光ファイバケーブル(SSW)、成端用光ファイバケーブルを開発しました。

2021年には、大容量伝送システムの効率的実現に適した低損失な光ケーブル特性と、細径高密度な構造を両立した、中継光ファイバケーブルを開発しました。

光アクセス網の構成とさまざまな光ケーブル

図2 光アクセス網の構成とさまざまな光ケーブル

(1)曲げ対応の光ファイバケーブルで、布設・配線作業が容易に

2005年に、メタルケーブルに比べて取り扱いにくかった光ファイバの曲げに対処できる空孔アシスト型光ファイバ(HAF)を用いることで損失増加の少ない光ファイバカールコードを開発し、宅内機器への配線や構内配線への適用を可能としました。併せて宅内光配線に必要な物品一式をまとめた先行光配線キットを開発しました。さらに、2006年にファイバの「曲げ、折り、結び」の状態でも通信可能な曲げフリー光ファイバコードを開発して宅内光配線の適用領域を拡大しました。

2011年には、標準規格である曲げ損失規格(ITU-T G.657)、およびシングルモード光ファイバ規格(ITU-T G.657)を満たす局内光ケーブルを開発しています。さらに、集合住宅などの壁に穴を開けないで、窓やドアの隙間へ沿わして構内配線を可能とする隙間配線インドア光ケーブルを開発しました。

また、2014年度には信頼性・施工性向上を目的としたモールを不要とするフラット型インドア光ファイバや鼠対策を施した高強度インドア光ファイバ等を開発しました。

(2)需要対応の光ケーブルで経済化

2005年には、需要密度の低い領域向けの少心架空光ケーブル(8心:単心もしくはテープ心線)と、それに合わせた少心架空光クロージャを開発し経済化を図りました。2008年には、需要増による地下管路の行き詰まりを解消するため、1管路当り3000心収容(3条収容)を可能とする細径心光ケーブル(1000心)と地下多条布設技術を開発し、管路増設無しで対応できる範囲を拡大して経済化を図りました。さらに、2012年には曲げに強い光ファイバと間欠接着型光ファイバテープにより、従来光ケーブルのスロットロッドを無くした世界最高密度の屋外配線用多心光ファイバケーブルを開発しました。2013年には、簡易布設が可能で細径軽量な8心・24心光ファイバケーブルも開発しました。2014年には、1管路当り6000心収容(3条収容)を可能とする超多心高密度地下光ファイバケーブル(2000心)を開発し、既存基盤設備の有効活用を図りました。

集合住宅での配管についても同様な状況があり、細径化と低摩擦化した細径低摩擦インドア光ケーブルを開発するとともに、配管がない場合には、複数戸に対応できる外壁面に布設可能な集合インドア光ケーブルを開発し、2008年から導入されています。小~中規模集合住宅で、お客様の需要ごとに縦系配管内に布設するのでは細径でも有効利用ができないことから、事前布設した後、分岐可能な8心単心低摩擦インドア光ケーブルと接続点保護のためのモジュール類を開発しました。

また、架空配線・地下配線での多様な需要とコスト削減に対応するため、架空光単心ケーブルのメニュー化(光ケーブル支持線[有り/無し])地下光単心ケーブル、それに対応した架空・地下の光配線点用と光引き落とし点用のクロージャも開発しました。

(3)クマゼミ対策の架空光ケーブルで高信頼化

架空光ケーブルではクマゼミ産卵管によるファイバ断線障害が発生し、その耐クマゼミ対策が必要になりました。少心架空光ケーブルのファイバ心線を両側から挟む介在テープ構造としてクマゼミ産卵管に対し防護壁効果のある新たな少心架空光ケーブルとそれに対応するクロージャを開発し、2007年から導入されています。また、お客様宅への引き込みに用いられるドロップ光ファイバへ対策を施した防護壁型ドロップ光ファイバも開発しました。さらに、この防護壁を無くし、ケーブル外被材に防護強度のある材料を適用した経済的なクマゼミ対策ドロップ光ファイバを開発し、2009年からNTT東西に導入されています。

2013年度には、電柱のスパン間架渉を可能とする、細径SZ撚りドロップ光ファイバを、翌年にはITU-T G.657 A2をベースとした細径ドロップ光ファイバを開発しました。

(4)空間多重による光ファイバ伝送容量の拡大

光通信技術の普及とデータ通信の多様化に伴い、光通信トラヒックは年率数10%の勢いで増大し続けており、10年から20年後には光ファイバ1心で100テラ・ビット(テラは1012)を上回る通信容量を賄う必要があると考えられています。一方、現在の光ファイバの容量限界も同じく100テラ・ビットで顕在化すると推測されており、2010年頃から、1本の光ファイバ内に複数の光の通り道を構成する新たな光ファイバの研究開発が世界的に活発化しています。

NTTでは、1本の光ファイバ内に複数のコア(光の通り道)を配置するコア多重と、1つのコア内に種類の異なる光をと閉じ込めるモード多重とを併用することにより、100以上の光の通り道を有する世界最高密度のマルチコア光ファイバを実現しました。

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