400G超の大容量伝送システムの効率的実現に適した低損失な光ケーブル特性と、細径高密度な構造を両立した光ファイバケーブルを開発しました(図1)。 経済性や環境負荷低減のため、NTTでは光ファイバケーブルを究極に細く、軽量化した光ファイバケーブルの開発に取り組んで参りました※1。一方、通信ビルから通信ビルを結ぶ通信では、多数のお客様を収容するため大容量伝送が求められます。特に400Gを超える大容量伝送において十分な伝送距離を確保するには、光ファイバケーブルの低損失化が不可欠となります。大容量伝送に適した低損失光ファイバは、従来の光ファイバと比較して側圧による光損失の増加が生じやすいという特徴があります。そのため、スロットロッド※2を用いることで光ファイバに加わる側圧を抑制する必要があり、結果として、細径・軽量化が困難であるという課題がありました。そこで、光ファイバケーブルとして低損失な特性を備えながら、限りなく細径・軽量な光ファイバケーブルの研究開発に取り組んできました。
今回の開発では、細径高密度光ケーブルの設計パラメータを最適化することで、光ファイバに加わる側圧を抑制しました。 図2に示す通り、光ファイバの心線実装密度(光ファイバ断面積/ケーブル内断面積)を適切に制御することで、ケーブル化損失(ケーブル化前後の光損失差)を抑制可能な設計範囲を明らかにしました。その他、テンションメンバ※3に用いる材料に安価なガラス繊維強化プラスチック(FRP)を用いることで経済性に配慮しながら、必要なケーブル諸特性の確保を実現しました。 開発の結果、従来光ファイバケーブルと比較して公称値として約10%の光損失低減を実現しました。さらに、細径・軽量化によってポリエチレン等のプラスチック使用量を削減し、製品のライフサイクルにおける約35%のCO2排出量削減を実現しました。
※1細径高密度光ケーブル
https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news2012/1207/120704a.pdf
※2スロットロッド 円柱状のプラスチックロッドに溝(スロット)を設けた部材である。光ファイバ心線はスロット内に収納されている。スロットロッドの構造を適切に設計することで、光ファイバ心線に加わる側圧を抑制している。
※3 テンションメンバ
布設時に加わる張力や、温度変化による光ファイバケーブルの伸縮を抑制するための部材である。なお、中継用途の光ファイバケーブルは長距離布設を行うため、テンションメンバを含むすべての材料を無誘導材料で構成する必要がある。