図に示すように、光アクセス網においては需要が少ない時期から多くなる時期にわたり効率的な設備構築をする必要があります。黎明期の2001年にも配線法の開発や、光スプリッタ配置場所の自由度を増す所外用光スプリッタとその収容技術(クロージャ)の開発が行われています。
(1)光需要に対応した光配線
短期に光需要が集中する地域に対しては、計画段階から経済性を配慮して開通工事の効率化を図るため、設備管理単位などをあらかじめ最適設定した設備構築ができる光アクセス網の光配線法を開発しました。
これは、需要対応で配線ブロック(8分岐光スプリッタのカバーエリア)を決定し、架空配線構成においては、少ない需要に対しては従来のドロップ光ファイバとし、多い需要に対しては新たなケーブルとドロップ光ファイバの組合せで構成した経済的な光配線法で、既に事業導入されています。
(2)長期にわたって光需要がまばらな地域への光配線
光需要がまばらな少心区間において光ケーブルの経済化を図るため、お客さまの近くに先行して引落し可能なポイントを設置するための架空光クロージャ技術、さらに先行設置での未使用部分を回避できる任意の個所への後設置が可能な少心架空光ケーブル(耐クマゼミ対策付き)および少心架空光クロージャの技術を開発しました。
(3)需要移動、変化(移転、サービス切替)に対する設備再利用
光加入者数の増加や、利用サービスの移転・廃止などにより、地下ケーブルや架空ケーブルのテープ心線利用効率の低下が生じます。
この対応策として、き線点の架空クロージャでテープ心線間を単心ジャンパで任意に接続することで需要に即応できるき線点単心送込み技術と、架空光ドロップクロージャで使われなくなったファイバ心線を架空割入れ心線ピグテイルにより接続†して再利用する既設架空光クロージャにおける下部延ばし技術の開発を行いました。
また、地下配線区間における対応策として、地下配線区間での単心運用を実現する地下単心光ケーブル、所外光スプリッタの集約設置が可能な配線点用クロージャ、引落し機能に特化した引落し点用クロージャによる新たな地下光配線技術の開発を行いました。
(4)ルーラルエリアへの光配線
今後、光サービス展開が予定されているルーラルエリアにおいて、効率的な設備構築を可能とするため、広域かつ需要散在という特徴に合わせた光配線設計技術や、従来と比較して効率的なケーブル布設を実現する簡易布設技術やそれらを実現するための細径軽量な新たな光ケーブル、および関連物品を開発しました。
これらにより、光配線系の利用効率の向上、迅速なサービスへの対応、ケーブル信頼性の向上、工事稼働の低減が図られました。
†:接続には簡易で作業性の良いFASコネクタを使用
FTTH大量導入以前では、様々な家屋への架空光ケーブルの引き込みに必要な改良高上げ金物、カーブ柱での架空線路に必要な改良ちょう架金物の開発(1978年)や、その配線系光ファイバケーブルの長尺架設を行う長区間光ケーブル自動架設技術の開発(1996年)を行いました。地下配線ではメタルケーブルより移動(クリープ)しやすい光ファイバケーブル用に移動防止用固定具を開発(1985年)しました。
管路設備を有効活用する技術である多条布設技術については、1993年に1管路2条・3条収容形態が主線管路区間へ導入されたが、2008年には1管路当り3000心収容(3条収容)を可能とする地下多条布設技術を開発しました。2011年には、引上げ分線管路および橋梁添架管路区間の一部へ多条布設技術適用範囲を拡大し、経済化を図りました。2014年には、超多心高密度地下光ファイバケーブル(2000心)を開発し、1管路当り6000心収容(3条収容)が可能となりました。
(5)IOWN構想を支える多段ループ型光アクセス網構成法
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想のデータトランスポート層であるAPN(All Photonics Network)の足回りを担う光アクセス網構成法として、多段ループ型光アクセス網構成法を確立(2021年)しました。本網構成法はアクセス系通信網における光ファイバケーブル敷設ルートの設計法であり、従来の設計法を超える高い信頼性、不確実な発生需要に応える需要変動耐力、自由度の高い光経路選択性を実現するものです。