10GのPONについては、ITU-Tでは2010年にXG-PON(G.987)として、IEEEでは2009年にIEEE802.3av(10G-EPON)として標準化されました。
B-PON、G-PON、XG-PONの仕様をITU-Tに提案してきた技術フォーラムFull Service Access Network(FSAN)では、40Gbit/sクラスとなる次々と世代のNG-PON2の議論が進められてきました(図)。2015年には40G超の速度を実現するNG-PON2システムの標準化がG.989シリーズとして終了しました。研究所では波長多重技術を活用した40G級PONシステムの実証実験を進め、40km、40Gbit/s、1024分岐を実現する広域光アクセス実証実験に成功し、その成果が標準化に反映されました。
IEEEにおける10G-EPONの標準化においては、現在導入されているGE-PONとの共存が必須条件でした。これに対して、1G-10GデュアルレートOLT(Optical Line Terminal)を適用して、両レートの機器を同一スプリッタに収容できる構成をとっています。これにより高速化を望むユーザを円滑に新サービスに移行することが可能となります。研究所では、10G-EPONの標準化に大きく寄与してきました。
研究所では、光アクセス系の広域化に向けて1Gbit/sの長距離化および、10Gbit/sの長距離化の検討を進め、中継方式による1Gbit/sの長距離化の実用化開発を行いました。さらには、ネットワーク全体に占める消費電力の割合が大きいONUを中心に、PONシステムの省電力化の技術開発を進めてきました。
2015年にはマルチアクセスサービス基盤の提供を目的として、広帯域化・高信頼化・新機能(時刻同期機能・スリープ機能)を実現する10G-EPONシステムの開発を行いました。
2016年には高速大容量の無線通信を実現する将来のモバイルネットワークを支える光ファイバ回線を低コストで実現するモバイルフロントホール光伝送容量削減に関する研究開発を行いました。また、多様なニーズに応えた新たなサービス創造を可能にする部品化技術を適用したアクセスシステムアーキテクチャ(FASA)の推進を行いました。
2017年には、第5世代以降のモバイルシステムの普及期において、基地局の収容に必要な光ファイバ数の削減に貢献できる低遅延光アクセス技術を開発しました。また、時分割複信(TDD)方式のモバイルシステムのPON適用に関する研究開発を行いました。また、通信速度・光周波数帯域が伸縮自在なネットワークの先進的な研究として、「エラスティック光アグリゲーションネットワーク(EλAN*1:エラン)技術」(※)の研究に取り組みました。
※本研究開発は、国立研究開発法人情報通信研究機構の委託研究課題「エラスティック光アグリゲーションネットワークの研究開発」を受託し、実施したものです。
2020年に、NTT東西が「フレッツ 光クロス」という名称で、10G-EPONシステムの商用サービス提供を開始しました。この10G-EPONシステムの宅内装置:10G-EPON ONUでは、ソフトエラー故障によるユーザからの問合せと、通信事業者の故障対応に要する稼働を削減するソフトエラー対策技術を開発しました。また同年、10G-EPONシステムにおける伝送路のバジェット拡大技術であるOLT用光トランシーバを開発しました。更に、同年にはモバイルシステムと連携し低遅延通信を提供するインター フェースの国際標準化を行いました。加えて、多様なサービスの効率的な収容に向け、光アクセスシステムの仮想化技術の研究に取り組み、IEEE PONの管理・制御機能をLinux上で動作させ、SDN-Enabled Broadband Access (SEBA) のオープンソースソフトウェア (OSS) として公開しました。10G-EPONの無中継構成による伝送距離拡大に向けた分布ラマン増幅技術の適用に関する研究開発を行いました。また、高優先トラヒックの低遅延を保証しながら、低優先トラヒックを高効率収容可能なレイヤ2ネットワーク技術を確立しました。
2022 年には、IOWN 構想の構成要素であるオールフォトニクス・ネットワーク(APN)の実現に向けて、アクセスノードとしてフォトニックゲートウェイを提案し、エンド・ツー・エンド光波長パス制御を実証しました。2023年には、APNの高度化に向けて、収容信号の拡大を実現するAPNアーキテクチャを提案し、IOWN Global ForumにおけるOpen APN機能アーキテクチャを拡張しました。