NTTアクセスサービスシステム研究所では、オンデマンドにエンド・ツー・エンド光波長パスを提供するオールフォトニクス・ネットワーク(APN)の実現に向けて、APNの入り口に配置され多様なユーザ装置を収容するアクセスノードとしてフォトニックゲートを提案し、提唱した5つの基本機能を用いて他研究所とともにエンド・ツー・エンド光波長パス制御のネットワーク動作の実証に世界で初めて成功しました。
※報道発表 https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/11/14/221114a.html
NTTが2019年に発表したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の構成要素の1つであるオールフォトニクス・ネットワーク(APN)は電力効率100倍、転送容量125倍、エンド・ツー・エンド遅延200分の1のネットワークを実現することを掲げています。具体的には、従来のネットワークでアクセス、メトロ、コアネットワークの階層間に設けていた光信号の電気終端を不要化し、光波長のパスをエンド・ツー・エンドかつフルメッシュで提供することによって遅延を極限まで低減し、高速大容量で特定の通信プロトコルに依存しないプロトコルフリーのネットワークをめざしています。
光パスをエンド・ツー・エンドで提供するために、APNは、交換、多重、スイッチングといった電気処理を用いないフォトニックゲートウェイとフォトニックエクスチェンジという2種の光ノードで構成されます(図1)。
NTTアクセスサービスシステム研究所では、従来のネットワーク構成においてメトロネットワークとアクセスネットワークの境界で終端される光波長パスをユーザ拠点まで張り出すために、APNのアクセスノードとして以下の5つの基本機能を備えるフォトニックゲートウェイを提案しました(図2)。
① 遠隔のユーザ装置の波長を設定する遠隔波長制御機能
② 光波長パスの開通に合わせて光信号を通過させ、不要な光信号は遮断する通過・停止機能
③ 各ユーザ装置に割り当てられた波長の光信号を集線し中継ネットワークに転送する機能と、中継ネットワークから転送された光信号をそれぞれの波長ごとに分配する集線・分配機能
④ 最短経路が求められるトラフィックに対し、APNの入り口であるフォトニックゲートウェイで折り返しを可能とする折り返し機能
⑤ フォトニックゲートウェイの位置での電気的処理を必要とする光信号だけを一旦取り出し、処理後に挿入する取り出し・挿入機能
①で示した遠隔波長制御について、図3で示すように、主信号が伝送されるアクセスファイバと別の経路を介してユーザ装置を制御する別線制御方式、主信号が伝送されるアクセスファイバを介してユーザ装置を制御するインチャネル制御方式があります。インチャネル制御方式により、ユーザ装置の設置範囲を制御網のリーチ範囲外へ拡げることができるため、ユースケースの拡大が期待できます。また、制御信号と主信号は互いに異なる波長で独立に伝送されるため、主信号の通信プロトコルや光変調方式に依存せずに、共通の制御方式で多様なユーザ装置を制御することができます。
また、オンデマンドに光波長パスを提供するシナリオに応じた光波長パスの開通・切替のシーケンスを策定し(図4)、APNコントローラと連携したエンド・ツー・エンド光波長パス制御のネットワーク動作の実証に世界で初めて成功しました。