固定無線アクセス(FWA)技術

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(1) アナログ電話サービス用無線アクセスシステム

アナログ電話サービスの提供を中心としたシステムとしては、1998年に、国内の高コスト地域向けのメタルケーブルの更改ツールとして、1.9GHz帯無線アクセスシステム(λシステム)を開発しました。

(2) 広帯域ネットワークアクセス用FWA

アクセスサービスシステム研究所では、ユーザ端末に対してインターネット接続のためのブロードバンド環境を短期間に安価に提供することを目的に、準ミリ波帯(22/26GHz 帯)またはミリ波帯(38GHz 帯)の無線周波数を用いた広帯域FWA(Fixed Wireless Access、固定無線アクセス)の開発を行いました。

このFWAとして、1999年に準ミリ波帯を用いた広帯域FWA(帯域占有型)を開発しました。また、FTTHの代替としてFTTHが未展開な地域に対しても早期に高速なインターネットアクセスサービスを提供するために、2001年~2006年にワイヤレスIPアクセスシステム(WIPAS)の開発を進め、2002年にWIPASステップ1、2003年にWIPASステップ2、2004年にWIPASステップ2経済化・機能高度化版を事業導入しました。また、2010年にはトリプルプレイ対応WIPASを開発し、海外におけるキャリア/ビジネスユース市場をも視野に入れてグローバル展開を行っています。

WIPASは、お客様宅のベランダ・軒下などに設置される加入者局(WT:Wireless Terminal)と、電柱・ビル屋上などに設置されるAP(Access Point)から構成されます。

FWAのうち、ベストエフォート型のIPサービスに利用されたWIPASのサービスイメージを図1に示します。
APについてはアンテナ・高周波回路部からなるRFU(Radio Frequency Unit)と、ベースバンド処理部からなるIFU(Interface Unit)から構成されます。

FWAによるユーザ端末の接続イメージ

WT:Wireless Terminal(加入者局) AP:Access Point(基地局)
AP-RFU:Access Point- Radio Frequency Unit    AP-IFU:Access Point- Interface Unit

図1 FWAによるユーザ端末の接続イメージ

 

WIPASは、WIPASステップ1の開発以来、機能拡充が行われ、さまざまな機種が提供されてきましたが、これらの仕様の比較を表に示します。

表 アクセスサービスシステム研究所で開発したFWA

項目
WIPASステップ1
WIPASステップ2
ステップ2機能高度化
トリプルプレイ対応WIPAS
周波数帯
26GHz帯 26GHz帯 26GHz帯 26GHz帯
接続形態
P-MP P-MP P-MP、P-P P-MP、P-P
変調方式
QPSK QPSK、16QAM QPSK、16QAM QPSK、16QAM、64QAM
通信方式
TDMA/TDD TDMA/TDD TDM/TDMA/TDD TDMA/TDM/ダイナミックTDD(P-Pの複信方式は固定TDD)
無線伝送速度
QPSK:40Mbit/s QPSK:40Mbit/s 16QAM:80Mbit/s QPSK:40Mbit/s 16QAM:80Mbit/s QPSK:40Mbit/s 16QAM:80Mbit/s 64QAM:240Mbit/s
データ伝送速度*1
QPSK:23Mbit/s QPSK:23Mbit/s 16QAM:46Mbit/s QPSK:23Mbit/s 16QAM:46Mbit/s QPSK:23Mbit/s 16QAM:46Mbit/s64QAM:180Mbit/s
最大伝送距離
700m程度 700m程度(QPSK)400m程度(16QAM) 800m~900m(QPSK)400m程度(16QAM) P-MP:700m程度 P-P:1.8km程度
収容WT数
最大239 最大239 最大239(P-MP) 最大128(P-MP)
その他
(P-MP向け)
WT間の公平性制御最低帯域保証 WT間の公平性制御優先制御 映像のマルチキャスト配信

P-MP:Point to Multipoint   P-P:Point to Point
優先制御:音声、映像、データのうち特定の情報を優先的に転送する制御
公平性制御:すべてのユーザに帯域を公平に割り当てる制御
*1:データ伝送速度は、イーサネットフレームレベルのデータ伝送速度

(3) ワイヤレスIPアクセスシステム(WIPAS)の事業展開への支援

WIPASは、2002年9月に、NTT東西のBフレッツの加入者系通信サービスの一つとして導入されてから、長らく使用されてきましたが、光ファイバ回線を使用したより安価な高速通信サービスの拡大に伴いその役割が減り、NTT東日本では2009年3月に、NTT西日本では2011年8月にWIPASを使用した通信サービスの新規申し込みの受け付けを終了しました。
しかし、この間、WIPASのグローバル展開の一環として、2005年にチリの鉱山会社CODELCO社(Corporacion Nacional del Cobre de Chile社:チリ銅公社)との共同実験に参加し、チリ鉱山のネットワークにWIPASを適用し、チリ鉱山会社との共同実証実験を行いました。また、WIPASは、2010年8月に発生したチリ落盤事故でも、有線の仮設伝送路の設置が困難な現場に設置され利用されました。2011年には、従来より伝送距離が長い新WIPASの実証実験をチリ鉱山で実施し、粉塵環境下での基本伝送特性とアプリケーションの評価、10kmまでの長距離伝送の実証を行いました。
現行WIPAS(新WIPASの前の機種)については、図2に示すようなグローバル展開が進められています。

現行WIPASのグローバル展開の状況

図2 現行WIPASのグローバル展開の状況

(4) WIMAXのFWAへの適用性評価

2006年~2007年に、NTTドコモや事業会社とWiMAXのFWA適用性評価に関する共同実験を実施し、エリアカバレッジやサービス性などを明らかにしました。

(5) 多様な無線通信技術の開発

・2003年に、デジタルテレビ中継サービスにおける端末回線の救済や臨時サービスに適用可能な11/15GHz帯の無線を使用したデジタル映像伝送用可搬型ワイヤレスシステムを開発しました。
・2010年に、地理的条件や経済的条件などの理由で光伝送路のみのループ化、2ルート化が困難なエリアに対して、光伝送路との共存補完により地域伝送路網を経済的に構築できる大容量デジタル無線システム11GHz帯大容量デジタル無線方式を開発しました。

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