気候変動とは?その原因と現状、対策を詳しく解説
近年では猛暑や大雨などの極端気象が多く発生するようになったため、気候変動について関心を持つ方も多いのではないでしょうか。気候変動に関する政府間パネル 第6次評価報告書(IPCC AR6)によれば、極端気象の要因ともなる気候の温暖化が進んでおり、その原因は人間による温室効果ガスの排出であるとしています。
この記事では、気候変動の原因と現状、および対策について詳しく解説していきます。(公開日:2021/10/28 更新日:2024/03/13)

1. 気候変動とは?
気候変動(climatic variation)とは、さまざまな原因により、気候が比較的短期的に変動することです。中長期的な気候の変化は気候変化(climate change)と呼ばれます。
そもそも気候とは「大気の平均状態」のことをさします。
地球が太陽から受け取ったエネルギーは、上の図にあるとおり、雲や風、火山活動や人間活動の影響によるエーロゾル(空気中に浮遊するちりなどの固体や液体の粒子、上図ではAerosols)、雪や氷、植生、海流などさまざまに形を変え、大気圏と水圏、陸面、雪氷圏、生物圏の間で相互にやりとりされて、最終的には赤外線として宇宙空間に放射(地球放射)されます。
このようなエネルギーの流れに関与する地球の全システムを「気候システム」といい、これにより気候は決定されています。
地球規模の気候変動・気候変化は、気候システムに外部から強制力が加わることで起こります。外部強制力には、以下のように大きくわけて「自然的要因」と「人為的要因」の2つがあります。
| 気候変動・気候変化の主な要因 | 要因による影響 | |
|---|---|---|
| 自然的 要因 |
太陽活動の変動 | 大気上端で受け取る太陽放射量の変化 |
| 地球の公転軌道の変動 | ||
| 火山の噴火によるエアロゾル(エーロゾル)の増加 | 地表で受取る日射量の変化 | |
| 人為的 要因 |
化石燃料等を起源とする温室効果ガス(二酸化炭素等)の排出による大気組成の変化 | 宇宙に出ていく赤外線放射量の変化 |
| 森林伐採や土地利用の変化 | 地表面の反射率の変化、二酸化炭素吸収源の変化、水循環の変化 | |
| 大気汚染物質(硫酸塩エアロゾルや黒色炭素など)の排出 | 地表で受取る日射量の変化、雲粒径や雲量変化を通した雲の反射率の変化 | |
(出典:文部科学省・気象庁・環境省『日本の気候変動とその影響(2012年版)』)
そのほかに、気候変動・気候変化は外部強制力が加わらなくても、大気・海洋・陸面の内部的な相互作用により起こることがあります。その代表的な例としてエルニーニョ/ラニーニャ現象が挙げられます。
地球全体の平均気温は、地球が太陽から受け取るエネルギーと、地球から宇宙に放射されるエネルギーとのバランスによって決まっています。従って、人為的要因が大きくなると、地球規模でのエネルギーバランスに変化をもたらし、気候に大きな影響を与えることになります。
●エルニーニョ現象について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
エルニーニョ現象とは?世界の天候に影響をおよぼす大気と海洋の相互作用 -仕組み編-エルニーニョ現象とは?世界の天候に影響をおよぼす大気と海洋の相互作用 -研究の歴史編-
2. 気候変動・気候変化の自然的要因
ここで、気候変動・気候変化の自然的要因について詳しく見ていきましょう。
気候変動・気候変化の自然的要因として大きなものとしては、「地球の公転軌道や自転軸の変化による約2万年~10万年周期の気候変化」と「数百年のスケールで起きる太陽活動の変化による気候変化」の2つが挙げられます。
2-1. 地球の公転軌道や自転軸の変化による気候変化
地球の気候は、約10万年周期で氷期(寒冷期)と間氷期(温暖期)を繰り返してきているといわれています。
下の図は、過去80万年の南極の気温推定値を時系列上に表示したものです。
上図に見られるように、南極の気温推定値は約10万年周期で上下しており、氷期と間氷期を繰り返す気候変化が起きていることがわかります。
この約10万年周期の気候変化は、地球が太陽の周りをまわる公転軌道や、地球の自転軸の周期的変化(ミランコビッチサイクル)と密接に関係しているといわれます。
ミランコビッチサイクルは、セルビアの地球物理学者ミランコビッチが1910年代~1940年代にかけ提唱したもので、上図においてE、T、Pで示した、以下の3つの要因による約2万~10万年スケールの日射量の変化が、氷期と間氷期の周期的変化と密接に関係するというものです。
- E:地球が太陽の周りをまわる際の公転軌道の変化(約10万年周期)
地球の公転軌道と太陽の間の距離が約10万年周期で変化する。 - T:自転軸の傾きの変化(約4万年周期)
地球の自転軸が約4万年周期で、22.1度~24.5度の間を変化する。 - P:自転軸の歳差運動(約2.6万年周期)
地球の自転軸が約2.6万年周期で、コマのように首振り運動を行う。
以上3つの要因により、各緯度の季節ごとの日射量が変化します。
北半球にある大陸の夏季の日射量があるしきい値を下回ると、前年冬に降った雪が夏に溶けきらず、雪が積もるにつれて氷床が成長するようになり、氷期がはじまる要因となりえることが、多くの研究により示されています。
2-2. 太陽活動の変化による気候変化
地球の気候は、上の約10万年周期より短い期間、過去およそ2000年の間でも変化しています。この気候変化の要因は、太陽活動の変化によるものといわれています。
上の図は、過去1800年間の北半球の気温推定値を、1961年~1990年の平均気温からの差(偏差)として示したものです。推定の方法には複数あるため、上図では推定方法ごとに色わけされて示されています。
上図に示されているとおり、約900年~約1400年の比較的気温が高い「中世の温暖期」と呼ばれる時期、および約1400年~約1900年の比較的気温が低い「小氷期」と呼ばれる時期があり、過去およそ2000年の間でも気候変化があったことがわかります。
この中世の温暖化や小氷期の気候変化は、数百年スケールの太陽活動の強弱による日射量の変化が影響しているものと考えられています。中世の温暖期は太陽活動が比較的活発であったため、また、小氷期は太陽活動が低下したためにもたらされたものと推測されています。
3. 気候変動の現状と予測
次に、環境省・文部科学省・農林水産省・国土交通省・気象庁『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~』から、世界と日本の気候変動の現状と予測をそれぞれ見てみましょう。
3-1. 世界の気候変動
世界の気候変動の現状と予測は以下のとおりです。
将来も気温の上昇が続く
世界の年平均気温は、19世紀後半以降、100年あたり0.72℃の割合で上昇しています。
21世紀末には20世紀末と比較して、RCP2.6シナリオ(下図の青線)で0.3~1.7℃、RCP8.5シナリオ(下図の赤線)で2.6~4.8℃の上昇が予測されています。
※「RCPシナリオ」とは、温室効果ガスの大気中の濃度が将来どの程度になるかを想定したものです。濃度変化には不確実性があるため、RCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、およびRCP8.5の4つの濃度変化パターンが想定されています。これら4つのシナリオは、RCPに続く数値が大きくなるほど、温室効果ガスの排出が多いことを意味しています。
北極海の海氷が減少している
北極域の海氷域面積は1979年以降減少しており、年最小値の1年あたりの減少率は北海道の面積にほぼ匹敵します。
21世紀末の北海域における9月の海氷域面積は、20世紀末と比較して、RCP2.6シナリオで約43%、RCP8.5シナリオで約94%減少すると予測されています。
(画像出典:IPCC『IPCC Fifth Assessment Report』北半球の海氷域面積(9月)の将来変化。白く塗りつぶされた部分は21世紀末の平均)
海水温が上昇している
世界の年平均海面水温は、1891年~2016年において、100年あたり約0.53℃の割合で上昇しています。
21世紀末までに、RCP2.6シナリオでは約0.6℃、RCP8.5シナリオで約2.0℃の上昇が予測されています。
熱帯低気圧の最大風速および降雨量は増加する可能性が高い
地球全体での熱帯低気圧の発生頻度は減少するか、または基本的に変わらない可能性が高いものの、地球全体で平均した熱帯低気圧の最大風速および降雨量は、増加する可能性が高いといわれています。
最近の研究では、日本の南海上からハワイ付近、メキシコの西海上にかけて、最大風速59m/秒以上の猛烈な台風が通過する可能性が高いとの予測が報告されています。
3-2. 日本の気候変動
文部科学省・気象庁『気候変動2020 -大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-』および『気候変動監視レポート 2022 -世界と日本の気候変動および温室効果ガス等の状況-』によれば、日本の気候変動の現状として以下のものが挙げられています。
(1)平均気温の上昇とともに極端な高温の頻度も増加している
日本の年平均気温の上昇は世界平均より速く進行しており、日本国内では、真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数が有意に増加しているとされています。
(2)日本国内の大雨および短時間強雨の発生頻度が増加している
ただし、雨の降る日数は有意に減少しており、年降水量・季節降水量には有意な長期変化傾向は見られないとのことです。
(3)日本国内の積雪、大雪は減少傾向にある
日本海側の各地域では、年最深積雪が有意な減少傾向にあり、また大雪の頻度も有意に減少しているとされています。
(4)冬季は暖冬型の、夏季は日本付近で南西風を強めるような気圧配置に近づく傾向が近年見られる
冬季は平年と比べて、日本の南東海上で気圧が高くなるという傾向が見られます。平年の冬季には日本の西側で高気圧が、東側で低気圧が発達する「西高東低」の気圧配置となり、北西の季節風が吹くため、上の変化は暖冬の際に見られる傾向と共通します。
また、夏季は平年と比べて、日本の南海上で気圧が高く、北日本で低くなるという傾向が見られるため、これは南西風を強める要因となります。
以上により、今後の日本では冬季の季節風が弱まり、逆に夏季は南西風が強まると考えられています。
(5)日本近海の平均海面水温は、世界平均の 2 倍を超える割合で上昇 している
日本近海の2022年までのおよそ100年間にわたる海面水温の上昇率は+1.24℃/100年となっており、世界の上昇率+0.60℃/100年より大きくなっているとされています。
(6)日本沿岸の平均海面水位は、1980 年以降、上昇傾向にある
2006年から2018年の期間では、1年あたり3.7mmの上昇率となっているとのことです。ただし、観測期間を通して一貫した上昇傾向は認められないとされています。
(7)オホーツク海の海氷面積は減少している
オホーツク海では11月下旬になると西部域が結氷をはじめ、海氷域は徐々に拡大・南下して、1月上旬に北海道オホーツク地方沿岸に接近します。その頃には北海道オホーツク地方沿岸の海水も結氷し、サハリン東岸を南下してきた流氷と沿岸域の海氷が混在して流氷野を形成します。
このオホーツク海の海氷面積が、1971年~2020年まで、10年あたり5.8万km2の減少となっています。これは10年あたり平均値の3.7%の割合で減少していることになります。
また、北海道沿岸で観測される流氷量も1980年代後半以降、著しく減少しています。
3-3. IPCC AR6では「人間の影響が地球を温暖化させてきた」としている
ここまで見てきた観測からもわかるように、近年では大きな気候変動が実際に起きています。この原因について、『IPCC AR6 WG1報告書 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳(2022年12月22日版)』おいては、以下のように明言されています。
「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」
この報告書には、さらに続いて以下のように記載されています。
「1750 年頃以降に観測された、よく混合された温室効果ガス(GHG)の濃度増加は、人間活動によって引き起こされたことに疑う余地がない。2011年(AR5で報告された観測結果)以降、大気中濃度は増加し続け、2019 年の年平均値は、二酸化炭素(CO2)が 410 ppm、メタン(CH4)が 1866 ppb、一酸化二窒素(N2O)が 332 ppb に達した」
その上で、「1979 年以降の対流圏の温暖化の主要な駆動要因は、よく混合されたGHGである可能性が非常に高い」としています。
ただし、人間活動による気候変化・気候変動には未解明の部分もまだ多くあります。その詳細については今後の研究成果に期待されるところです。
4. 気候変動対策の科学技術的取り組み
次に、気候変動対策としてどのような取り組みが行われているのか、特に科学技術的側面を中心に見ていきましょう。
気候変動対策には「緩和」と「適応」が重要といわれています。
- 緩和とは ...温室効果ガスの排出削減と吸収の対策を行うこと。
- 適応とは ...すでに起こりつつある気候変動の影響を回避・無効化・防御すること
気候変動の緩和と適応のそれぞれを目標とする科学技術を見ていきましょう。
4-1. 気候変動を緩和するための科学技術
気候変動を緩和するための科学技術は以下のようなものがあります。
再生可能エネルギー
気候変動を緩和するためには、人間活動による温室効果ガス排出を抑制することが必要です。2015年に採択され、2016年に発効したパリ協定では、温室効果ガスの各国の削減目標が定められています。
太陽、地熱、水力、海洋、風力、バイオなど、化石燃料の消費によらない再生可能エネルギーは、温室効果ガスを発生しません。そのため、気候変動緩和のための重要な技術として、研究が進められています。
二酸化炭素変換技術
これから排出される二酸化炭素を再生可能エネルギーの利用により減らすだけでなく、すでに存在している二酸化炭素を減らすことも考えなくてはいけません。それが環境負荷を「ゼロ以下」にする技術です。
環境負荷をゼロ以下にする二酸化炭素変換技術は、人工光合成などの電気化学的アプローチと、植物や藻類のもつ光合成機能をゲノム編集などにより最大化させる生物学的アプローチがあります。土壌、海洋の二酸化炭素削減および吸収量向上の取り組みも進んでいます。
再生可能エネルギー導入のためのエネルギー需要制御・供給技術
再生可能エネルギーのスムーズな導入には、エネルギーの供給方法も重要な課題となります。そのため、天候などによる発電量の変動を吸収するためのエネルギー需要制御技術、あるいは災害時などにも電力を安定して送るためのエネルギー供給技術などが研究されています。
次世代エネルギーの活用
圧倒的にクリーンかつ無尽蔵なエネルギー源である核融合炉による発電、および宇宙太陽光発電の技術も研究が進められています。
4-2. 気候変動へ適応するための科学技術
まず、「すでに起こりつつある気候変動影響を回避・無効化・防御すること」としては、文部科学省『今後の地球環境研究の在り方について(中間報告)』において、「2.気候変動への適応に向けた技術開発の在り方について」として、「全球規模の気候変動予測情報を地域規模で活用し、適応策導入につなげていく」ことの必要性が強調されています。具体的には以下のような研究が進められています。
地球環境の未来予測
前述のとおり人間活動による気候変化・気候変動については、未解明な部分が多くあります。そこで、環境と社会に関する膨大な情報をインプットデータとして、未来の気候変動をシミュレーションする研究が進んでいます。
未来予測シミュレーションでは、デジタルツインコンピューティング(現実世界のツイン=双子をデジタル上に構築すること)の一環として、環境面の予測だけでなく、人間社会の変化と環境の変化との相互作用を考慮して、その両面から地球の未来を予測する取り組みもあります。
気象・被災予測の高度化
現状での人工衛星やアメダス、レーダーなどを使った気象観測は、15分程度の時間内、および数kmの空間内でおこる局地的大雨などに対応できないことがあります。そこで、IoT(Internet of Things)センサを海上や海中、山中などへ設置し、極端気象(極端な高温・低温や強い雨など)や長期的な気候変動を予測し、被害を最小に抑える取り組みもはじまっています。
5. まとめ
- 気候変動とは気候がさまざまな原因により、さまざまな時間スケールで変動すること。
- 気候変動の原因には、大きくわけて自然的要因と人為的要因の2つがある。
- 気候変動の自然的要因には、地球の公転軌道や自転軸の変化によるもの、および太陽活動の変化によるものがある。
- 近年では気候の温暖化が進み、極端気象が増えている。
- 気候変動対策のための科学技術的取り組みも進められている。
参考文献
- IPCC『IPCC Fifth Assessment Report』
- IPCC『Summary for Policymakers』
- NTT技術ジャーナル『安心・安全に暮らすためのプロアクティブ環境適応技術』
- NTT技術ジャーナル『環境負荷ゼロに貢献する次世代エネルギー活用技術とCO2変換技術』
- NTT技術ジャーナル『環境負荷ゼロの実現に向けた、エネルギー流通基盤技術』
- NTT技術ジャーナル『包摂的サステナビリティの実現に向けた環境社会循環予測技術』
- 神奈川県『地球温暖化の影響と適応策』
- 環境省『第5次評価報告書 統合報告書』
- 環境省・文部科学省・農林水産省・国土交通省・気象庁『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~』
- 気象庁『IPCC AR4 WG1 - 概要及びよくある質問と回答』
- 気象庁『IPCC AR6 WG1報告書 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳(2022年12月22日版)』
- 気象庁『気候変動』
- 気象庁気象研究所『地球温暖化で猛烈な熱帯低気圧(台風)の頻度が日本の南海上で高まる~ 多数の高解像度温暖化シミュレーションによる予測 ~』
- 国立環境研究所 地球環境研究センター『寒冷期と温暖期の繰り返し』
- 全国地球温暖化防止活動推進センター『緩和・適応とは』
- 日本天文学会 天文学事典『ミランコビッチサイクル』
- 文部科学省・気象庁『気候変動2020 -大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-』
- 文部科学省・気象庁『気候変動監視レポート 2022 -世界と日本の気候変動および温室効果ガス等の状況-』
- 文部科学省『今後の地球環境研究の在り方について(中間報告)』、「2.気候変動への適応に向けた技術開発の在り方について」








