特別研究員
坂本 泰志

増え続ける通信容量を持続的に支えるための次世代光ファイバの研究

筑波研究開発センタ
特別研究員
坂本 泰志

―現在の研究分野・研究内容・研究テーマを教えてください。

将来の超大容量・高速なネットワークを支える次世代光ファイバに関する研究を行っています。現在、ネットワークを流れる通信量は年率数十%で増加しており、近年の通信の大容量化を支えてきた光ファイバ(シングルモードファイバ)をもってしても2020年代後半には収容しきれないほどの通信量に達するとの予想がなされています。そのために、現在敷設されている光ファイバの通信容量限界とされている毎秒1テラ(1012)ビットの通信を超える1ペタ(1015)ビット以上の通信が可能な光ファイバの実現を目指しています。具体的には、1本の光ファイバで複数の光伝搬路を有しているマルチコアファイバ・マルチモードファイバを用いた空間多重(コア多重・モード多重)技術を主な研究対象としており、光ファイバ構造の最適化や性能実証などに取り組んでいます。

―自身の研究テーマについて、どのような点において「世界トップレベルの革新研究/先導的な技術開発である」と言えるのか教えてください。

我々の研究グループでは、早期から空間多重用光ファイバの研究に取り組んでおり、世界最高の性能指数を国際会議などにおいて報告してきました。私はその中でも、これまでのシングルモードファイバ中とは異なる特異な光伝搬を実現する結合型モード多重ファイバに着目し、世界に先駆けて伝搬メカニズムの解明及び既存光ファイバの10倍以上の高い性能ポテンシャルを実証してきました。新規ファイバ構造の設計においては、単純に容量拡大のみを達成する設計するだけでは不十分であり、NTTのネットワークに適用可能な機械的信頼性の担保、限られた通信設備空間を効率的に利用するための高い空間多重効率、および光伝送信号間の信号品質偏差の低減などを同時満たすことが必要であり、それらを考慮したうえでの性能指数のトップデータの達成を目指しています。検討している構造は、これまでの光ファイバの設計技術が適用できない新しい方式であり、様々な周辺技術も含めて検討する必要がある分野となります。これに対して私の研究テーマでは、長期的視点をもってよりインパクトの高い候補技術にチャレンジすること、および光ファイバ技術のみならず周辺技術(伝送システム評価、省電力中継技術など)も含めて革新的及び総合的な検討となることを重要視し、NTTのネットワークに革新的変化をもたらす通信基盤の実現を目指しています。

―自身の研究テーマを進めることで世界がどのように変えられるのか、また、自身が世界をどのように変えたいと考えているかを教えてください。

光ファイバはNTTのネットワークを基盤から支える重要な部分であり、与える影響の度合い・範囲も大きなものとなります。光ファイバ技術自体はエンドユーザーからは表に見えない部分ではありますが、そのインパクトは大きく、将来の情報通信サービスの基礎となります。自分自身が研究開発した光ファイバにより、多くの革新的なアプリケーションサービスの実現をサポートしたいという思いと、増え続ける通信消費電力への対処などの社会的課題を解決することで、NTTネットワークのみならず世界の変革に寄与したいと考えています。光ネットワークを今後数十年にわたって持続可能なものとし、情報通信を用いて人々のビジネス・生活をさらに豊かになることを目指します。

PROFILE

坂本 泰志

増え続ける通信容量を持続的に支えるための
次世代光ファイバの研究

特別研究員 坂本 泰志

略歴

2006年
NTT入社
2018年
特別研究員

委員等

OFCコミッティ(2020-2022年)
OCS委員(2017-2022年)

受賞歴

2013年
OFT研究会 奨励賞
2014年
電子情報通信学会 学術奨励賞

報道発表

1. 世界最高密度の光ファイバを実用に耐えうる信頼性で実現
https://group.ntt/jp/newsrelease/2016/05/16/160516a.html

2. OSA News release
Better By the Dozen: Highest Core Density Realized with 12 Core Single-Mode Optical Fiber
http://www.ofcconference.org/en-us/home/news-and-press/ofc-nfoec-press-releases/better-by-the-dozen-highest-core-density-realized/

研究員紹介

チーム紹介