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    光合成とは?化学反応の詳細や酵素、人工光合成について詳しく解説

      光合成とは植物などが光のエネルギーを使い、養分を作るものです。酸素発生型光合成は、約28億年前にシアノバクテリア(ラン藻)によりはじめられ、現在でも植物や藻類に受け継がれています。この記事では、光合成の化学反応過程や酵素の役割、進化の過程、および人工光合成の研究について解説します。

      光合成とは植物などが光のエネルギーを使い、デンプンなどの養分を作るものです。
      水を分解して酸素を発生し、二酸化炭素を有機物に固定する酸素発生型光合成は、約28億年前に原核生物であるシアノバクテリア(ラン藻)によりはじめられました。シアノバクテリアは真核生物の細胞内に共生して葉緑体となり、現在でも植物や藻類に受け継がれています。
      この記事では、光合成の化学反応過程や酵素の役割、進化の過程、および人工光合成の研究についてわかりやすく解説していきます。

      1. 光合成とは?

      光合成とは、植物などが光のエネルギーを使い、デンプンなどの養分(有機物)を作ることです。植物などが行う「酸素発生型光合成」は、水を分解して酸素を発生し、二酸化炭素を有機物に固定します。一方、光合成細菌などが行う「非酸素発生型光合成」では、水でなく硫化水素(H2S)などを分解し、酸素ではなく硫黄(S)を作るものもあります。
      光合成(以下ことわりがない場合は酸素発生型の光合成をさします)の化学反応過程は、光のエネルギーを化学エネルギーに変換する「光化学系」と、光化学系で作られた化学エネルギーにより二酸化炭素を固定する「カルビン回路」とにわけられます。光化学系やカルビン回路を構成するタンパク質(酵素)は、近年になって立体構造が解明され、その化学反応過程がより詳しく明らかになりつつあります。
      光合成は、原核生物であるシアノバクテリアによって最初にはじめられたと考えられます。シアノバクテリアが非光合成の真核生物に細胞内共生をすることで、植物やさまざまな藻類が「葉緑体」を獲得し、光合成の能力を持つようになりました。
      また、藻類や植物が大気中に酸素を放出したため、地球上の酸素濃度が上昇し、今度はその酸素を利用する動物などの生物も登場することとなりました。
      近年では、二酸化炭素削減に大きな役割を果たすと期待される「人工光合成」についての研究も進んでいます。

      2. 光合成の化学反応過程

      光合成の化学反応過程をやや詳しく見ていきましょう。光合成の化学反応過程は、下図にあるとおり大きく「光化学系」と「カルビン回路」にわけられます。

      上図のように、光化学系では光のエネルギーを利用して、水を分解して酸素を放出します。その際に作り出される「ATP」(アデノシン三リン酸)と「NADPH」(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)がカルビン回路へ受け渡され、二酸化炭素が固定され、養分(有機物)がカルビン回路で合成されます。
      歴史的には光化学系は「明反応」、カルビン回路は「暗反応」と呼ばれてきました。光化学系は光を必要とする反応、カルビン回路は光を必要としない反応と考えられていたからです。
      明反応・暗反応については下の記事にも詳しく解説してあります。

      ただし、光化学系にも光が関与しない反応が、またカルビン回路にも光を必要とする反応が存在することがわかってきたため、近年では明反応・暗反応の用語は使われないようになっています。
      以下では、光化学系とカルビン回路の化学反応過程をそれぞれ解説していきます。

      2-1. 光化学系

      下の図は、光化学系の化学反応過程を示したものです。

      (画像出典:東京薬科大学 生命科学部 応用生命科学科『光合成』光化学系の化学反応過程)
      (画像出典:東京薬科大学 生命科学部 応用生命科学科『光合成』光化学系の化学反応過程)

      光化学系の化学反応は、葉緑体の内部(シアノバクテリアの場合は細胞内部)にある膜構造「チラコイド膜」で行われます。チラコイド膜の外側が「ストロマ」、内側が「ルーメン」です。
      チラコイド膜には以下の4つのタンパク質複合体が配置されています。

      1. 光化学系Ⅱ複合体(PSⅡ)
      2. チトクロームb6-f複合体
      3. 光化学系Ⅰ複合体(PSⅠ)
      4. H+-ATP合成酵素

      光化学系においては、カルビン回路で二酸化炭素を固定するためエネルギーとして使用される、NADPHとATPを作り出します。
      上の1~3までの複合体が、水を分解することにより得られる電子を伝達しながらNADPHを作り出す「電子伝達系」となります(上図の赤い線で示されているのが伝達される電子の経路)。
      また、4は、やはり水を分解することにより得られる水素イオン(H+)のエネルギーによりATPを作り出します。

      電子伝達系

      電子伝達系は、クロロフィルなど複数の種類の光合成色素が結合してできている、光化学系Ⅱ複合体(PSⅡ)からはじまります。
      光合成色素は光を吸収すると励起します。励起エネルギーは隣接する光合成色素へ伝わりながら、反応中心であるクロロフィルa(上図中のP680)へ送られます。
      P680は励起エネルギーを受け取ると、そのエネルギーにより電子を放出します(光化学反応)。その後、電子を失った反応中心には電子が供給されます。この供給される電子は、上図「水分解装置」において水を分解して得られます。
      2つの水分子(2H2O)の分解により、2つの電子、4つの水素イオン(H+)、ひとつの酸素分子(O2)が発生します。光合成で放出される酸素はこのとき発生するものです。
      電子が放出されると「電子伝達」がスタートします。
      電子は、PSⅡ内にあるフェオフィチンa(上図Phe)、電子受容体QAキノン電子受容体(上図QA)、QBキノン電子受容体(上図QB)を経て、チトクロームb6-f複合体へ伝達され、最後に光化学系Ⅰ複合体(PSⅠ)へ到達します。
      PSⅡと同様にここでも光化学反応が起こり、電子はタンパク質「フェレドキシン」(上図Fd)へ伝達されます。伝達された電子は最終的にNADP+へ渡され、NADPHが生されます。

      ATPの生成

      電子伝達系ではPSIIで水が分解される際、ルーメンにH+が放出されます。また、チトクロームb6-fも、電子伝達を行う際にルーメンにH+を放出します。この2つの作用を通じてルーメンにおける濃度が上昇したH+は、H+-ATP合成酵素を通ってストロマへ放出されます。
      H+が放出される際、その運動エネルギーを利用してADP(アデノシン二リン酸)とリン酸(Pi)が結合し、ATPが合成されます。
      以上のプロセスにより生成されたNADPHとATPは、次の反応系カルビン回路へ受け渡され、二酸化炭素固定のためのエネルギーに使用されます。

      2-2. カルビン回路

      カルビン回路はストロマにおいて起こる、循環的な化学反応系です。11の酵素からなる複雑な循環経路を構成し、NADPHとATPをエネルギーとして使用して、二酸化炭素を固定してトリオースリン酸を生成します。
      下の図は、このカルビン回路のうちポイントとなる反応のみを抜き出したものです。

      (画像出典:東北大学 理学部 生物学科『光合成の機作』)
      (画像出典:東北大学 理学部 生物学科『光合成の機作』)

      上図において二酸化炭素(CO2)の固定は、酵素であるリブロース二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBPCase あるいはrubisco、ルビスコ)が触媒する反応によって行われます。この反応から2分子のホスホグリセリン酸(上図PGA)が生産されます。
      このPGAから、光化学系より受け渡されたエネルギー源ATPとNADPHを消費して、トリオースリン酸(上図TP)が生産されます。トリオースリン酸の一部(0.33分子)は、糖合成に利用されます。残りのトリオースリン酸からATPを消費してリブロース二リン酸が再生され、再び触媒反応に使われます。
      糖合成は、細胞質でトリオースリン酸からスクロース(ショ糖)が合成されます。このスクロースが、細胞の内外でさまざまに利用されることになります。

      2-3. 光合成の化学式

      光合成の化学反応過程のまとめとして、化学式を見てみましょう。
      光合成は全体としてみると、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)からデンプンやショ糖などの糖類と酸素(O2)を生成する化学反応です。
      ここでは、糖類として最小単位のグルコース(C6H12O6)を考えます。係数合わせを行えば、化学式は以下のようになります。
      6CO2+12H2O → C6H12O6+6O2+6H2O

      3. 光合成の酵素

      光合成の化学反応を担うのは、タンパク質である「酵素」です。酵素についての科学的な研究も着実に進んでいます。
      ここでは、上でみた光化学系で大きな役割を果たすPSⅡの立体構造、PSⅡとPSⅠのステート遷移、およびルビスコの効率改善についての研究を見てみましょう。

      3-1. PSⅡの立体構造

      PSⅡは前述のとおり、光のエネルギーを利用して水を分解し、電子を放出します。その構造は、水分子が入り込む通路、およびその先にあって実際に水を分解する反応中心から構成されます。
      PSⅡは水分子が入り込むと、立体構造を変化させて水を分解し、反応を終えると元の形に戻ります。しかし、このPSⅡの立体構造は非常に複雑であるため、長年にわたって解明できない謎とされてきました。
      ところが、1999年になり、まずPSⅡの結晶化が実現され、さらに2009年に、大型放射光施設Spring-8のX線を使用して鮮明な立体構造が明らかになりました。

      (画像出典:SPring-8 大型放射光施設『光合成の中核をなす複合体の構造を解明』PSⅡの全体構造。19個のタンパク質から構成される複合体で、左右対称につながっている。2つの赤い丸が反応中心)
      (画像出典:SPring-8 大型放射光施設『光合成の中核をなす複合体の構造を解明』PSⅡの全体構造。19個のタンパク質から構成される複合体で、左右対称につながっている。2つの赤い丸が反応中心)
      (画像出典:SPring-8 大型放射光施設『光合成の中核をなす複合体の構造を解明』PSⅡの反応中心の構造)
      (画像出典:SPring-8 大型放射光施設『光合成の中核をなす複合体の構造を解明』PSⅡの反応中心の構造)

      PSⅡの反応中心は、「ゆがんだ椅子」のような形をしています。このような不安定な構造をとっていることで、構造を柔軟に変化させることができ、触媒として働くことができると考えられています。

      3-2. PSⅡとPSⅠのステート遷移

      電子伝達系ではPSⅡとPSⅠの2つの酵素が直列に並んでいます。光エネルギーから化学エネルギーへの変換を効率良く行うためには、この2つの光化学系がバランス良く駆動されることが必要です。
      このバランスを保つ仕組みは「ステート遷移」として1969年に発見されました。近年では、このステート遷移のより詳しい構造やメカニズムが明らかになりつつあります。
      光化学系は光を集める装置(集光装置)として、PSⅡは「LHCⅡ」を、PSⅠは「LHCⅠ」を持っています。集光装置は吸収した光エネルギーを光化学系に伝達します。
      ところが、この2つの集光装置は光を感受する特性が異なるため、照射される光によっては、2つの光化学系の励起バランスが崩れてしまうことがあります。
      LHCⅡが青色や橙色の光をよく集めるのに対し、LHCⅠは近赤外光をよく集めます。そのため、青色や橙色の光が照射され、PSⅡがより強く励起された場合には、LHCⅡはPSⅡから切り離され、PSⅠへと移動します。
      また逆に、近赤外光が照射され、PSⅠがより強く励起された場合には、LHCⅡはPSⅠから切り離れ、PSⅡへ移動します。
      2021年7月8日には英科学雑誌Nature Plantsに、日本人を含む国際グループにより解明された「光化学系Ⅰステート2超複合体(PSⅠ-LHCⅠ-LHCⅡ)」の立体構造が発表されました。
      また、この研究においては、立体構造の一部分を欠損した変異株を遺伝学的に作製し、立体構造の各部分が具体的にどのように機能しているかも明らかにしています。

      3-3. ルビスコの効率改善

      カルビン回路において二酸化炭素を固定するため中心的な役割を果たす酵素ルビスコは、重要な役割を担っていながら著しく非効率なのが特徴です。反応速度が遅く、一般の酵素が1秒あたり100~1,000回反応するのに対し、ルビスコは二酸化炭素を1秒間に約3回程度しか反応しません。
      植物は、このルビスコの反応速度の遅さを、ルビスコを大量に保持することにより補っています。植物の葉に存在するタンパク質の約30%はルビスコであり、そのためルビスコは地球上で最も多く存在する酵素となっているほどです。
      このルビスコの反応効率を改善するための研究も進んでいます。
      ルビスコの反応速度は種によっても異なります。トウモロコシやサトウキビ、あるいはイネ科の穀物で日本では「たかきび」とも呼ばれるソルガムなどが比較的速いのに対し、イネやコムギ、大豆などの主要作物の多くは遅いのが特徴です。
      そこでイネに対して、遺伝子組み換え技術およびゲノム編集技術によって、反応速度が速いソルガムのルビスコが導入されました。それにより、イネのルビスコの反応速度は約2倍にまで高まりました。

      4. 光合成の進化

      ここでは、光合成の進化についての概略を見ていきましょう。

      4-1. 非酸素発生型光合成

      光合成は、これまで見てきた植物や藻類が行う酸素発生型光合成のほかに、紅色細菌や緑色硫黄細菌などの光合成細菌が行う非酸素発生型光合成もあります。
      酸素発生型光合成では、光化学系としてPSⅡとPSⅠの2つが使われます。
      それに対して非酸素発生型光合成では、紅色細菌などはPSⅡと類似したもののみ、また緑色硫黄細菌などはPSⅠに類似したもののみと、いずれも光化学系をひとつしか持ちません。そのため、光から十分なエネルギーが得られず、水を分解できないのです。
      水を分解できないため、光合成細菌は電子を獲得するために、水の代わりに硫化水素や水素分子、簡単な有機分子などを利用しています。
      酸素発生型光合成で発生する酸素は水の分解により発生するため、光合成細菌などが行う非酸素発生型光合成では酸素は発生しません。

      約46億年前に誕生した地球上で、生命が誕生したのは約38億年前といわれています。光合成の誕生は、化石の炭素同位体比分析から、生命が誕生してすぐ、約35億年前と示唆されています。
      ただし、地球上に酸素の蓄積がはじまったのは、約28億年前といわれています。そのため、約35億年前に誕生した光合成生物は、現在の光合成細菌と同様に、電子の獲得に硫化水素などを利用していたと考えられます。
      また、PSⅡ型光化学系のみをもつ紅色細菌、およびPSⅠ型光化学系のみを持つ緑色細菌は、PSⅠとPSⅡの両方を持つシアノバクテリアより早く誕生したとする分子系統解析結果もあります。そのため、紅色細菌と緑色細菌が融合してシアノバクテリアができたという仮説もあります。
      原始シアノバクテリアは、酸素が蓄積をはじめた約28億年前までには誕生していたと考えられます。その後、約20億年前に誕生した原始真核生物の細胞内に共生し、藻類や植物が持つ葉緑体が成立しました。
      藻類や陸上植物など、酸素発生型光合成を行うすべての生物の葉緑体は、シアノバクテリアを共通祖先として持つ単系統と考えられています。

      5. 二酸化炭素削減で期待される人工光合成

      近年では「人工光合成」の研究も進んでいます。この人工光合成についての概略を最後にご紹介します。

      (画像出典:NTT研究開発『地球に優しい未来を切り拓く「人工光合成」と「土に還る電池(ツチニカエルでんち®)」』)
      (画像出典:NTT研究開発『地球に優しい未来を切り拓く「人工光合成」と「土に還る電池(ツチニカエルでんち®)」』)

      人工光合成の電気化学的アプローチとは、植物の光合成と同様、水と二酸化炭素を原料に、太陽光エネルギーを利用して水素や酸素などの高エネルギー物質を作り出す技術のことです。
      地球環境の再生と持続可能な社会の実現は、近年大きな課題となっています。地球環境の負荷のひとつと考えられる二酸化炭素の排出削減が、世界中で取組まれています。
      しかし、排出削減だけでなく、すでに存在する二酸化炭素を減らすことも、人工光合成が実用化されれば可能となります。
      人工光合成実用化のための課題としてまずあげられるのは、水を分解して水素イオンと電子を生成する半導体デバイスや、二酸化炭素を固定する触媒の性能向上です。
      長時間安定して使用できる長寿命化や、さまざまな波長の光エネルギーを吸収できる広帯域化の取組みが必要です。
      また、大気中の二酸化炭素を直接回収する技術と組み合わせる際のコストの最適化や、電気化学反応の原料となる水素や一酸化炭素の使用に際する強固な安全設計など、システム全体の運用・安全面の課題も解決していかなくてはなりません。
      人工光合成の変換効率は、すでに植物の光合成の変換効率(約0.2%)を上回っています。当面の目標は、化石燃料のコストを下回ると見積もられる10%の変換効率達成となっています。

      6. まとめ

      • 光合成とは植物などが光のエネルギーを使い、デンプンなどの養分を作ること。
      • 植物や藻類が行う酸素発生型光合成と、光合成細菌が行う非酸素発生型光合成とがある。
      • 光合成の化学反応過程は、光化学系とカルビン回路の2つから構成される。
      • 近年では、光合成で使われる酵素の詳細な構造なども明らかになりつつある。
      • 酸素発生型光合成を地球上で最初にはじめたシアノバクテリアは、植物や藻類の葉緑体として現在でも受け継がれている。
      • 二酸化炭素削減で期待される人工光合成の研究も進んでいる。

      参考文献

      日本電信電話株式会社外からの寄稿や発言内容は、
      必ずしも同社の見解を表明しているわけではありません。

      このオウンドメディアは、NTT宇宙環境エネルギー研究所がサポートしています。
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