出力抑制とは?太陽光発電などに必要な理由や対象・ルールについて解説
2018年に九州ではじまった太陽光発電の出力抑制(出力制御)は、2022年からは北海道や東北、中国、四国エリアでも実施されるようになりました。本記事では、出力抑制とは何かをはじめ、必要となる理由や対象・ルール、実態などについて解説します。(公開日:2022/12/16 更新日:2024/03/25)

1. 出力抑制とは
太陽光発電や風力発電が普及するにつれて、出力抑制は避けられなくなってきました。まずは、出力抑制とはどういうものか、なぜ必要なのかという点から見ていきましょう。
1-1. 出力抑制の概念
出力抑制とは、一般送配電事業者(発電所で生み出した電力を消費者に届ける役目を担う事業者)の指示により発電事業者が太陽光発電所や風力発電所の出力を抑制することです。出力抑制に対する補償はないため、発電事業者は売電によって得られたはずの利益が手に入りません。要するに、出力抑制とはせっかく発電した再生可能エネルギー電力をただで捨ててしまうことなのです。
もちろん、一般送配電事業者はむやみに出力抑制を実施しません。どうしても必要なときだけ、しかるべき手順にのっとり出力抑制の指令を出します。そして、出力抑制が行われた場合は、電力広域的運営推進機関が一般送配電事業者の指令の妥当性について検証することになっています。
1-2. なぜ出力抑制は必要なのか
出力抑制は、太陽光発電や風力発電による発電量が、各エリアの電力需要に比べて多くなり過ぎるときに実施されます。冷暖房があまり稼働せず、電力需要が減る春や秋に、出力抑制が起こりやすいといえるでしょう。
出力抑制が必要になる理由を一言で表すと、電力の需要と供給、つまり消費と発電のバランスを確保するためです。需要と供給は常に一致していなければならず、このバランスが崩れると交流周波数が乱れ、停電に至る恐れがあります。
出力抑制は国によって明確に決められた段階があり、これは優先給電ルール(下図参照)と呼ばれています。
(画像出典:自然エネルギー財団 『自然エネルギーの出力抑制』日本の優先給電ルール)
「変動性再エネ」と呼ばれる太陽光発電や風力発電は、気象条件によって出力が変わる電源であるため、その変動幅を吸収するための調整力が必要です。その役目は燃料の投入量を変えて出力を細かく調節できる火力発電が担っていますが、火力発電による調整にも限界があります。昼間火力発電の出力を抑え過ぎてしまうと、需要が増加する夕方から夜に間に合うように出力を引き上げることができなくなります。エンジンが始動したばかりの自動車が、いきなり時速100kmの速度を出せないのと同じ理屈です。
火力発電所の出力を限界まで絞ってもまだ十分でないときは、揚水式水力発電所で揚水運転して需要を生み出します。それから、隣接するほかの電力供給エリアへ電力を送電して対応します。これでもまだ供給量の方が多くなりそうなときは、再エネの一種であるバイオマス発電所の出力を抑制します。これらを経てはじめて、太陽光発電と風力発電の出力抑制に移ります。
昼夜を問わず安定的に電力を供給できるベースロード電源である原子力発電所や水力発電所、地熱発電所の出力抑制は、太陽光発電所と風力発電所の後に実施されます。これらはいったん停止すると復旧まで時間を要するため、優先給電ルール上最後に抑制することになっています。
1-3. 出力抑制の方法
太陽光発電所を保有する事業者に対しては、原則として出力抑制機能付パワーコンディショナの設置が義務付けられています。出力抑制機能付パワーコンディショナとは、一般送配電事業者から出力抑制の指令を受け、現地へ行かずとも遠隔で出力抑制が実施できるよう操作できるシステムです。パワーコンディショナがなければ出力抑制のたびに太陽光発電所へ赴き、現地操作をしなければなりません。
出力抑制機能付パワーコンディショナは、たとえば、太陽光発電所の出力を午前10時から11時30分までには30%にし、11時30分から13時30分までは0%に、13時30分から16時までは50%にするなど、柔軟な抑制を可能にします。
(画像出典:本稿内容をもとに独自作成)
出力抑制の流れは次のとおりです。
【3日前~】
一般送配電事業者が気象予測をもとに太陽光発電や風力発電の発電量を算出し、出力抑制を実施する可能性について公表します。
【前日~当日】
一般送配電事業者は前日から当日にかけ、より細かく想定発電量を計算した上で、エリア需要の予測と照らし合わせながら需給計画を策定します。
現地操作が必要な「オフライン発電所」の発電事業者には、実施前日に一般送配電事業者から翌日の指令が出ます。一方、出力抑制機能付パワーコンディショナがある「オンライン発電所」には、当日の需給バランスや気象予測を踏まえてより効率的な指令を通達します。出力抑制が実施されると、発電事業者はせっかくの売電収入を手に入れることができなくなるため、発電事業者間で出力抑制は公平に実施されることが重要ですが、資源エネルギー庁が策定した「出力制御の公平性の確保に係る指針」には、「オンライン制御事業者の制御機会がオフライン制御事業者より少ない場合であっても、公平性に反することにはならないものとする」と記されています。
2. 出力抑制の対象
出力抑制は、発電した電力を売電できるすべての太陽光発電設備にかかわる話です。といっても、出力10kW未満の太陽光発電設備は、当面の間出力抑制はされません。これに対し、10kW以上の設備に関しては出力抑制のルールがあります。2021年以前はルールが複雑でしたが、現在はすべて無制限・無補償ルールが適用されるようになっています。詳しく解説します。
2021年4月以降新たに一般送配電事業者と電力受給契約の申込みをして太陽光発電所を建設しようとする発電事業者は、無制限・無補償の出力抑制に応じなければなりません。FIT(再エネの固定価格買取制度)やFIP(売電単価にプレミアムを上乗せする制度)の認定を受ける際、あるいはこれらの認定を受けずに太陽光発電所の建設をする際も同様です。FIPでは、出力抑制発生時はプレミアムが付かず、それ以降の時間帯にプラスされることになります。
(画像出典:資源エネルギー庁 『出力制御について』太陽光発電設備の出力制御実施対象拡大の範囲をもとに独自作成)
2-1. 3つのルール
2021年3月以前に電力受給契約を申込み済みの太陽光発電所のなかで、FITの事業計画認定を受けているものは、出力規模や設置場所、電力受給契約の申込み日または締結日によって旧ルール、新ルール、無制限・無補償ルール(指定ルール)のいずれかが適用されます。FIT以外の太陽光発電所はいずれも無制限・無補償ルールの対象です。
旧ルール
(画像出典:本稿内容をもとに独自作成)
旧ルールは、500kW以上の太陽光発電所を年間30日に限り出力抑制をするというルールでした。旧ルールの500kW未満の太陽光発電所は当面の間出力抑制の対象外とされてきましたが、2022年4月以降はこれらも出力抑制の対象に含まれます。
ただし、実際に太陽光発電所を停止するのではなく、後述するオンライン代理抑制という方法が用いられることになりました。こちらの上限も年間30日です。
新ルール
旧ルールでは、たとえ1日に1時間しか出力抑制を実施しなかったとしても1回とカウントすることになるため、効率的な運用ができるとは限りません。そこで考えられたのが、時間単位で出力抑制を実施するという方法です。
資源エネルギー庁は2014年、旧一般電気事業者(電力小売全面自由化以前にあった分類で、東京電力、中部電力、関西電力などの10事業者のこと)に対し、年間の出力抑制日数が30日以内となるときの再エネの接続量の最大値(kW)を求めさせました。これを接続可能量と呼び、接続可能量に達するまでに各社と電力受給契約を結んだ太陽光発電所については、出力抑制の上限を年間360時間にすると定めたのです。年間360時間を上限に出力抑制を実施するこのルールを新ルールといいます。
無制限・無補償ルール
接続可能量を超えてから契約する分の太陽光発電所は、出力抑制の上限が撤廃されます。これが無制限・無補償ルールです。無制限・無補償ルールの開始に伴い、一般送配電事業者が指定電気事業者に指定されたことから、無制限・無補償ルールは、もともと指定ルールと呼ばれていました。現在、指定電気事業者制度は廃止されています。
2-2. 実際どの程度出力抑制は起きているのか
離島を除き、日本ではじめて出力抑制が実施されたエリアは九州です。2018年10月以降、九州エリアでは頻繁に出力抑制が発生しています。九州電力送配電によれば、九州エリアにおける出力抑制量と出力抑制率※は、次のとおりです。
※出力抑制率=出力抑制量÷(太陽光発電の発電実績+出力抑制量)
出力抑制率とは、本来発電できていたはずの総発電量のうち、どの程度が出力抑制によって失われたかを示す数値。
(画像出典:本稿内容をもとに独自作成)
2018年度は9,476万kWh、約1.0%、2019年度は4億4,322万kWh、約4.1%、2020年度は3億8,553万kWh、約3.0%、2021年度は5億1,248万kWh、約4.0%。2022年度は4億3,889万kWh、約3.1%でした。2023年度に入ると一気に出力抑制量が増え、10月末までの段階で9億7,803万kWh、10.1%になっています。
北海道、東北、四国、沖縄エリアでは2022年度から、北陸、中部、関西エリアでも2023年度から出力抑制が実施されています。2023年10月末時点で、出力抑制が実施されていないのは東京エリアのみです。
各一般送配電事業者の公表データをもとに2022年度および2023年4~10月の出力抑制量と出力抑制率を求めると、2022年度は北海道から順に173万kWh、約0.06%、東北は5,935万kWh、約0.59%、中国は3,927万kWh、約0.47%、四国は1,731万kWh、約0.41%、沖縄は31万kWh、約0.07%でした。
2023年4~10月の値を見てみると、北海道は81万kWh、約0.04%、東北は8,597万kWh、約1.11%、北陸は958万kWh、約0.77%、中部は3,445万kWh、約0.34%、関西は、591万kWh、0.10%、中国は2億7,477万kWh、約4.82%、四国は7,190 万kWh、約2.47%、沖縄は23万kWh、約0.07%です。
| 2022年度 | 2023年度(10月まで) | |||
|---|---|---|---|---|
| 抑制量 | 抑制率 | 抑制量 | 抑制率 | |
| 北海道 | 173万kWh | 0.06% | 81万kWh | 0.04% |
| 東北 | 5,935万kWh | 0.59% | 8,597万kWh | 1.11% |
| 北陸 | 抑制なし | 958万kWh | 0.77% | |
| 中部 | 3,445万kWh | 0.34% | ||
| 東京 | 抑制なし | |||
| 関西 | 591万kWh | 0.10% | ||
| 中国 | 3,927万kWh | 0.47% | 2億7,477万kWh | 4.82% |
| 四国 | 1,731万kWh | 0.41% | 7,190万kWh | 2.47% |
| 九州 | 4億3,889万kWh | 約3.1% | 9億7,803万kWh | 10.1% |
| 沖縄 | 31万kWh | 0.07% | 23万kWh | 0.07% |
(出典:本稿内容をもとに独自作成)
※東京エリアは2023年10月時点で出力抑制は実施されていない
3. 出力抑制量の低減に向けて
日本は2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素社会)をめざすと表明しているため、再エネの有効活用を進めていかなければなりません。それゆえ、出力抑制量の低減は大きな課題です。
3-1. オンライン代理抑制の導入
2022年4月以降、旧ルールの出力500kW未満の太陽光発電所も出力抑制の対象になりました。資源エネルギー庁は、「現在出力制御実施対象となっている既存事業者や新規連系が見込まれる事業者の出力制御日数が低減するとともに、新規投資の予見性が向上するため、さらなる再エネ投資にプラスの効果が見込まれる」ことと、「事業者間の公平性を適切に確保する観点」から、出力抑制の対象を拡大したと述べています。
ただし、これらはもともと出力抑制の対象外と考えられてきたため、新たに出力抑制機能付パワーコンディショナの設置を求めると、発電事業者の負担が大きくなり過ぎる懸念がありました。そこで考案された仕組みが「オンライン代理抑制」です。
オンライン代理抑制は「経済的出力抑制」とも呼ばれ、オンラインでの出力抑制が不可の旧ルール500kW未満の太陽光発電所の代わりに無制限・無補償ルールのオンライン発電所の出力を抑制し、後から経済的な精算をすることによって旧ルールの発電所で出力抑制を実施したと見なす制度です。
資源エネルギー庁は、たとえば、九州エリアでオンライン代理抑制を導入した場合、約17%も出力抑制を低減させる効果があると試算しています。前日指令の段階では必要と考えられていたものの、当日になって出力抑制が不要になることもありますが、オフライン抑制では急な対応ができないため、このような場合もそのまま出力抑制を実施することになります。一方、オンライン抑制は、実需給に合わせた効率的な調整が可能であることから、オンライン抑制が増えるほど出力抑制量を減らせるのです。なお、一部の新ルールの太陽光発電所もオンライン代理抑制の対象です。
3-2. 出力抑制を低減するための取り組み
オンライン代理抑制は国の施策ですが、これ以外にも出力抑制量を減らすための取り組みはさまざまあります。
蓄電池
よく知られている手段といえば、蓄電池の活用ではないでしょうか。出力抑制によって捨ててしまうことになる再エネ電力をためて、夜間に放電します。最近では大型の蓄電池を導入する動きも出てきました。
たとえば、NTTアノードエナジー株式会社、九州電力株式会社、三菱商事株式会社の3社は2022年6月、系統用蓄電池を活用して出力抑制量を低減させる事業の検討を開始しました。2023年2月をめどに、福岡県田川郡に蓄電容量4,200kWh、出力1,400kWの蓄電池を導入する計画です。出力抑制が発生した際に抑制分の電力を蓄電池にため、その後日本卸電力取引所の各市場で取引を行う方針です。
デマンドレスポンス
また、「デマンドレスポンス(以下、DR)」にも期待が集まっています。DRとは、直訳すれば需要応答です。従来、需給バランスを確保するためには、需要に合わせて供給量をコントロールするという考えが一般的でしたが、DRは供給側に合わせた需要側の調整をするものです。
出力抑制が実施されそうなときは供給量が余っている状況です。そのためDRを通じて意図的に電力を消費させようとしたり、逆に供給量が不足しているときには節電させようとしたりします。前者を「上げDR」、後者を「下げDR」と呼びます。
より詳しく知りたい方は、『VPPとは? 電力システムの効率化や再生可能エネルギー普及拡大のメリットも』の「3-3. デマンドレスポンスとは」もご覧ください。
仮想エネルギー需給制御技術
さらに将来的な構想として、仮想エネルギー需給制御技術が注目されています。たとえば、膨大な電力を消費する情報処理を行っているエリアにおける太陽光発電所の発電量が少ない日に、遠く離れたエリアでは快晴のために出力抑制が実施されそうだとします。このとき、情報処理の場所を移行できれば、捨てるはずだった太陽光発電所の電力を有効利用することができるでしょう。こうしたICT機器の活用による需要の調整が、仮想エネルギー需給制御技術です。
もちろん、これらの実践は決して簡単なものではありません。各エリアの再エネ発電量を可能な限り正確に予測することはもちろん、情報処理に要する消費電力量を計算して、必要な分の情報処理を適切な場所に移す必要があります。しかも、それらをサービス品質の維持など種々の制約条件のもとで行うことが求められています。
NTTグループは、保有する建物に通信機器の非常用電源として設置している大容量の蓄電池を活用することでよりダイナミックな需要の調整をめざしています。まずは、NTT武蔵野研究開発センタにコンテナ型のテストベッドを構築し、検証を進めていきます。
3-3. 太陽光発電のさらなる導入のために
出力抑制は需給バランスの確保を目的に実施されていると述べましたが、これからは太陽光発電のさらなる普及を進めていくためにも、さらなる方法による出力抑制が行われるようになることが考えられます。その手法が、系統容量制約による出力抑制です。
送電線に流せる電力量には限界があり、空き容量がない送電線に接続を申込もうとする発電事業者は、高額な系統増強工事費用を自ら負担しなければなりませんでした。ただ、系統は先着優先の原則があるため、申込みだけ先にして一向に稼働させようとしない発電事業者が続出し、その結果、太陽光発電所の開発ペースが鈍ってしまうという空押さえ問題が全国で起きています。
系統には、常に最大まで電力が流れるわけではなく、空いている時間帯も多くあります。そこで、系統混雑時の出力抑制を受け入れる発電事業者に対しては、高額な系統増強工事費用を求めず接続を認めるべきだという意見が、有識者会議で出てきました。
これは、「ノンファーム型接続」と呼ばれています。すでにノンファーム型接続による受け入れは進んでいます。
太陽光発電の導入を推進しつつ、発電した電力を有効活用する仕組みを構築していくこと。この2つがともにうまくいってはじめて、カーボンニュートラルの達成が見えてくるはずです。
4. まとめ
- 出力抑制とは、一般送配電事業者の指示により、発電事業者が太陽光発電所や風力発電所の出力を抑制すること。
- 太陽光発電や風力発電による発電量が多くなり過ぎ、需給バランスの確保が難しいときに出力抑制は実施される。
- 太陽光発電所は、出力規模や設置場所、電力受給契約の申込み日または締結日によって、旧ルール、新ルール、無制限・無補償ルールのいずれかが適用される。
- 2022年4月以降に新たに契約を交わす分については、すべて無制限・無補償ルールの対象。
- 出力抑制は九州では2018年から、北海道や東北、中国、四国エリアでは2022年の春からはじまった。
- 出力抑制には、太陽光発電所に出力抑制機能付パワーコンディショナを導入し、現地へ行かずとも出力抑制ができる「オンライン抑制」と、出力抑制のたびに太陽光発電所へ赴き、現地操作をする「オフライン抑制」がある。
- 2022年4月以降は旧ルール500kW未満の太陽光発電所も出力抑制の対象になった。これらの太陽光発電所は実際に出力を抑制することはなく、オンライン代理抑制が行われる。
- 出力抑制量を減らす取り組みとして、大型蓄電池の導入やDR、仮想エネルギー需給制御技術に期待が集まっている。
- 太陽光発電のさらなる導入を推進していくために、今後は需給バランス制約による出力抑制だけではなく、系統接続問題を解消するために出力抑制が実施されるようになってくる。
参考文献
- NTT研究開発 『環境負荷ゼロの実現に向けた、エネルギー流通基盤技術』
- 資源エネルギー庁 『出力制御について』
- 資源エネルギー庁 『なぜ、太陽光などの「出力制御」が必要になるのか?~再エネを大量に導入するために』
- 自然エネルギー財団 『自然エネルギーの出力抑制』
- 電力広域的運営推進機関 『再生可能エネルギー発電設備の出力抑制に関する検証結果』





