2026/03/30
Y.Inoue, K.Arai, T.Tsujikawa
本記事では、3GPPでの仕様検討の流れについてざっくりとご紹介します。
前回の記事では、3GPPの標準化体制と進め方についてざっくりと紹介しました。
本記事では、「具体的にはどのように仕様が決まっていくのか?」がわかるように、3GPPにおける仕様検討の手続きを簡単に紹介します。
3GPPでの仕様検討プロセスは、非常にシンプルにまとめると次の3ステップです。
このプロセスをリリース期間中に繰り返すことで、仕様が徐々に完成していきます。一般的には親会であるプレナリ会合は承認行為のみを行い、実質的な議論はWG会合が中心になることから、重要なのは1と2のプロセスです。
上記のステップを図にすると以下のようなイメージです。(図中の①~③は上記の1~3ステップに対応しています。)

各企業からの提案寄書ベースで進む3GPPの標準化ですが、各企業が標準化したい内容を好き勝手に提案してしまうと、新しい仕様は一向にまとまりません。
では、どのように検討内容を決めていくのでしょうか。3GPPでは最初に検討アイテムを合意し、その後は合意した検討アイテムに沿って提案内容を盛り込んでいくという2段階の合意プロセスを踏みます。
3GPPでは、新しい仕様や機能拡張を検討する際、WG単位で新たに取り組む検討アイテムを文書で定義します。
それらは、Work ItemもしくはStudy Itemと呼ばれ、それぞれ以下のように使い分けられます。
WI/SIが先ほどの仕様検討の流れの3ステップが完了して正式承認されると、各WGではその検討を開始することが可能となります。
このWI/SIを成立させるのがかなり難しいプロセスで、企業が好き勝手に提案を持ってくることを防いでいます。逆に、自分たちが3GPPで何かを標準化したい場合にも、このプロセスを突破することが最初のハードルとなります。
WI/SIの成立には少なくとも4社以上の企業が検討をサポートして署名する必要があり、また、検討を進めることに対して反対している企業がいないことも重要です。
反対する企業がいる場合には、その企業の合意が得られるようにWI/SIのスコープを修正することになります。
技術的な理由での反対であれば、技術的に落とし所を探ることが可能であることが多いです。難しいのは、表向きは技術的な理由で反対していても、実は本当の理由が企業のビジネス戦略や国家の方針との整合性であるような場合です。
そのような場合は、サポートしてくれる他の有力企業と連携して反対する企業と調整をすることになります。しかし、相手企業との調整が進まないまま何会合も経過してしまい、Release期間内に十分な検討期間を確保できなくなって、残念ながらWI/SI成立を諦めざるを得ないこともしばしばあります(それが相手企業の狙いなのですが)。
WI/SIが合意されると、各企業はSID/WIDで定義された目的・スコープの範囲内で寄書をWG会合で提案していくことになります。
寄書にはいくつかの種類があり、代表的なものとして以下が挙げられます。
各企業がこれらの寄書を会合に提案し、議論・合意を重ねる(上述の仕様検討プロセスの1~3を繰り返す)ことで、仕様が形になっていきます。
会合の平場でのプロセスは上記となりますが、WG会合は5日間しかありません。会合の場で初めて大物の提案内容を説明しても、寄書を合意まで持ち込むのは難しいです。
全会一致を原則とする3GPP標準化を達成するうえでは、主要な関連企業との事前調整が非常に重要なプロセスとなります。
3GPPの仕様検討は複雑に見えますが、実際には「寄書提案 ⇒ 議論・合意・承認 ⇒ 仕様反映」の繰り返しです。
初めて会合に参加する方は、まず寄書の種類と役割を理解し、WID/SIDの位置づけを押さえると、議論の流れがつかみやすくなるかと思います。
また、3GPPのTS/TR等のドキュメントをディープに分析していくと、機能や動作が淡々と定義されていて背景や理由が読み解けないこともあると思います。
その場合には、上記のDiscussion PaperやChange Requestなどを追跡してたどり着く必要があります(各社の思惑で背景や理由が明記されない場合もあります)。
なお、この記事は3GPPが公開している資料 "Newcomers Quick Start"1 及び "3GPP working procedure"2 の内容を参考に記載しています。
より詳しく知りたい方は、3GPPが公開している情報も参照ください。
本記事は,NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト ノード処理基盤研究グループの RTC (Real-Time Commmunication) チームが執筆しています。 当チームでは,商用サービス開発とは独立した立場から,将来のRTCサービスを支える基盤技術の創出を目的としたコア研究として,RTC関連技術の研究開発および3GPPやCAMARA等における標準化活動に取り組んでいます。
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