3GPP標準化のざっくり紹介

2026/03/04

Y.Inoue

3GPP

本記事では、3GPPでの標準化の体制と進め方についてざっくりとご紹介します。


はじめに

こんにちは。井上です。

本記事では、当チームが参加している3GPPでの標準化の体制と進め方について、全体像が掴めるように非常にざっくりとではありますがご紹介したいと思います。

3GPPとは

3GPP(3rd Generation Partnership Project)は移動体通信事業者(オペレータやキャリアと呼ばれる)や通信機器メーカー(ベンダと呼ばれる)を主体に活動している国際標準化団体です。

第3世代以降の移動体通信(3G~6G、IMSなど)に関する標準化を行っており、特に国際間での仕様の整合性が重要な移動体通信ネットワークは3GPPで規定される技術仕様に基づいて実装されています。

3GPPが規定する代表的な仕様としては、例えば以下のようなものがあります。

  • 無線アクセス仕様
  • コアネットワーク仕様
  • IMS(IP Multimedia Subsystem)仕様

3GPPの体制

3GPPは、全体の作業管理を担当するPCG(Project Co-ordination Group)と、技術仕様の策定を行うTSG(Technical Specification Group)とで構成されています。

PCGはいわゆるSteering Committeeに相当し、組織、計画、運営の観点から3GPP全体を統括するグループです。

一方で、TSGは具体的な技術検討や仕様策定を担当するグループで、その検討範囲から以下の3つのグループが設定されています。

  • RAN(Radio Access Network): 無線アクセスネットワーク仕様を検討
  • SA(Service and System Aspect): サービスとシステムの仕様を検討
  • CT(Core Network and Terminals): コアネットワークと端末の仕様を検討

RAN/SA/CTでは、さらに検討分野が細分化されており、技術仕様の詳細検討は、各分野を担当するWG(Working Group)が担います。

各WGのグループ名は所属するRAN/SA/CTにWGナンバーをつける呼び方が一般的です。例えばSA WG1や、SA1(エスエーワン)のように呼ばれます。(さらに省略してS1と表現されることもあります。)

3GPPの組織構成図
3GPPの組織構成図

ここまで、3GPPの組織構成について記載しましたが、少しだけ会合のことについても触れておきます。

3GPPの標準化会合はTSG単位で開催されるRAN/SA/CTプレナリ会合と、WG単位で開催されるWG会合があります(上の図のTSG RAN/TSG SA/TSG CTが各プレナリ会合に該当します)。

各WGで合意された内容(技術仕様や、検討アイテムなど)が親会であるRAN/SA/CTプレナリ会合に提出され、そこで承認されると3GPP仕様として発行される流れとなります。

Release

3GPPでは「Release」と呼ばれる単位で、仕様書のバージョンを管理しています。

イメージとしては、ソフトウェアにおけるセマンティックバージョニングの最初の数字に相当するものと考えていただければと思います。

3GPP仕様に新たな技術仕様を導入する際、参加企業の要求を全て盛り込もうとすると検討項目が際限なく増えてしまい、いつまでたっても仕様を完成させ、発行することができなくなってしまいます。

Releaseでは、検討範囲をボリュームと期間で区切ることで、一定のサイクル毎で仕様を発行することを可能にしています。

これは、装置ベンダや通信事業者が特定の時点における安定したプラットフォームを実装/利用可能とするために、非常に重要な役割を果たしています。

Stage

Stageは、言わば要求検討から実装仕様までのパイプラインであり、以下のようにStage 1からStage 3へと進むにつれて検討対象はより具体的かつ技術的になります。

  • Stage 1:サービス要求やユースケースの整理(何をしたいのか、共通目的を決める)
  • Stage 2:アーキテクチャや機能要件の定義(どう実現するのかを決める)
  • Stage 3:端末やインタフェースにおけるプロトコルの動作仕様の詳細設計(詳細な仕様を決める)

この構造が、上位の要求やアーキテクチャとの整合を取りながら、詳細仕様を策定することを可能にしています。

ReleaseとStageの関係を簡単に図示すると以下のようなイメージになります。

ReleaseとStage
ReleaseとStage

実際の進め方としては以下のような流れになります。

  • Releaseの開始前にWorkshop等を通じて、3GPP参加企業がそのReleaseで何をしたいか意見を収集
  • 最初にStage 1において当該リリースで実現するサービス要件をまとめ、プレナリ会合で承認(package approvalとも呼ばれます)
  • 次に、Stage 1仕様(サービス要件)に基づき、Stage 2仕様(機能要件)を検討し、プレナリで承認
  • 最後に、Stage 2仕様(機能要件)に基づき、Stage 3仕様として詳細なプロトコル仕様を検討し、プレナリで承認(実際の検討ではStage 1の要件を参照することもあります)

3GPPでは、仕様の合意について「全会一致(全社合意)」が原則です。

多種多様な要望がある中で、Releaseにより検討期間に制限を設け、Stageによりハイレベルなレイヤから合意を積み重ねていくこの方式は、非常に合理的でよくできた仕組みだと考えています。

(個人的には、このReleaseとStageの仕組みなくして3GPPでの議論、仕様作成は成り立たないと言えるほどよくできた仕組みだと思います。)

なお、現在(2026年3月)は、Release-21 Stage 1仕様検討とRelease-20 Stage 2仕様検討が行われています。先行するリリースの後段のStageと,次のReleaseの初期Stageを並行して進めるパイプライン方式を採用することによって,検討を効率化しスループットを高めています。

当チームが参加しているSA4では、まさにRelease-20 Stage 2仕様検討の真っ最中です。

3GPPの成果物(仕様書)

3GPPでは上述のプロセスを経て承認された技術仕様や技術レポートをTechnical Specification(TS)およびTechnical Report(TR)として公開しています。

  • TS: 3GPPシステムの実装・運用のために必要な技術仕様を規定する文書
  • TR: 技術的検討結果、調査、評価、背景説明などをまとめた報告書(e.g., TSを作成するWorkの前段として実施するStudyの結果など)

3GPPの標準仕様は他の多くの標準化団体と同様にドキュメントの内容や目的に応じた番号体系で管理されています。

目的の技術仕様を効率よく探し出し、複数のドキュメントにわたる仕様を理解するためには、このドキュメントの番号体系を知っておくことが重要です。

3GPP文書の番号体系
3GPP文書の番号体系

当チームが検討に参画しているRTC関連の仕様は、26.xxxシリーズにまとめられています。

まとめ

本記事では、3GPPについて標準化の体制と進め方を中心にざっくりとご紹介いたしました。

上述の通り、具体的な技術仕様の検討はTSG配下の各WGによって実施されますが、WG毎に検討範囲や文化(検討の進め方)が異なっているのが実情です。

このシリーズでは、3GPPの理解や3GPPでの標準化に役立つ情報をまとめていきたいと思いますので、興味のある方は他の記事もご覧いただけますと幸いです。

チーム紹介

本記事は,NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト ノード処理基盤研究グループの RTC (Real-Time Commmunication) チームが執筆しています。 当チームでは,商用サービス開発とは独立した立場から,将来のRTCサービスを支える基盤技術の創出を目的としたコア研究として,RTC関連技術の研究開発および3GPPやCAMARA等における標準化活動に取り組んでいます。

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