これまでに開発された、小~大規模集合住宅向け構内光配線技術の適用領域を図に示します。既存設備における光化をスムーズに行うには、配管やキャビネット(MDFなどの配線接続場所)の増設ではなく、空きスペースへ光設備を収納する技術が必要になります。この技術として、光設備の経済化、作業性の向上に加えて、細径、小型化、狭い場所へのケーブル布設や、配管のない場所へのケーブル布設などへの対応技術が含まれます。
(1)既存設備の空スペース利用のDキャビネット、細径低摩擦インドア光ケーブル
光アクセス網での光分岐箇所としては、所内と所外(地下配線用クロージャ、架空配線用クロージャ)があります。集合住宅などのビル構内において分岐することで光アクセス網の効率的な設置、運用、管理ができます。このようなビル構内光配線向けに、既存設備の空スペースを利用したDキャビネットを2008年に開発しました。
また、集合住宅において光化を進めるには、既存電話(メタルケーブル)サービスから光ファイバを使用した光加入者系サービスへスムーズに移行できる必要があります。このため、集合住宅の構内配線系においてメタルケーブルと光ファイバケーブルの併存、入替えが容易にできる細径低摩擦インドア光ケーブルを2009年に開発しました。
(2)小型スプリッタモジュール、外壁面布設が可能な集合インドア光ケーブル
集合住宅への光配線方式を拡大するには、ビル構内設備へのスプリッタモジュール(光分岐)の設置の問題や、配管内不通過、配管がない集合住宅へのケーブル布設が課題でした。これらに対して、小型のスプリッタモジュールと、外壁面への布設が可能な集合インドア光ケーブルを2011年に開発しました。
(3)後分岐可能な8心単心低摩擦インドア光ケーブル、Eモジュール類
小~中規模集合住宅の縦系配管内へは細径インドアケーブルをお客様の需要ごとに布設していますが、お客様配管設備の狭隘化により配線が困難な場合があります。そこで、お客様の需要に応じて柔軟な対応を可能とする、当該フロアで後分岐可能な8心単心低摩擦インドア光ケーブルと、後分岐した素線光ファイバと接続点を省スペースで保護するEモジュール類を2012年に開発しました。
(4)既存設備の有効利用
1)放送波共同受信
集合住宅ビル内で光分岐して各住戸まで光配線するシステム(高速IP通信サービス)に、マンションでの放送波共同受信信号(従来同軸ケーブルで配信)を波長多重で重畳して置き換えるマンションITキットを2002年に開発しました。システムは、戸塚導入システムに近い構成になっています。
2)電話用既存メタル配線
集合住宅向けのBブレッツサービス提供のために、集合住宅内の電話用既存メタル配線を用いたVDSL伝送(電話線と共用)により各住戸まで高速メタル伝送を行う構内系VDSL装置を同じく2002年に開発しました。
集合住宅ビル内で設備スペースの関係から全光化への手前のシステムとして、既存メタル線とIDF(Intermediate Distribution Frame:中間配線盤)ボックス内にSW-HUB(スイッチングハブ)を設けた省配線イーサネットシステムを開発(2004年)しました。