包摂的サステナビリティの実現に向けた新しい成長指標の活用
私たちは、地球の環境が備える自律性とその一部としての経済・社会システムの自律性が包摂的に調和することで可能となる持続性を「包摂的サステナビリティ」と定義しています。包摂的サステナビリティの実現に向けて、環境と経済、社会の間の複雑な相互作用を理解したうえで政策の影響評価をしていくことをめざしています[1]。
環境と社会の包摂的な連鎖メカニズムを認知するには、様々な事象の連鎖の構造をシステム思考で全体的に捉える必要があります。また、計算可能とした循環システムについて、安定性(平衡/非平衡)、創発特性といったシステムの状態や特性を明らかにすることも重要です。
GDPのような従来の社会成長指標では、環境と社会の持続可能性を評価することができないことが問題視されています。そこで私たちは、持続可能性指標として近年注目されている Inclusive Wealth(以下 IW)の3資本(人工資本・人的資本・自然資本)に着目し、環境・社会循環システムの持続可能性を評価可能なモデルの開発に取り組んでいます。実際の社会課題ユースケースを対象に、System Dynamics技術を用いて計算処理基盤上にモデルを実現し、ローカルな政策がグローバルな環境社会の状態遷移に与える影響(創発メカニズム)を再現することで、新しい成長指標(新国富指標:IWI)の有効性を議論していきます。
[1] 地球・社会・個人間の調和的な関係が築かれる未来社会の実現に向けて~デジタルツインコンピューティングの4つの挑戦~, NTTニュースリリース 2020/11/13
NTT宇宙環境エネルギー研究所では、社会課題の解決に向け、エネルギー、環境分野をはじめとして、情報科学、人文系、社会科学系を含め多様な人材を募集しています。