更新日:2026/09/25

「ウェルビーイングに働く価値観」から読み解くエンゲージメントNTT社会情報研究所

「ウェルビーイングに働く価値観」から読み解くエンゲージメント

   

NTTグループでは、従業員と会社との結び付きや仕事へのやりがいなどを把握するため、毎年エンゲージメント調査を実施しています。社会情報研究所では、これまで培ってきたウェルビーイング研究の知見を取り入れ、従来の「エンゲージメントの状態を把握する調査」に、「従業員が働く上で大切にしていることと、その満足度」という視点を加える取り組みを、NTTグループ全体の人材戦略を担う部門と進めています。その結果、エンゲージメントと「ウェルビーイングに働く価値観」の満足度には正の相関があることがわかりました。これは、エンゲージメント調査を、組織の状態を把握する手段から発展させ、従業員が働く上で大切にしていることとエンゲージメントとの 関係を組織の傾向として理解し、よりよい職場づくりにつなげる手段へと発展させられる可能性を示しています。

目次

課題:エンゲージメントをより深く理解するために

NTTグループでは、事業領域の拡大やグローバル化に伴い、従業員の国籍や働く地域、価値観などが多様化しています。こうした中、一人ひとりが能力を発揮し、いきいきと働ける職場環境をつくることは、ますます重要になっています。2023年5月に発表した中期経営戦略(1)でも、「従業員体験(EX)の高度化」を重要な柱の一つに掲げ、その取り組み状況を把握するため、国内約18万人を対象としたエンゲージメント調査を実施しています。
NTTグループのエンゲージメント調査では、「働きやすさ」に加えて「働きがい」も捉えながら、従業員と会社との関係や仕事への意欲などを継続的に把握してきました。一方、従業員の多様化が進む中で、エンゲージメントをより深く理解するためには、職場環境や制度などの外的な要因だけでなく、従業員が働く上で大切にしていることとエンゲージメントとの関係にも目を向けることが重要です。

視点:「ウェルビーイングに働く価値観」という新たな切り口

そこでNTTグループのエンゲージメント調査では、従来の職場環境などに関する設問に加えて、「従業員が働く上で大切にしていること」と、「それが仕事の中でどの程度実現できているのか」という満足度に関する視点を取り入れました。これらとエンゲージメントとの関係を組織や職場の傾向として分析することで、エンゲージメントの背景をより深く理解することをめざしたものです(図1)。

図1

図1.「ウェルビーイングに働く価値観」を用いたエンゲージメント調査

「ウェルビーイングに働く価値観」に着⽬することで、「社員が何を大切にして働いているのか」という、これまで見えにくかった観点からエンゲージメントを分析することができる。



この新たな視点を調査に取り入れるために活用したのが、社会情報研究所がこれまで進めてきたウェルビーイング研究の成果です。研究所では、ウェルビーイングについて自己理解や他者理解を深めるためのツールとして、32種類の「わたしたちのウェルビーイングカード(2)」を開発しています。それぞれのカードには、ウェルビーイングを実現する上で大切な要因が示されており、「I(自分自身のこと)」「WE(身近な人との関わり)」「SOCIETY(社会との関わり)」「UNIVERSE(より大きな存在との関わり)」の4つのカテゴリー(図2)から構成されています。

図2

図2.ウェルビーイング要因の4つのカテゴリー

「わたしたちのウェルビーイングカード」に記載されるウェルビーイングの要因は、「I / WE / SOCIETY / UNIVERSE」の4つのカテゴリーに分類されている。



この研究成果をもとに、職場でのウェルビーイングに関係する要因を選び、働く場に合わせて表現を整理したものが、「ウェルビーイングに働く価値観リスト」(図3)です。「心安らかに働く」「達成感を持てる」「感謝する・される」「信頼する・される」「社会に貢献する」「みんなで協働する」など、働く上でのウェルビーイングに関わる24の価値観で構成されています。
調査では、回答者がこのリストの中から、自分が働く上で大事にしている、もしくは大事にしたい価値観を一つ選び、その価値観が働く中でどの程度満たされているかを5段階で回答します。これにより、「働く上で何を大切にしているのか」と「それがどの程度満たされているのか」という二つの側面から、働くウェルビーイングとエンゲージメントとの関係を分析できるようになりました。
なお、価値観に関する回答は、個人の評価や人事判断を目的とするものではなく、組織や職場の傾向を理解し、よりよい職場づくりにつなげる手がかりとして活用するものです。

図3

図3. 働く価値観に関する設問と回答の選択肢

「ウェルビーイングに働く価値観リスト」の設問。選択肢は24の価値観とその他(自由記述)によって構成される。回答者は、自分が働く上で大事にしている、もしくは、大事にしたいことを1つ選び、その満足度を5段階で答える。

発見:働く価値観の満足度とエンゲージメントの相関

NTTでは、エンゲージメントを「自発的貢献意欲」「職場推奨意向」「当社で働くことの誇り」「仕事から得る達成感」の4つの側面から捉えています。それぞれを5段階(1~5点)で評価し、その4項目の平均値をエンゲージメントの指標としています。このエンゲージメントの値と「ウェルビーイングに働く価値観」の満足度との関係を分析したところ、両者には明確な正の相関が確認されました(図4)。つまり、エンゲージメントが高い従業員ほど、自分が働く上で大切にしている価値観が仕事の中で満たされていると感じる傾向がありました。一方、エンゲージメントが低い従業員ほど、価値観の満足度も低い傾向が見られました。
この結果は、単にエンゲージメントと「ウェルビーイングに働く価値観」の満足度が関連していることを示すだけではありません。従業員が働く上で大切にしていることと、その満足度との関係から分析することで、エンゲージメントの高低だけでは見えにくかった、組織や職場の特徴を理解できる可能性が見えてきました。 両者の因果関係までは明らかになっていませんが、エンゲージメントの背景を、従業員が働く上で大切にしていることとの関係から考えることは、エンゲージメントをより深く理解し、よりよい職場づくりを検討する上で重要な手がかりになると考えられます。

図3

図4. エンゲージメントと働く価値観の満足度の関係

価値観の満足度(1~5点)と、エンゲージメントの値の関係。エンゲージメントが高い人ほど価値観の満足度も高いという正の相関(相関係数0.64)が確認された。

展開:調査から職場づくりへ

これまでのエンゲージメント向上施策では、働き方の制度やマネジメントなど、主に職場環境の改善が中心となってきました。そこに、従業員一人ひとりの「ウェルビーイングに働く価値観」という視点を加えることで、エンゲージメントの状態を把握するだけでなく、その背景を理解し、より具体的な職場づくりにつなげていくことが可能になると考えています。
今後、社会情報研究所では、「ウェルビーイングに働く価値観リスト」を活用して、部署ごとに従業員が大切にしている価値観やその満たされ方を捉え、それぞれの職場の特徴に応じた施策の設計へと展開していきます。さらに、施策によって価値観の満足度やエンゲージメントがどのように変化するのかをNTTグループ各社で検証し、その知見を次の職場づくりへと生かしていきます。
このように、「状態を把握する」から「背景を理解する」、そして「職場づくりにつなげる」へ。エンゲージメント調査を、従業員の状態を把握するためだけのものではなく、働く上で大切にしていることとの関係からエンゲージメントの背景を理解し、よりよい職場づくりにつなげるための手がかりとして活用することで、人的資本経営の高度化に貢献していきます。

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