技術入門
複数サービスを一括で構築・保全可能とするワンストップオペレーション技術
NIC ネットワークオペレーションプロジェクト
酒井 優(さかい まさる)
#移動固定融合#オペレーション#保守運用
2026/2/16
はじめに
我々 NIC は、固定網・移動網を組み合わせて、エンド・ツー・エンドでクラウドやインターネットへ接続可能な移動固定融合ネットワークを実現する「ネットワーク系プラガブル付加価値基盤技術」の研究開発に取り組んでいます[1] 。移動固定融合ネットワークは、スマートシティ、自動運転、eスポーツなど、多種多様なサービスの要件を満たすネットワークをオンデマンドに提供することを目指しています。
移動固定融合ネットワークによりエンド・ツー・エンドの通信サービスを提供するためには、ネットワーク・クラウド・アプリケーションなど、複数のサービスを連携させたサービス構築作業が必要です。それだけでなく、複数サービスが連携することで成り立っている通信サービスの監視・保守を行い、障害が発生した際には迅速に復旧し、ユーザに安定したサービスを提供するための保全作業が重要になります。このような、ネットワークをサービスとして安定して提供していくための業務をオペレーションと呼びます[2] 。
今回は、「ネットワーク系プラガブル付加価値基盤技術」の一部として実際にシステム化され、移動固定融合ネットワークのオペレーションを支えている「ワンストップオペレーション技術」について紹介します。
ワンストップオペレーション技術の2つの構成要素
ワンストップオペレーション技術は、サービス構築を担う「API オーケストレーション技術」と、構築したサービスの保全を担う「自律マイクロオペレーション技術」で構成されます。
APIオーケストレーション技術
移動固定融合ネットワークにおいてサービスを構築するためには、社内外のさまざまなシステムに対する申し込み・設定作業が必要です。各システムは外部向け API(Application Programming Interface)を提供しているので、サービス構築の手順が確立していれば、API を順に実行するアプリケーションを作ることでサービス構築を自動化できます。
しかし、新たなシステムの追加による API の増加や、既存 API の仕様変更は頻繁に発生します。そのたびにサービス構築アプリケーション全体を作り直すのは、非常に煩雑で時間がかかります。
API オーケストレーション技術はこの課題に柔軟に対応できます。APIオーケストレーション技術では、マイクロサービスの考え方に基づき、利用する社内外システム単位で機能部を分解し、独立してデプロイ可能としています。サービス構築手順や設定内容はカタログという形式でビジネスロジックと各システムのAPI仕様を分けて管理しており、細分化された機能部(アダプタ)はカタログを参照しながら、アダプタ同士が 自律的にAPIを通して相互連携しサービス構築手順を遂行することができます。
これにより、ビジネスロジックが記述されたカタログを新規作成するだけで新しいサービスをすぐに実現でき、新規 API の追加や仕様変更があった場合にも影響範囲を対応するアダプタやカタログだけに留めることができます。このように、APIオーケストレーション技術によって新規機能の提供や既存機能の維持に必要な作業量を大幅に削減し、ユーザのニーズに迅速に答えたりサービスの品質を高く保ったりすることができるのです。
自律マイクロオペレーション技術
サービスは構築して終わりではなく、ユーザへ継続的にサービスを提供するために保全が必要です。移動固定融合ネットワークにおけるサービスは、さまざまな社内外サービスによって成り立っているため、不具合時の切り分けや復旧手順の条件分岐が煩雑で、保守者の大きな負担になります。
自律マイクロオペレーション技術は、移動固定融合ネットワークで発生するアラートを一括監視し、不具合発生から復旧完了までの作業を、監視・分析・判断・制御等のClosed Loop[3] に従って自動化します。 Closed Loopは、システムが状況を監視し、そのデータを解析し、不具合が発生しているかどうか判断し、さらに不具合に対する対処を行い、また監視に戻る、という一連のプロセスを自動で循環させる考え方のことです。Closed Loopの実現により人手での保全作業を大幅に減らすことができ、また循環によるナレッジ蓄積により保全作業を改善することができます。
自律マイクロオペレーション技術もマイクロサービスに基づき、アラート監視、ログ収集、対処方法決定、対処実行といった保全業務を機能単位で分離し、個別にデプロイ可能です。各機能部(ワーカ)はメッセージングプロトコルを使って情報交換し、メッセージバス経由で全ワーカに共有される情報を参照して動作します。各ワーカはそれぞれ独立した判断ロジックを持っており、メッセージを読み取って自身が実施すべきアクションを決定します。各ワーカはアクションを実行した結果をメッセージとして配信し、そのメッセージを受け取ってまた別のワーカが自身の判断でアクションを実行...、とメッセージによってワーカが連鎖的に動作することでClosed Loopを実現しているのです。
自律マイクロオペレーション技術のClosed Loopの中で処理できなかった不具合は、内容を分析し各ワーカのロジックを改善することで性能を強化していくことができます。改善とは、ログ収集範囲の変更や、対処方法決定ロジックのパターンの補強などが考えられますが、そのような改修は各機能部に閉じた最小限の変更で対応できます。分析のためのワーカとして新しいワーカを組み込むことも容易で、例えばオンデマンド品質可視化・制御技術[4] は自律マイクロオペレーション技術のワーカとして実現されています。これによりサービスの品質の予測・制御までもClosed Loopの一環として可能になります。
おわりに
この記事では、「ネットワーク系プラガブル付加価値基盤技術」を支える基本技術の一つである「ワンストップオペレーション技術」について紹介しました。NIC では、APIオーケストレーション技術の開発効率を向上させるため、アダプタについて開発フレームワークを用意して新規開発を迅速化する技術に取り組んできています。また、自律マイクロオペレーション技術の拡張性を活かし、アラート契機の保全自動化だけでなく、サービス流量の測定・制御、アラートの総合分析によるサービス影響の明確化など、さまざまな機能の研究開発にも取り組んでいます。今後、これらの技術についても紹介していきたいと考えています。
参考文献
[1] 移動固定融合時代のオンデマンドな機能提供を可能にするネットワーク仮想化技術 | NIC Tech Talks
[2] ネットワークキャリアのオペレーションとは ~第1回 オペレーションの概要~ | NIC Tech Talks
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