NICの研究開発

移動固定融合時代のオンデマンドな機能提供を可能にするネットワーク仮想化技術

NIC 光トランスポートシステムプロジェクト

西山 聡史(にしやま さとし)

#移動固定融合#ネットワーク仮想化

2024/8/2

はじめに

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)はさまざまな産業のICT基盤サービスで共通的に利用されることを目標としており、その1つの適用領域として固定網・移動網をシームレスに収容し、エンド・ツー・エンドでクラウドやインターネットなどに接続が可能な移動固定融合ネットワークをめざしています。
移動固定融合ネットワークでは、社会インフラとして今後ますます重要となるIoT(Internet of Things)端末や、ドローン等のロボット、eスポーツなどの高速低遅延が求められるサービスなど、場所を問わず多種多様な要件を満たしたネットワークサービスをオンデマンドに提供することが求められます。
今回は、それら要件を実現し迅速にネットワークサービスを提供するために、これまでのハードウェア中心のキャリアネットワークの機能をソフトウェア化し、柔軟にネットワークを組み上げることを可能とする、「ネットワーク系プラガブル付加価値基盤技術」について紹介します。

ネットワーク系プラガブル付加価値基盤技術

IoTサービスや自動運転、スマートファクトリ等によりキャリアネットワークに求められる品質や機能の要件の多様化が見込まれます。多様化するサービスに対して、サービスを提供する事業者へタイムリーにネットワークを提供するためには、従来のキャリアネットワークにはいくつかの課題があります。

  • 要件に応じて個別のネットワーク装置を採用していたため、要件の多様化に伴い装置種別が増加してネットワークの運用が複雑化すること。
  • ネットワーク機器設定の設計・設定投入を事業者の要望に応じて個別に対応していたため、リードタイムの短縮が困難であること。
  • 私たちは、これらの課題の解決に向けて、多様なネットワーク機能をオンデマンドに提供するネットワーク系プラガブル付加価値基盤技術(プラガブル基盤)を検討しています。ここから、プラガブル基盤が持つ4つの技術を紹介していきたいと思います。

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    付加価値サービスゲートウェイ技術

    1点目は、柔軟にネットワーク機能を組合せ可能とする付加価値サービスゲートウェイ技術です。本技術は、汎用サーバ上でオンデマンドに構築するサービス提供事業者別の仮想ゲートウェイとして提供されます。本仮想ゲートウェイが持つネットワーク機能を、コンテナで分割した機能要素の組合せにより構成することで、柔軟・迅速な機能追加を可能としています。例えば、セキュアな閉域網を要望するサービス提供事業者には、閉域網を構成するトンネル終端機能や端末認証機能を具備するコンテナを持つ仮想ゲートウェイをネットワーク利用開始時にオンデマンドに構築します。また、認証結果等に応じた経路振分やQoS(Quality of Service)制御等のネットワークサービス制御によりさまざまなサービス提供事業者の要望に対応可能としています。
    仮想ゲートウェイの生成や削除、設定変更のライフサイクル管理は制御用コントローラを介して実行可能としています。本制御用コントローラはWeb系アプリ開発で広く採用されるRESTful API(Application Programming Interface)を提供しています。開発に際してはキャリア特有の技術にこだわらずWeb系のプロトコルや技術を積極的に取り入れ、開発・メンテナンスコストの削減を図っています。

    ワンストップオペレーション技術

    2点目は、サービス提供事業者に対してネットワーク・クラウド・アプリケーション等の複数サービスを一括で構築・保全可能とするワンストップオペレーション技術です。本技術により、Northbound API(NBI)としてTMF(TeleManagement Forum)APIsに準拠したAPIを公開し、サービス提供事業者に対して連携させたいサービスごとの設定に必要なAPIの抽象化を可能としています。また、連携させたいサービスが増えた場合は連携サービスが有するAPIのTMF APIへの変換アダプタの追加のみで対応可能となります。さらに、監視・分析・判断・制御等のClosed Loopに従う保全機能も有しており、各サービスに適したオペレーション機能をマイクロサービスとして開発し組み合わせることで、例えば管理対象としているサービスの障害発生時には自律的な回復措置の実施まで可能としています。
    プラガブル基盤においては、ワンストップオペレーション技術が仮想ゲートウェイに必要な設定をデプロイ先の仮想化基盤に合わせて自動で生成することで、サービス提供事業者は仮想化基盤の差分等を意識せず、所望するネットワークの構築を実現しています。

    ネットワークサービス運用支援技術

    3点目は、仮想化基盤や各機器からのログ・メトリック等のデータを収集・蓄積し、分析・レポート・可視化、およびファイル更新や運用手順の自動実行等のネットワークサービス提供に必要となる運用支援技術です。本技術では、さまざまな仮想化環境に対応するために、OSや仮想化レイヤ、コンテナ、アプリケーションのそれぞれに適したツールの組合せ、入れ替えを可能とすることで、要件等の変化に柔軟に対応可能としています。構成管理ツールである Ansible 等を利用し、対象の環境の条件に合わせて柔軟に構築・管理できるようにしています。

    仮想化プラットフォーム技術

    4点目は、仮想環境上に配備したアプリケーションに対しキャリアサービスとして信頼性や保守運用性、性能を担保するために共通的に必要となる、ロードバランサやステート管理、故障復旧・死活監視のプラットフォーム技術です。本プラットフォームは Infrastructure as Code (IaC) により記述されており、インフラストラクチャ管理が自動化されることによりネットワーク系プラガブル付加価値基盤の機能の改善に集中することができます。

    ネットワーク系プラガブル付加価値基盤の今後の展望

    プラガブル基盤では、このような4つの基本技術に加え、ネットワーク全体を俯瞰した品質の可視化・制御やネットワークドメイン間で連携した故障分析など、さらなる研究開発に取り組んでおります。今後それらの技術についてもNIC Tech Talksで順次ご紹介予定です。また次回の記事でお会いしましょう。

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