CAMARA APIの提供モデル

2026/03/30

K.Arai

CAMARA

本記事では,当チームが現在参画しているCAMARA Projectで策定されるNW-APIについて,その提供モデルを解説します。


はじめに

前回記事 では,CAMARAプロジェクトとモバイル通信分野の主要団体(GSMA、3GPP)の役割と関係を紹介しました。

本記事では,アプリケーション事業者と通信事業者の接続形態に着目し,シングルオペレータ構成やアグリゲータ構成といったCAMARA APIの提供モデルを解説します。

CAMARA APIの提供モデル

CAMARAでは,Distribution Options として,4つのCAMARA APIの提供モデルが示されています1

提供モデルは,複数の通信事業者を束ねてアプリケーション事業者にNW-APIを提供するアグリゲータの有無で大別されるため,本記事では下図の「シングルオペレータモデル」と「アグリゲータモデル」について解説します。

シングルオペレータモデル

本モデルは,通信事業者が直接アプリケーション事業者に対してNW-APIサービスを提供するモデルです。

アプリケーション事業者視点でみると,技術面/運用面でそれぞれ以下の課題が挙げられます。現実的に本モデルの用途は,特定の通信事業者とSIM契約することを前提としたアプリケーションなどに限定されるといえます。

技術面

CAMARA APIでは,ユーザの識別に電話番号を使用します。以下は Number Verification API (いまアクセスしているデバイスのSIMがその番号かを確認するNW-API)のリクエスト例になります。

POST /number-verification/v0/verify HTTP/1.1
Host: <api-host>
Authorization: Bearer <3-legged-access-token>
Content-Type: application/json
x-correlator: 550e8400-e29b-41d4-a716-446655440000

{
    "phoneNumber": "+81901234567"
}

例えば,日本国内の携帯電話番号を対象にNumber Verification APIを使用したいアプリケーション事業者がいたとします。

しかし,事業者は携帯電話番号を見てもどの通信事業者にCAMARA APIを発行すればよいかわかりません。全ての通信事業者のAPI-GWにAPIリクエストを発行してみて成功応答がいずれかから返るのを待つ,あるいはエンドユーザに自分の携帯電話会社名を選択してもらうといった,コスト面やサービス面で望ましくない方式を採用する必要がでてきます。

運用面

本モデルでは,多くのケースで国内の全ての通信事業者と契約する必要があることから,各種手続きのリードタイムによりサービス提供のスピードが落ちたり,各通信事業者のAPI-GWと接続点を持つ必要があるため運用負荷が大きくなる,といった課題があります。

これらの課題を解決するモデルとして,アグリゲータモデルがあります。

アグリゲータモデル

本構成は,複数の通信事業者が提供するNW-APIをアグリゲータが束ねて,アプリケーション事業者に対してアグリゲータが一元的にAPIサービスを提供するモデルです。

アプリケーション事業者視点では,前述したシングルオペレータモデルの課題が解決されます。

CAMARAにおいては,通信事業者ではない企業がアグリゲータとしてカテゴライズされており,アグリゲータがクラウド事業者(CAMARAのカテゴリではハイパースケーラ)を通じてNW-APIを提供することが想定されています。

アグリゲータが提供する機能

アグリゲータは,いわばNW-APIの中継事業者に相当し,最終的にNW-APIを処理する通信事業者までAPI呼び出しを中継する機能,すなわちNW-API呼び出しのルーティング機能を提供します。

しかし,国内の電話の接続においては,その電話番号の加入者を収容している通信事業者の解決に通信事業者間ENUM2を使用していますので,これに相当する機能がアグリゲータには必要となります。

現状において通信事業者間ENUMのデータベースは通信事業者間でのみ利用可能なデータベースとして位置づけられているため,アグリゲータも通信事業者に解決機能を提供してもらう,といったことが必要になるかもしれません。

通信事業者視点でのメリット・デメリット

メリットとしては,アグリゲータを介することで市場が拡大し,グローバル企業を含めた多くのアプリケーション事業者にNW-APIを提供できるようになる点が挙げられます。

また,NW-APIの普及が進みアプリケーション事業者の利用が急増するような場合には,契約手続きの削減といったコスト面でのメリットが得られる可能性があります。

一方でデメリットとしては,各種裁量権がアグリゲータ/ハイパースケーラ側に移っていき,将来的にはサービス提供に困難が生じてくる可能性があるという点が挙げられます。

その観点では,国内向けには,CAMARAにおいてもアグリゲータモデルの亜種として定義されている,通信事業者がアグリゲータ機能を提供するモデル「オペレータ兼アグリゲータモデル」(下図)で提供し,海外向けにはアグリゲータ企業と連携してNW-APIを提供する,というモデルが通信事業者としては理想形なのかもしれません。

まとめ

本記事では,CAMARA APIの提供モデルについて解説しました。

多くのアプリケーション事業者にとっては,通信事業者を気にする必要がないアグリゲータモデル(ないしオペレータ兼アグリゲータモデル)が必須といえるでしょう。

一方で通信事業者にとっては,適用領域や市場の拡大を健全な形で進めていけるかが課題となりそうです。


チーム紹介

本記事は,NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト ノード処理基盤研究グループの RTC (Real-Time Commmunication) チームが執筆しています。 当チームでは,商用サービス開発とは独立した立場から,将来のRTCサービスを支える基盤技術の創出を目的としたコア研究として,RTC関連技術の研究開発および3GPPやCAMARA等における標準化活動に取り組んでいます。

本記事に関するお問い合わせは,下記アドレスまでご連絡ください。

お問い合わせ先メールアドレス