ネットワーク品質設計・管理技術

アプリケーション品質監視・可視化技術

①ネットワークオペレーションからサービスオペレーションへ

規格化された端末を用いた「電話サービス」では、サービス品質≒ネットワーク品質という関係が成り立ちました。しかしICT基盤としてのネットワークの品質は、その上で提供されるサービスの品質とは必ずしも一対一の関係になりません。つまり、ネットワークの品質だけを見ていても、お客様が快適に「サービス」を使えているかどうかはわからないことになります。そこで、サービス品質そのものを監視して、ネットワークの品質オペレーションにフィードバックするという考え方が重要になります。

概要図

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NTT研究所では、これまで培ってきた音声・映像の品質評価技術をベースに、クラウドなどの最近のアプリケーションのユーザ体感品質を定量化する技術の研究開発に取り組んでいます。これらの技術に基づいて、ネットワーク・端末・サーバの監視可能な性能指標からユーザ体感品質を推定【AP品質推定技術】することで、様々なサービスの実現品質を監視することができます。

②提供する品質から共創する品質へ

今後はICTリテラシーの高いユーザが増加することが予想されます。また、FMC(Fixed Mobile Convergence)やモバイルオフロードの進展や、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)等の新しい形態の通信事業者が登場することで、ユーザのネットワーク選択の機会が広がることが予想されます。

このような状況では、これまでのように事業者から「提供される品質」を享受するだけでなく、ユーザ自身も工夫・選択することで、実効的なユーザ体験(QoE)を向上させるフレームワークが必要であると考えます。つまりユーザと事業者が協働して「品質を創る」という発想です。

ユーザが工夫・選択するためには、判断材料となる「情報」が不可欠です。例えば、電車の利用者は、決められたスケジュールで電車が運行されていること(事業者提供品質)が最も大事ですが、マイカー利用者にとっては、渋滞情報や天気予報など、自らが旅程を判断するための情報が最も重要です。

このようなアナロジーで考えると、通信品質についても事業者からユーザに対して品質情報を提供する努力が払われるべきだと考えます。このためにはネットワークやその上で提供されるサービスの品質をタイムリーに捉え、ユーザにわかりやすい指標で表現する技術が必要となります。また、天気予報のようにネットワークの状態を予想する「品質予報」のような技術も有効かも知れません。さらに、このような情報をアプリケーションが利用することで、ネットワークに適応した品質制御が可能になるかもしれません。

このようなフレームワークを実現するためには、サービス提供実態をオンラインで把握し、その時のネットワーク・端末・サーバの状態とマッピングを取る技術【AP品質推定技術】、様々なユーザのサービス品質を分析することでエンドエンドの品質構造を分析する技術【QoSトモグラフィ技術】、ユーザがネットワークやサービスを選択する上で必要となる情報を抽出してそれをわかりやすく表現する技術【品質表現技術】、さらに情報を提供されたときにユーザがどのような行動をとるのかを予測する技術【ユーザ行動分析技術】などが必要となり、NTT研究所ではこれらの技術開発に取り組んでいます。

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