雑談対話技術

対話エージェントの個性の構築

私たちは他の人と対話するとき、対話内容から無意識に相手の個性を感じ取りながら対話しています。人はエージェント(ロボットやCGアバター)が対話相手の場合でも同じように個性を感じ取ろうとするため、対話エージェントもエージェント自身の個性を持ち、それに沿って発話することが求められます。私たちはエージェントが持つべき個性について、経験や知識、物事の判断基準、口調や身振りといった多様な観点の組み合わせで構成されるものと考え、それらを実現する研究に取り組んでいます。

複数エージェント協調による柔軟な対話制御

私たちが対話する相手は、必ずしも1人とは限りません。しばしば複数人のグループでも対話していますし、初対面の人が多いパーティーの場などでは、1対1よりもむしろグループのほうが話が弾む場合も多いでしょう。実はエージェントとの対話でも、3者(エージェント2台・人1名)の対話とすることで、あるエージェントが話した内容に別のエージェントが合いの手を入れたり、エージェント同士の掛け合いで話題を広げたりして、話を弾ませられることがわかっています。多数の人と多数のエージェントが共生する社会の実現を目指し、こうした複数エージェントの協調について研究を進めています。

対話相手の属性や話者間の関係性に合わせた対話の実現

私たちは、対話相手の属性(年齢・性別等)や,相手との関係性(初対面・友人・家族・上司等)に応じて、適切に話し方を変えながら対話しており、人と対話するエージェントにも、同様の配慮が求められます。例えば、対話相手が小さい子供の場合、大人に話すときと同じように話してしまっては、言いたいことはなかなか伝わりません。また、何度も対話したエージェントが、いつまでも初対面のように他人行儀のままであったとしたら、エージェントに親しみを覚えることは難しいでしょう。この課題に対し、エージェントが発話する話題や口調、身振りを、相手話者の属性や関係性に応じて調整する技術の開発に取り組んでいます。

知識や常識に基づく価値判断の実現

私たちは、他者との対話において、無意識のうちにお互いに知っているであろう知識を使って対話をしています。例えばAさんとBさんが散歩しているとき、BさんがAさんの靴紐がほどけているのを見たら、「あ、ほどけてるよ」と発話するでしょう。この発話には、「靴紐がほどけていると歩きにくいから結び直したほうがいいよ」といった意図が込められています。またAさんは、その一言だけで自分の靴紐がほどけていることを理解し、「ありがとう」とだけ返答し、結び直します。
このような、「靴紐がほどけたら歩きにくいから結ぶ」というような何気ない知識を背景とする対話は、人同士の日常会話で頻繁に行われており、人と同等の関係構築を目指す対話エージェントにも、こうした知識の獲得・活用が求められます。私たちはNIIのプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の英語科目への取り組みにおいて、大規模な文章の特徴を機械に学ばせる機械読解の技術を利用することで、常識や知識を含む問題の解答性能が向上することを確認しました。自らの知識や常識の獲得に加えて、相手の知識を推測しながら対話を進める技術の開発にも取り組んでいます。

センター英語本試験の成績変化