言語習得・社会的認知

言語習得科学:こどもがことばを覚える仕組みを解き明かす

ヒトが言語をどのように習得するのかは人間科学の分野でいまだにその全貌が明らかになっていない問題のひとつです。私たちは0-6歳児を対象として,視線解析に基づく実験心理学的手法や大規模データ解析などに基づき,(1)多様な発達を示す幼児(非定型発達児・日英バイリンガル児・人工内耳装用児など)の語彙/文法発達プロセス,(2)日本語文字習得プロセスの個人差と地域差,(3)乳児院/児童養護施設における言語インプット環境などの研究を進めています。こうした研究を通じて,ことばの発達を後押しするテーラーメイド教育支援技術の提案を行います。

社会的認知:感情や社会性の発達プロセスの特定

他者の感情や心的状態を把握することは対人コミュニケーションにおいて不可欠です。また他者のふるまいを参考にして知識を習得したり対人関係構築に活かしたりすることも社会生活には重要です。こうした能力をこどもがどのように習得していくかを明らかにするために,私たちは,実験心理学的手法や親子インタラクション解析などを用いて,(1)社会的手がかりに基づく学習(ナチュラル・ペダゴジー),(2)表情/感情音声の理解と感情知識,(3)向社会性/道徳/フレンドシップの発達,(4)ゴシップの理解,(5)社会的養護や生活史戦略などの研究を進めています。またこども園/幼稚園の協力を得て,感情知識テストや対人親密度などの測定手法の確立も進めています。

個別最適化した「パーソナルちいくえほん」

絵本の読み聞かせがこどもの言語発達を後押しすることはよく知られています。特に,こどもの興味や発達にあった絵本を読んであげることが重要です。私たちは,養育者からの報告に基づいてモデル化した「幼児語彙発達データベース」を用いて,お子さん一人ひとりの興味や発達に合わせて個別最適化した「パーソナルちいくえほん」を提案し,実用化しました(現在,4シリーズ計7冊をNTT印刷から一般販売中)。また地方自治体と協力して,家庭での絵本の読み聞かせが与える影響についても縦断的調査を行なっています。