私たちの生活は、「電話」によるコミュニケーションの時代から、多様な情報機器に囲まれた新しいコミュニケーションの時代に移りつつあります。そして、人と情報機器が扱う情報の量と質も著しく変化しています。こうした中で、人と人、人とコンピュータ、コンピュータとコンピュータ、それぞれに成立するコミュニケーションの本質を改めて考え直さなければなりません。さらに、情報を扱うための新しい理論と処理技術も必要になります。
そこで、NTTコミュニケーション科学基礎研究所では、「情報」と「人間」を結ぶ新しい技術基盤の構築に向けて、情報科学と人間科学の両面からこの問題に取り組んでいます。新概念の創出、新原理の発見による学術貢献、そして、新サービスにつながる革新技術の開発による社会貢献をめざしています。コミュニケーション科学の国際的リーダーとして国内はもちろん海外の主要大学、研究機関とも広く研究協力を行っています。
昨今の新型コロナウイルス感染症のパンデミックは私たちの生活様式や社会活動を激変させました。こうした中、多様な価値観を持つ人と人、人と機械、人と社会を繋ぐコミュニケーションと、これを支える技術はますますその重要性を増しています。
私どもNTT コミュニケーション科学基礎研究所では、人と人および、人とコンピュータとの間の「こころまで伝わる」コミュニケーションの実現に向けて、人間と情報の本質に迫る基礎理論の構築と、社会に変革をもたらす革新技術の創出をミッションとした基礎研究に取り組んでいます。
主な研究分野として、複数のメディア情報に跨るクロスモーダル情報処理に基づく状況理解や、感覚に訴える高度なメディア表現の実現(Media)、世の中に溢れる大量の言語情報と時々刻々と変化する実世界情報とを結び付けた広汎な知能処理の実現(Intelligence)、五感や知覚、運動にかかわる人間の脳や身体の情報処理機構の解明や、斬新かつ自然な知覚体験の提供 (Human and Brain)などに関するテーマに重点的に取り組んでいます。
これらの各研究分野において、NTTグループが掲げるIOWN構想実現に向けた新たなサービス創造に貢献するイノベーションの種を生み出すとともに、ますます複雑化し多様化する社会的課題の解決と科学技術の発展に寄与することをめざした基礎研究を持続的に推進してまいります。
このような研究の推進には、国内外の研究者や研究機関との連携によるオープンイノベーションが重要です。引き続き、グローバルかつオープンな研究所の運営に努力してまいります。今後とも一層のご指導、ご鞭撻賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。