更新日:2019/10/24
※記事本文中の研究所名が、執筆・取材時の旧研究所名の場合がございます。
1990年の第1回から数え、今回で30回目を迎えるつくばフォーラム2019。節目の年である今年は、「時代を支え 次代を拓く アクセスネットワーク 〜サービスを創出する世界最先端技術と、業務を変革する現場最先端技術〜」というテーマを掲げ、基調講演やパネルディスカッション、そしてNTTグループ各社および共催団体等105社の展示が行われます。NTTアクセスサービスシステム研究所(以下AS研)からは8プロジェクトが51の展示を行う予定で、その概要と、特に注目したい4つの展示についてご紹介します。
つくばフォーラム2019は研究所、NTTグループおよび共催団体等が出展する展示をはじめ、基調講演、第30回特別展示、パネルディスカッション、ワークショップなどが予定されています。今年はこれまで社会を支えてきたアクセスネットワーク技術を振り返ると同時に、ここから改めてNTTが将来のアクセスネットワークを切り拓き、“Your Value Partner”としてスマートな世界を実現していくという決意がテーマに込められています。
フォーラムは2会場で開催されます。つくば国際会議場では基調講演、AS研会場においてはAS研ほか、NTTグループをはじめとする共催団体等による展示が行われます。これまでのアクセスネットワーク技術の変遷と、AS研がこれから目指すアクセスネットワークについての大型パネル展示が目玉の一つ。つくばフォーラムは平成2年より開催されてきましたが、まさに平成の30年間の技術を俯瞰できる展示になっています。
昨年初めて開催されて好評だった技術交流サロン(パネルディスカッション)も引き続き行われ、「光ファイバケーブル」「無線」について、各社のさまざまな取り組み紹介やディスカッションを行います。昨年は立ち見も出るほどの盛況ぶりで、座席が限られているため早めの着席をおすすめします。ワークショップではNTTアドバンステクノロジのRPA事業、AS研の研究開発動向について紹介されます。
また、以前より隠れた人気となっているイベントが、スマートフォンを使ったデジタルスタンプラリーです。AS研会場内を巡り7個のスタンプを集めると、実際の電柱についている電柱番号札、通称「番札」を、個人名入りでその場でプリントしてもらえるのだとか。毎年早々になくなってしまう人気の品です。
AS研からは研究開発技術や成果が「将来アクセスネットワーク技術」・「支える技術」・「拓く技術」に分類して展示されます。その中で特に注目して欲しい4つのおすすめ展示について概要を紹介します。ぜひ足を運んでみてください。
電柱やケーブル全体をどのように改善し、寿命を伸ばして長期安全利用をしていくのか、これまでの技術者の経験値に頼る以外の技術確立が追求されています。
電柱は劣化や地面の状況、かかる荷重などさまざまな条件によって傾いたりたわんだりし、構造劣化が起こります。構造劣化が発生した電柱のみを取り替えるだけでは、年月を経て同じような構造劣化が起こることが考えられ、根本的な解決になりません。そこで、電柱を単体ではなくケーブルも含んだ設備の連なり(設備系)として捉え、電柱にかかる不平衡荷重と構造劣化のメカニズムを解明するための、検証設備をAS研に構築しました。屋外にある架空構造物総合検証設備では実際の電柱やケーブルに対して荷重を加える実験で、構造劣化がどこに、どの様に発生するかを定量的に把握することを目的として、構造物を3Dスキャンして有限要素法(FEM)を用いてシミュレーションし、計算精度を向上させる取り組みを行っています。
この展示は架空構造物総合検証設備において実際に見られます。実物大ならではのインパクトある展示は必見です。

地下設備の絶対座標を高精度に取得する技術の開発に関する展示を行います。
さまざまなケーブルが埋設された地下管路は、路側からの距離で記録されることになっていますが、道路線形が変わると管路の位置がわからなくなってしまうという問題がありました。それにより道路工事中の第三者加害事故の原因となる恐れもあり、管路の絶対座標を正確に取得する技術が必要となっています。
工事中の露出管路についてはGNSS(衛生測位システム)を用い、GNSS測定器とステレオカメラの組み合わせで管路の絶対座標を高精度に効率よく取得する技術を開発しました。この技術ではビルへの反射で生じるマルチパス信号をカットする仕組みの導入と、各種の補正信号を用いることで、実際の管路の位置と誤差が10cm以内の計測精度を確保しています。さらに、埋設されている管路の認識技術については、NTT先端集積デバイス研究所やNTTメディアインテリジェンス研究所と協力し、基礎的な検証も行っています。
この技術が完成すれば埋設管路を含めた地下設備データベースの見える化により、事故を減らすことはもちろん、設計業務や立ち会い業務、図面管理業務といった、さまざまな業務の効率化につなげることができます。また、国が進める建設現場の生産性向上などをはかることを目的とした、「I-Construction推進」によるデータのオープン化にも対応します。

ミリ波を用いた大容量無線通信に効果的な、無線基地局の送受信部と張出局(RF部)を分離する、ミリ波アクセス技術を展示します。
ミリ波帯の電波は伝搬損失が大きく伝送距離が短くなるため、無線基地局の高密度展開が必要です。これに加えて、従来はシステム毎に個別に基地局を設置する必要があるため、結果として膨大な数の無線基地局の設置が必要となることが課題でした。このため本研究では、無線設備数・運用稼働を抜本削減することを目的として、送受信装置と増幅器やアンテナなどによる張出局(RF部)を分離し、光ファイバを用いて無線信号をそのまま伝送する、Analog radio over Fiber(A-RoF)を用いたシステム構成を提案しています。集約局の信号処理部と張出局間のアナログRoF区間は伝送容量を増やさずに無線信号を送受信できます。また信号処理部を集約局に集約することで集約局では集中管理しやすくなり、張出局では小型化や省電力化、アンテナ方向調整フリーなどのメリットが得られます。
アナログRoFを利用することで低消費電力化、低コスト化をはじめ、異なる無線システムの連携協調や周波数割当、システムの切り替えが容易で、無線設備共用化なども視野に入れて検討が進んでいます。

将来の膨大な情報量が飛び交うスマートな世界を支えるため、将来のアクセスネットワークではあらゆる端末やあらゆる通信方式を収容することを目指しています。従来のネットワークではユーザーが使用する通信プロトコルなどの要件に応じて管理制御を個別に考える必要がありました。これでは新らたな要件が登場したときに通信事業者が再び管理制御の方法を考えなければならず、また技術の進展にすぐに対応しきれなくなるかもしれません。そこで、通信装置間の主信号と同じ波長かつ主信号に干渉しない管理制御信号を送信する、AMCC(Auxiliary Management and Control Channel)技術の研究開発を進めています。
これまでの研究ではAMCC信号を用いて、通信装置間の故障から迅速に復旧する実証実験に成功しています。新技術が登場しても種別を問わずに自動的に通信装置にケーブルを「すぐにつながる」「何でもつながる」の世界が、この技術の進展によって実現可能になります。

2019年10月31日(木)10時〜17時、11月1日(金)10時〜15時半
NTTアクセスサービスシステム研究所・つくば国際会議場[基調講演]
https://www.tsukuba-forum.jp/
NTT R&Dフォーラムとは異なり、つくばフォーラムは研究所に加え、NTTグループ、共催団体、その他出展企業105社がブースを出展します。研究所以外のアクセスネットワークに関する研究開発が見られるのも特徴です。また、AS研の研究開発分野は電柱やケーブル、管路といった屋外設備も対象となるため、広大な屋外スペースを使ったダイナミックでインパクトのある展示が見られるのも醍醐味です。デジタルスタンプラリーで電柱番号札がもらえたり、技術交流サロンがあったりと、参加者の興味を引く仕掛けやイベントが用意されているのも見逃せません。
2019年9月13日取材
魁生 佳余子