更新日:2023/09/29

海洋微生物繁殖予測技術NTT宇宙環境エネルギー研究所

目次

概要

これまでの地球システムモデル(ESM: Earth System Model)では考慮されていなかった、海洋微生物と物理現象との相互作用を含むモデルを構築しました。これにより、微生物多様性や数km規模の乱流渦を考慮した高解像度な海洋シミュレーションを実行することで、海洋微生物の繁殖予測を行います。

背景・従来課題

海洋微生物の繁殖・生育には、中深層から栄養塩を供給・撹拌する数km規模の乱流渦が無視できないと言われています。しかし、現在のIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)やCORDEX(The Coordinated Regional Downscaling Experiment)などで採用されているESMの空間解像度は最小でも10km程度であり、解像度が不十分な状況が課題となっています。
また地球全体の炭素固定量の約4割を担う植物プランクトンは、現在のEMSでは定数として簡易的に表現されています。このため、正確に再現するためにはプランクトン種別や遺伝的進化を考慮したシミュレーションが必要となっています。

本技術のアドバンテージ

  • 乱流渦の高解像度シミュレーションや微生物多様性モデリング技術の確立により、微生物の繁殖・生息分布の高精度推定や、海洋微生物と物理現象との相互作用の解明を行います。
  • 現状モデルでは未考慮である海洋微生物と地球気候の相互作用を取り入れることで、気候変動を加速させる転換点の予測や地球環境の未来予測精度の向上をめざします。

利用シーン

  • 観測データとのデータ同化した植物プランクトンの繁殖・生息分布推定に基づき、海洋炭素固定量や水産資源量の予測を高精度に行うことができます。

解説図表

用語解説

デジタルツインコンピューティング(DTC: Digital Twin Computing)
気象現象に関わる大気や海洋の状態と社会基盤上のモノやヒトの状態をサイバー空間上で自在に掛け合わせて演算を行います。これにより、これまで総合的に扱うことが できなかった組合せを高精度に再現し、気象現象の変化による社会基盤への影響の未来予測ができる技術です。

担当部署

NTT宇宙環境エネルギー研究所 レジリエント環境適応研究プロジェクト

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