概要
植物プランクトン分布を予測するための、沖合での大規模な海流変動の影響を含めた沿岸域における海洋シミュレーション技術です。海流や水温の変動だけでなく、プランクトンとの相互作用を加味した海洋シミュレーションにより、海洋生態系の根幹となる植物プランクトンの分布予測の精度向上に貢献します。また、スーパーコンピュータで計算した高品質なデータを用いて軽量な予測モデルを構築することで、沿岸での漁業や養殖へ及ぼす影響をリアルタイムに予測可能となります。
背景・従来課題
近年の気候変動により、海洋生態系の根幹である植物プランクトンの異常繁殖が発生しており、水産資源への被害の深刻化が指摘されています。このような現象を再現するには、まず沿岸域における細かな海流・水温の変動と植物プランクトンの相互作用による影響を基盤となる海洋物理モデルに組込む必要があります。そのうえで、沿岸域の細かな流動が、沖合での大規模な海流変動の影響を的確に反映している必要があります。私たちは、プランクトン分布を推定するための沖合を含めた沿岸海洋シミュレーション技術を構築し、リアルタイム予測のための軽量なモデル開発もめざします。
本技術のアドバンテージ
- プランクトンの光合成や呼吸といった代謝を表現可能な生物地球化学モデルを組込むことで、海洋物理モデルのみでは予測困難な赤潮といったプランクトン異常繁殖の予測が可能になります。
- 高精細に予測したい沿岸域に対して、大規模な海流の影響を解像した粗い広域シミュレーション結果を組込むことで、大域的な全地球気候変動の影響を反映した沿岸域の環境変化予測が可能になります。
- 高精細な海洋シミュレーションデータを用いて機械学習で構築した軽量モデルにより、豪雨による河口からの濁流流出といった突発的な現象に対する海洋への応答を、高精度かつリアルタイムに予測することを可能にします。
利用シーン
- 港湾整備による海流変化や沿岸排水による富栄養化といった環境変化が、水質悪化を及ぼすプランクトンの異常繁殖へ与える影響を精緻に予測することで、沿岸での漁業や養殖への影響を防ぐための水質汚染対策の策定に貢献します。
- 沖合で発生する黒潮の大蛇行による湾内への流れや水温変化の影響を高精細に予測することで、漁獲量予測に必要な沿岸域の植物プランクトンの分布を把握できます。
- 高潮・土砂流入などの急激な海洋変動が沿岸養殖などの水産業に与える影響をリアルタイムに予測し、即応性が求められる災害対応において、現場での予測と判断のタイムラグを最小限に抑えることができます。
解説図表
担当部署
宇宙環境エネルギー研究所 レジリエント環境適応研究プロジェクト