更新日:2024/09/05

生物多様性の保全に向けた海洋生態系未来予測技術NTT宇宙環境エネルギー研究所

目次

概要

海洋生態系における物質循環や海洋生物の生態、環境DNAなどの生物・化学的な対象を広域かつリアルタイムに観測し、複雑な海洋生態系メカニズムの解明に繋げます。さらに、海流などの物理現象と組み合わせて海洋全体をモデル化し、デジタルツインコンピューティング等でシミュレーションすることにより、海洋生態系の変化をリアルタイムに予測します。

背景・従来課題

地球環境を支える海洋生態系は、長期的な気候変動や日々の水温・日照量の変化、河川を通じた排水等からの栄養塩の流入といった影響を受け、常に変化しています。海洋生態系は多くの生物と環境要因が複雑に作用していることから、未解明のプロセスも多く、変化を定量的に捉え、未来を予測することは容易ではありません。海洋生態系の未来予測には、不足している観測データの拡充や、複雑な海洋生態系のモデル化・シミュレーションが課題と言えます。

本技術のアドバンテージ

  • 海洋での人間活動の影響を予測し、持続的な資源利用に繋げます。食物連鎖等からなる海洋生態系循環モデルを構築し、養殖場から海へ流れ出る有機物で成長促進される海藻の生育量を予測しました。将来的に様々な人間活動の影響を予測するモデルへ発展させます。
  • 気候変動や環境ストレスに対する生物の応答を予測し、適切な策を講じます。様々な人間活動のシナリオを想定した海洋生態系シミュレーションにより、今ある資源を持続的に利用できる具体策を示します。
  • 生物の行動や生息地の変化を予測し、生態系の健全性を評価します。養殖場での観測により得られるセンサデータ等を分析し、魚病の予測モデル作成に取り組んでいます。生息に適した水域の判定を小規模から実施します。

利用シーン

  • 環境保護と持続可能性:予測結果は生態系の変化を高精度に捉えているため、資源の適切な利用や生態系のバランスを回復させる施策の立案に寄与します。
  • 海洋利用と環境適応:海洋エネルギーなどの海洋を利用する機会の増加や気候変動の影響を考慮して、開発計画や持続可能な戦略の立案に寄与します。
  • 水産業と食料供給:観測データを元に、出荷量の算出や水域の評価、魚介類の資源管理などを行い、食料供給の安定化に寄与します。

解説図表

用語解説

デジタルツインコンピューティング(DTC: Digital Twin Computing)
気象現象に関わる大気や海洋の状態と社会基盤上のモノやヒトの状態をサイバー空間上で自在に掛け合わせて演算を行う技術です。これにより、これまで総合的に扱うことができなかった組み合わせを高精度に再現し、気象現象の変化による社会基盤への影響の未来予測を可能にします。

担当部署

宇宙環境エネルギー研究所 レジリエント環境適応研究プロジェクト

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