概要
NTTでは、自然災害に適応力を持つ都市の構築によるしなやかな社会を実現するために、様々な問題を明らかにし、地球環境の未来を革新させる技術の創出に取り組んでいます。
本技術では地球環境への影響が⼤きい海洋に着目し、海洋での気象観測・予測技術を⽤いて地球環境の変動に適応可能な社会の実現をめざします。
具体的には何千万のセンサから送られる膨大な情報を収集・分析し、地球規模でのシミュレーションにより、環境変化へプロアクティブに適応できるしなやかな社会を実現します。
「超広域大気/海洋観測技術」の確立に向けて、国や企業の研究機関・大学との共同実験や共同研究、メーカ系企業とのアライアンスを通じ、技術の需要性やユースケースを検証し、NTTグループの宇宙ビジネスの開拓へつなげていきます。
背景・従来課題
- 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって、2020年5月に革新的衛星技術実証テーマとして採択された「衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」をベースとし、地上通信インフラでは情報を収集できないエリアをカバーする通信インフラの検討や、超広域な衛星IoTデータ収集技術の研究開発が進んでいます。
- これらの衛星通信インフラ及びIoTデータ収集技術と、高精度・高機能な観測器を活用した「超広域大気/海洋観測技術」を掛け合わせた「衛星IoT地球観測技術」により、従来のリモートセンシングでは、質的にも量的にも必ずしも十分ではなかった海域での直接常時観測を実現していきます。水蒸気量、気温・気圧、風向風速、海水温など大気/海洋おいて広範囲にリアルタイムかつ直接的に観測をすることで、極端気象の予測精度の向上や気候変動等の課題解決に資するデータを収集します。
- 衛星IoT地球観測技術と市場ニーズや政府動向等とマッチングさせ、具体的なターゲットやアライアンス、オープンイノベーションを通じ、超広域大気/海洋観測技術を含む「衛星IoT地球観測技術」が社会的・技術的に有効であることを実証します。
- 将来的には超広域大気/海洋観測技術の要素である観測センサの超省電力化や環境にやさしく、海や大気などに設置が可能な衛星IoTセンサを活用し、全地球レベルの新たなセンシング技術を確立します。
本技術のアドバンテージ
- 海洋センサに衛星通信ユニットを組み込んだ衛星IoTセンサを搭載した、空中/水中ドローン、ブイなどの観測ツールの活用により、従来よりも広範囲かつ高頻度な測定を可能にする情報収集プラットフォームを実現します。
- IoTセンサ等を所望の位置に設置することで、きめ細かい気象観測を実施し、変化の激しい局所豪⾬や台⾵などの極 端気象の予測に資するデータ取得・データ同化*を実現します。 *データ同化:主に地球科学の分野において数値モデルの再現性を⾼めるために⾏われる作業。モデルに実際の観測値を⼊⼒してより現実に近い結果が出るようにすることを指す。
利用シーン
- 地球規模の観測データを活用し、大気、海洋、陸域での気象、気候、生態系などをモデル化し、地球環境シミュレーションによる未来予測を実現
- 台風・線状降水帯など極端気象の被害予測の高度化や災害情報提供への活用 関連技術:「極端気象に関わる観測・予測・適応技術」
- 観測データを活用した海洋の生態系、環境シミュレーションにより、地球環境の再生、生物多様性、生物資源の回復に向けた情報提供
解説図表
担当部署
NTT宇宙環境エネルギー研究所 レジリエント環境適応研究プロジェクト