更新日:2019/02/21

    データサイエンティストの分析プロセスを自動化し 分析業務を“ラク”にするデータ分析自動化技術「RakuDA」NTTソフトウェアイノベーションセンタ

    膨大なデータを収集加工・モデル化し、ビジネスに利活用するための分析を行うデータサイエンティストは、現代では欠かせない存在です。しかし需要が多く花形の職種ゆえに、人材不足となっていることが課題でもあります。これを解決する一助となるのが、深層学習や機械学習といった分野を研究領域とする、NTTソフトウェアイノベーションセンタの第二推進プロジェクトが開発した「RakuDA」です。データ活用・分析のプロセスを自動化し、データサイエンティスト稼働削減を実現する、革新的なツールとして注目を集めています。開発プロジェクトを牽引する3名の研究員に、「RakuDA」の開発経緯や技術についてお話を伺いました。

    話し手

    境 美樹 氏
    境 美樹 氏さかい みき
    石井 方邦 氏
    石井 方邦 氏いしい まさくに
    及川 一樹 氏
    及川 一樹 氏おいかわ かずき

    プロジェクトの背景

    「データサイエンティスト不足を、データ分析自動化技術でサポート」

    データサイエンティストは、膨大なデータの中から統計学やデータ分析等のスキルを使って隠された知見を探し出し、ビジネスへの利活用や、企業の課題を解決に導くことをミッションとしています。データを元に何がしたいのかを導き出すコンサルティングにはじまり、データ収集・加工、データ前処理、プログラミング、統計・機械学習といったスキルによるモデル化、さらには運用面までサポートする、総合力を備えたデータ分析・活用の専門家です。しかし社会的に分析ニーズは高まっているのに、求められるスキルが多いために育成が難しく、慢性的に人材が不足しているのが業界の課題です。また、試行錯誤を重ねて要件を満たす予測モデルを構築しますが、高い精度を持つ予測モデルを導き出すまでには、さまざまなデータ分析手法を駆使した上で最適なものを選ぶ必要があるため、時間がかかります。さらにデータの分析手法が体系化されておらず、人によって得意不得意分野もあるために属人化してしまうことや、優秀な人材に仕事が集中してしまう傾向があることも問題でした。

    そこで、データサイエンティストの人材不足を補い、またもっと簡単にデータ分析を行えないかと考えたのが、深層学習や機械学習の研究に取り組む第二推進プロジェクトです。研究チームのメンバーは2015年頃、ビッグデータを解析するソフトウェア「Jubatus(ユバタス)」を開発する過程で、データサイエンティストが日々似たような分析で試行錯誤していることに気づきました。この試行錯誤の中から可能な部分を自動化できれば、業務が効率化されてデータサイエンティストの負担が減るのではないかと考えたのが、「RakuDA」開発のきっかけでした。

    データ分析工程の“試行錯誤”と呼ばれる部分を自動化

    「3つの工程が『RakuDA』ならワンクリックするだけで終了します」

    通常、データ分析には6つの工程があります。

    1. 業務理解・課題設定
    2. データ収集加工
    3. データ前処理
    4. モデル構築
    5. モデル評価
    6. ビジネス利活用

    上記の中でも③〜⑤はデータサイエンティストによる試行錯誤の作業が続く工程になります。要件を満たす予測モデル構築のために、さまざまな分析手法を駆使して、まさに試行錯誤するという状態です。研究チームはここに着目し、この3つの工程を自動化したのが「RakuDA」です。まずはデータサイエンティストが2つ目の工程までを担い、データの収集加工によって1枚のシートにまとめられたデータをアップロードします。あとはワンクリックするだけ。「RakuDA」がデータサイエンティストの分析プロセスを模倣し、データ前処理やアルゴリズム選択、パラメータ調整を自動で行い、高精度な機械学習モデルを短時間で構築してくれます。これまで何日もかかっていたような作業が1日も経たずに完了できる、まさにデータ分析を“ラク”にしてくれるツールです。こうして自動化で作業が削減された分、データサイエンティストは人でなければできない工程に注力することが可能になり、大幅な効率化が見込めます。

    「RakuDA」の工夫点としては、各処理のステップで一番精度が高くなる方法のみを選択し、後続のステップを処理していくことで、処理の組み合わせ数をある程度の数に押さえていることです。例えばデータの前処理という工程でいうと、データにところどころ穴があり、欠損値補完する必要があったとします。その際、穴埋めの手法としては平均値・中央値・最頻値・無処理といった選択肢がありますが、愚直に処理を行うと、その全ての手法に対し後続のステップの組み合わせを実施するため、処理する組み合わせが膨大になり時間がかかります。それを「RakuDA」は一番精度が高くなる分析手法のみを残してステップをこなしていくことで、むやみに検証する組み合わせ数を増やさずとも、精度の良いモデルを構築することを可能にしています。

    製造業と訪問営業のユースケースで成果を確認

    「『RakuDA』の適用領域は多岐に渡ります」

    「RakuDA」は2018年5月に事業会社に成果提供されました。今回は2つの活用事例を紹介します。

    1. 製造ラインにおける製品品質予測
      工場の製造ラインにはセンサが設置されています。不良品を途中ではじくことで製造コストの削減が見込めるのではと、「RakuDA」で品質予測モデルを構築しました。各工程からセンサ設置場所の情報(センサの設置場所、使用した機器番号、使用したレーン)と、センサが取得した情報(材料投入量、測定した製品の特定部位の状態、生産機器内温度・湿度、製品温度、ガス温度)のデータを取得し、「RakuDA」が不良品予測モデルを構築。データサイエンティストなら10日かかるモデル構築を、1時間という従来の1/75の時間で行うことができました。
    2. 訪問営業における訪問戦略立案
      営業はどこの企業を訪問するか、何をどれだけ提案するか、営業担当者の経験値や勘がある程度重視されている世界で、担当者次第という属人化も課題です。そこで、顧客の企業情報や過去の受注情報、社員情報、日報情報といった受注パターンのデータを「RakuDA」が学習し、営業担当者ごとに受注確率が良さそうな商品を提案できる、オーダーメイドの訪問営業リストを作成しました。このモデルは、机上の計算では受注率を2倍にするという結果が出ました。次のステップとして実際にこれを使って提案活動に入っていますが、今後は営業の進捗状況データを追加することで、さらなる精度向上を目指します。

    今後の展開

    「機能を拡充した最新版を2019年にリリース」

    「RakuDA」は数値やテキストデータさえあればデータ分析が可能で、営業、製造業、通信や対話解析、医療支援など、適用できる領域はまさに無限と言えます。現状、データサイエンティストの負担を減らすツールですが、もっと気軽にデータ分析ができるようなレベルのものにしたいと研究チームでは考えています。社内の受注担当者やデータ分析を担うような人たちが簡単にデータ分析できる、そんな日常が将来的に叶えばいいと思っています。

    2018年11月に開催されたR&Dフォーラムでは100件を越える反響があり、データ分析ニーズと「RakuDA」への期待値の高さがうかがえました。2019年中には、GUIを充実させ、時系列データにも対応した機能拡充版をリリースする予定です。データ分析の自動化は業界全体で見てもここから発展していく分野です。今後は「RakuDA」を使ってもらえる企業をもっと増やし、ユースケースを蓄積して、さらなる進化をさせていきたいと思います。

    2019年1月28日
    魁生佳余子

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