更新日:2024/09/05

RTK-GNSS/IMU複合測位技術ネットワークサービスシステム研究所

目次

概要

周囲に構造物が存在する都市部のアーバン・キャニオン環境や高架下といったGNSS信号の難受信環境においてGNSS測位を補完するIMU(慣性計測装置)による相対測位を併用した複合測位により、高精度測位の可用性を向上します。クラウドGNSS測位によりGNSS測位解の信頼性判定を行い、RTK-GNSS測位解の有効解のみを複合測位演算に使用し、有効解が得られない場合はプロアクティブに自律航法(デッドレコニング:Dead Reckoning)状態に遷移することで誤差の小さい測位を実現します。

背景・従来課題

GPSをはじめとするGNSS(全地球航法衛星システム)は屋外環境における唯一の絶対測位手段であり、RTK-GNSS測位方式ではセンチメートル級の測位精度を実現可能です。しかし、周囲に構造物が存在する都市部のアーバン・キャニオン環境や高架下といったGNSS信号の難受信環境においてはしばしば数メートル以上の誤差が生じます。こうした誤差は地上付近の構造物と衛星の相対位置に依存し、真値を中心とした正規分布にはならないためカルマンフィルタ等の状態推定フィルタによる真値の推定は困難となります。GNSS測位を補完するIMU(慣性計測装置)を使用した複合測位においては誤差を含むRTK-GNSS測位解を使用し、複合測位解の精度に影響することがしばしばありました。

本技術のアドバンテージ

  • クラウドGNSS測位でRTK-GNSS測位演算と同時に測位解の信頼性判定を行い、信頼性判定指標をIMUに通知します。
  • IMUはRTK-GNSS測位の有効解のみを使用して複合測位演算を行うため誤差を最小化することができます。
  • RTK-GNSS測位解を使用した複合測位と自律航法(デッドレコニング)を最短で1Hz(1秒間に1回)の頻度で切り替えることができます。
  • IMUはRTK-GNSS測位解の使用の有無によらず、継続して複合測位解をNMEA(National Marine Electronics Association:米国海洋電子機器協会)センテンスで出力します。

利用シーン

  • 地中探査レーダー装置(GPR: Ground Penetrating Radar)による地下埋設物探査
  • MMS(モービル・マッピングシステム)
  • 自動走行・自律走行ロボット
  • 建機のマシンガイダンス
  • 精密農業・ロボットトラクター

解説図表

NSL0012_1.jpg

技術解説

GNSS(航法衛星システム)は屋外環境において3次元位置を計測できる唯一の手段です。特にRTK-GNSS測位方式ではセンチメートル級の測位精度が得られるため、測量以外にも様々なアプリケーションへ適用されています。しかし、周囲に衛星信号を遮る構造物が存在する環境では測位精度が劣化する課題があります。これは衛星信号を直接波として受信できる開空間領域が減少し、周囲の構造物で衛星信号が反射・回折するマルチパス信号を受信することが原因です。RTK-GNSS測位方式は周囲に遮蔽物のない、理想的な受信環境(オープンスカイ環境)においてはコンスタントに高い測位精度が得られますが、GNSS信号の難受信環境では測位精度が大きく劣化し、時には測位誤差が数メートル以上に及ぶことがあります。このため高精度測位を活用できる環境・エリアが制限される課題がありました。
GNSS測位のこうした欠点を補うためにIMU(慣性計測装置)を併用した複合測位方式の適用が有効です。IMUはGNSS測位が機能しない場合にも慣性計測により測位を継続できます。IMUによる相対測位精度はGNSS測位のようには周囲の環境には依存しませんが、経時的に単調に誤差が累積します。GNSSによる絶対測位とIMUによる相対測位を適切に組み合わせれば安定的に測位精度を維持できます。複合測位方式ではGNNSによる絶対測位とIMUによる相対測位の切り替え動作がポイントになります。従来は、GNSS信号の受信状態やGNSS測位解の状態により、受動的(リアクティブ)に切り替えが行われていましたが、しばしば動作に問題を生じました。例えばトンネルへの侵入では侵入直前にGNSS信号の受信状態が劣化し、誤差を含むGNSS測位解を出力するケースがあります。こうしたGNSS測位解使用した複合測位状態からIMUによる自律航法状態(デッドレコニング)に遷移した場合、誤差を含むGNSS測位解の影響でオフセット誤差が継続します。
本技術ではこうした課題を解決するためにRTK-GNSS測位演算をクラウド基盤上の測位エンジンで実行する「クラウドGNSS測位」アーキテクチャを適用し、測位解の算出と同時に測位解の信頼性指標を算出します。この信頼性指標はRTK-GNSS測位解と併せてIMUに入力され、IMUは信頼性指標に基づき、入力されたGNSS測位解を使用した複合測位演算を行うか、GNSS測位解を使用せず、自律航法(デッドレコニング)動作を行うかを決定します。このようにRTK-GNSS測位解の信頼性に基づきプロアクティブな自律航法動作へ切り替えることで先ほどのトンネルへの侵入のケースでも測位誤差を最小化できます。尚、本技術はRTK-GNSS以外の⾼精度GNSS測位⽅式であるPPP(Precise Point Positioning:精密単独測位) ⽅式等にも適⽤できます。

用語解説

GNSS
GNSS(Global Navigation Satellite Systems)は航法衛星測位システムの総称で米国のGPS、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国のBeiDouが含まれます。4機以上の衛星信号を同時に受信することにより地球上のどこでも時刻同期と測位を行えます。
RTK-GNSS
RTK(Real Time Kinematic)-GNSS測位方式はGNSS測位方式の一つで相対測位による搬送波位相測位方式です。基準局と移動局の観測データを使用して移動局の基準局に対する相対変位ベクトル(基線ベクトル)をリアルタイムに算出します。衛星信号の搬送波位相情報を使用することによりセンチメートルオーダーの測位が可能となり、理想的な受信環境では2~3cm程度の測位精度が得られます。
DOP値
DOP(Dilution of Precision)はGNSS測位精度の劣化の度合いを示す値で、精度劣化率とも呼ばれます。DOP値は天空上の航法衛星の位置や衛星数により変化し、値が小さい程、精度が高いことを示します。天空上に航法衛星がまんべんなく位置しているとDOP値は小さくなります。
IMU
IMUはInertial Measurement Unitの略で慣性計測装置のことです。加速度センサと角速度(ジャイロ)センサを搭載し、3次元の慣性運動(直交3軸方向の並進運動および回転運動)を検出する装置です。ジャイロセンサには MEMS、iFOG(interferometric fiber-optic gyroscope:干渉型光ファイバジャイロ)、RLG(リングレーザージャイロ)の種別があり、アプリケーションの精度の要件により使い分けられます。
複合測位方式
複合測位方式は絶対測位手段であるGNSS測位と相対測位手段であるIMUを互いに補完的に融合(フュージョン)する測位方式です。GNSSは絶対位置(緯度・経度・高さ)を計測できる唯一の手段ですが、測位精度には環境依存性があります。IMUは相対変位を計測する手段で精度に環境依存性はありませんが、経時的に誤差が累積します。

担当部署

ネットワークサービスシステム研究所 ネットワークアーキテクチャプロジェクト

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