更新日:2020/07/28

    波長あたりマルチテラビット級の超高速光伝送実現に向けた先端技術NTT未来ねっと研究所

    概要

    デジタルコヒーレント光伝送技術は、光通信に超高速デジタル信号処理を積極的に取り入れ、光ファイバ伝送性能を飛躍的に向上する基盤技術です。NTT未来ねっと研究所は、光ネットワークの長距離大容量化に向けて、デジタルコヒーレント光伝送方式による波長当たり600Gbit/sのリアルタイム信号伝送を実証しています。さらなる高速化・大容量化に向け、多値変復調技術に加えて、アナログとデジタルが融合した広帯域信号送受信技術を活用し、波長あたりマルチテラビット級の超高速伝送方式の実現に向けて研究を進めています。

    背景・従来課題

    移動体通信網の発展や動画配信などの広帯域サービスの普及により、通信トラヒックは増大しつづけています。経済的なネットワークインフラの実現のためには、光通信技術で実現されているバックボーンネットワークの大容量化が必須です。デジタルコヒーレント伝送技術の導入によって飛躍的に性能が向上した光通信技術ですが、急増するトラヒック需要を満たすためには、既に全国に敷設されている光ファイバ網に適用可能な高速化および大容量化技術が必要とされています。

    本技術のアドバンテージ

    • 低コストな大容量ネットワークシステムの提供が可能となります。
    • アナログ回路技術とデジタル信号処理の高度な融合により、超高速の高次多値信号を送受信でき、より長距離に伝送することが可能となります。
    • 将来のマルチテラビット級の高速サービスを1つの波長で提供します。

    利用シーン

    • 次世代光ネットワーク

    解説図表

    技術解説

    イーサネットをはじめとするクライアント信号の高速化が進んでおり、1Tbit/sを超えるような規格の議論が進展しています。それらを効率的に収容し、バックボーンネットワークを経済的に構築するために、光トランスポートネットワークの更なる高速化、大容量化が期待されています。

    デジタルコヒーレント光伝送技術は、受信された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理により受信信号の再生を行う方式です。高速光伝送においては、光ファイバ中で発生する波長分散や偏波モード分散による波形歪が伝送距離を制限する要因となっていましたが、デジタルコヒーレント伝送では、この波形歪をデジタル信号処理により補正することにより、伝送性能の向上、高信頼化が可能となります。NTT未来ねっと研究所では、大規模集積化された超高速のデジタル信号処理技術を開発し、波長あたり600Gbit/sの高速化に成功しています。これは最大64値の直交振幅変調を採用した偏波多重光信号により、周波数利用効率を向上させており、光ファイバ1本あたりの伝送容量の拡大が可能になっています。

    現在、シリコンCMOS半導体の帯域限界が見えてきており、送受信器の性能向上率が緩やかになっています。クライアント信号であるイーサーネットの更なる高速化を見据え、シリコンCMOS半導体回路による限界を打破可能な、デジタル信号処理とアナログ回路技術を高度に融合した超広帯域多値信号の送受信技術の研究開発を進めています。システムおよびデバイス研究部門の密な連携により、帯域拡張回路と半導体光直交変調器を一体モジュール化集積を行うことで、波長あたり1Tbit/sを超える長距離波長多重伝送を世界で初めて実証しています。今後は、波長あたりマルチテラビット級の超高速伝送システムの実現と光バックボーンネットワークの更なる大容量化を目指しています。

    担当部署

    NTT未来ねっと研究所 トランスポートイノベーション研究部

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