更新日:2020/12/18
石崎 晃朗(いしざき てるあき)/ 中園 翔(なかぞの しょう)/ 内山 寛之(うちやま ひろゆき)/ 小宮 輝之(こみや てるゆき)
半導体の集積率が18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」が限界に達し、CPUシングルスレッドの性能は頭打ちになっています(図1)。ポストムーア時代を迎えてGPUやFPGAなどのハードウェアが進化して次世代のコンピュータのあり方が模索されています。一方で、CPUを中心に発展してきた従来のソフトウェアでは、特定用途に特化したハードウェア向けに最適化されていないため性能を十分に発揮できないこともあります。そのため、私たちはさまざまなサービスやアプリケーションを支えるコンピューティングシステムを実現するためにはハードウェアの進化だけでは不十分であり、これらの先進的なハードウェアの能力を引き出すソフトウェアの革新との両輪によって実現することが必要と考えています。具体例として、NTT物性科学基礎研究所と取り組む光を用いたイジング型計算機という新しいハードウェア(1)、および、 NTT先端集積デバイス研究所と取り組む光インターコネクト技術(2)と、それらの技術を効率的に活用するソフトウェアとの両輪により、これまで計算困難だった組合せ最適化問題の解決や情報処理システムのさらなる性能向上をめざす研究開発を実施しています。
NTTが掲げるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想では、超大容量・超低遅延・超低消費電力を特徴としたネットワークと情報処理基盤の実現をめざしていますが(3)、ネットワークの高速化だけではなく、データ処理にかかる処理遅延の低減化や処理の高効率も解決すべき大きな課題となっています。これらの課題を解決するためには、高速化や省電力化に限界のある従来のコンピューティングアーキテクチャを抜本的に見直し、用途に応じて多様なハードウェアをソフトウェアで柔軟に組み合わせて活用することで高速・高効率なデータ処理を行うディスアグリゲーテッドコンピューティングの実現が必要となっています。この新しいコンピューティングアーキテクチャでは、リアルワールドの多種多様なデータを安全に結び付けて、価値を創出するサービスを高速・高効率に実現できるだけでなく、電力効率を最大化させることで持続可能社会へ新たな価値を創出することも可能となります。
NTTソフトウェアイノベーションセンタ(SIC)では、ソフトウェアの変革を通じたディスアグリゲーテッドコンピューティングの実現に向けて、①CPUだけに依存せず特定用途に特化したハードウェアをソフトウェアで柔軟かつ効率的に活用してデータ処理を行う技術、②多数のコアを持つCPUをソフトウェアにより並列処理で性能を引き出す技術の開発を行っています。本稿では、①の取り組みの1つであるメモリセントリックコンピューティング技術から重要な要素技術として「不揮発性メモリを活用したストレージI/O性能向上」と「高速インターコネクトを活用したネットワークI/O性能向上」を、②の取り組みの1つである高速トランザクション処理技術から「トランザクショナルストレージライブラリLineairDBのOSS(オープンソースソフトウェア)化」について紹介します。
近年、次世代高速ストレージであるSCM(Storage Class Memory)といわれる、DRAM(Dynamic Random Access Memory)に近い遅延時間でアクセス可能でかつ、NAND Flash SSDと同程度の大容量化が可能な、不揮発性のストレージとして利用可能なメモリデバイスが注目されています。SCMの中でもDIMMスロットへ直接挿すタイプの製品として、Intel Optane PMEM(Persistent Memory)が2019年に販売開始されています。…