更新日:2020/11/20
ミクロンスケールの微細な半導体立体構造を作製し、その機械的な機能を用いた新原理の素子開発をめざしています。具体的には、非常に純度の高い半導体結晶を用いて超微細な機械構造素子(例えば板バネの構造を持った素子)をつくり、そこに光・電気・機械の3つの物性を融合することで発生する新しい物理現象を発見・解明し、その原理を応用した新しい素子を開発することをめざしています。半導体材料を用いると、電圧を加えることで物体を膨張・収縮させることが可能となります。この効果は圧電効果と呼ばれますが、もともと半導体が有している光電気的な性質と合わせることにより、光、電気、機械振動の3種類の信号の変換が可能になります。光と電気の相互作用に機械的な振動という新たな自由度が加わることで、新しい物理現象が発現し、超高感度の電気・光・分子センサや新しい信号処理技術への応用技術が拓かれます。さらに、電子の量子力学的な性質が出現する量子井戸や量子ドットなどの半導体量子構造との融合により、新しいハイブリッド量子素子への応用も可能になります。
私たちの研究では、機械振動を引き起こす微細構造素子として、学術的かつ実用的な観点両面から注目が集まるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)*1や微細化をさらに進めたNEMS(Nano Electro Mechanical Systems)を用いることにより新しい応用技術の研究を進めています。これまでに、MEMSに対してレーザに類似した原理を適用することで非常に高精度・高品質な超音波振動を出力できる超音波レーザ(SASER : Sound Amplification by Stimulated Emission of Radiation) (図1)や、機械素子の微細な動きから僅かな重さや電荷の変化を検知できる超高感度センサ(図2)、弾性振動を用いたメモリやプロセッサといった信号処理素子等、さまざまな機能性機械素子を実現してきました。
光のフォトニック結晶*2の概念を、物質の弾性振動である「フォノン(音や振動、熱の媒体)」の制御に応用した「フォノニック結晶」と呼ばれる人工結晶は、フォノンが伝搬を担っている音や振動、熱等を制御できる新しいカテゴリーの機能素子として注目されています。このフォノニック結晶は、異なる弾性体をミクロンスケールで周期的に配列した人工構造(図3)ですが、従来のフォノニック結晶ではその動作を外部から電気的に制御することが困難であったことから、動的デバイスとしての応用は限定されていました。私たちは振動特性の電気的制御が可能な半導体MEMS共振器をフォノニック結晶の基本素子として用いることにより、フォノンの伝搬を電気的に制御することに世界で初めて成功しました。…