更新日:2020/10/16
※記事本文中の研究所名が、執筆・取材時の旧研究所名の場合がございます。
田中 秀典(たなか ひでのり)/ 北原 正樹(きたはら まさき)/ 草地 良規(くさち よしのり)
NTTメディアインテリジェンス研究所では、これまで音声・音響・言語・画像・映像等のメディアを処理する技術の研究開発に取り組み、さまざまな技術を実用化してきました。近年では、コンタクトセンタにおけるオペレータ支援(1)やAIエージェントの実現(2)(3)、緊急通報システムにおける集音(4)、4K・8K放送における映像圧縮装置(5)などの事業貢献を行っています。
しかし、昨今市場環境は大きく変化するとともに、競争も激化しています。各産業において、デジタル化によって既存の仕組みを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)が進みつつあり、昨今の新型コロナ禍によってさらに取り組みが加速していくことが想定されています。また、深層学習(ディープラーニング)の登場によって第三次AIブームが起こり、AI技術の基本アルゴリズムは誰でも活用できるようになっています。さらに、性能に寄与する学習データはGAFA(Google、 Apple、 Facebook、 Amazon)を代表するプラットフォーマによって大規模に収集されており、AIの性能が日々向上する世界が実現されています。これらの外部環境に対して、NTTグループでは、中期経営戦略においてSmart World実現に向けB2B2XやDXの取り組みを推進しています。さらには、革新的な技術によってスマートな世界を実現するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を提唱し推進しています。
このような背景を踏まえ、NTTメディアインテリジェンス研究所では、これまでメディア処理における研究開発で培った技術やノウハウを活かして、価値の源泉となる人の活動を支援・代替するためのAI技術の研究開発に取り組むとともに、中長期的な新しい価値の創出をめざしたデジタルツインコンピューティングの研究開発に取り組んでいます(6)。本特集では、人の活動を支援・代替する領域に向けたAI技術の研究開発について紹介します。
人の活動を支援・代替するAI技術の適用領域については、いくつかのシーンが考えられます。例えば、効率化として、これまで私たちが取り組んできたコンタクトセンタにおけるオペレータの生産性向上やAIエージェントにとどまらず、オフィスの業務プロセス改善や生産性向上、また新しい価値として生活の質の向上などがあります。さらには、昨今の新型コロナ禍によって、在宅勤務やオンライン会議等が浸透していくとともにその在り方が変容していくことも考えられます。
こういったシーンにおいて、現行のAI技術を適用するだけでは、実現が難しいことがあります。例えば、より個人やその環境に即した支援・代替を実現しようとすると、個人や環境にかかわるデータを取得する必要性がありますが、多量のデータが取得できない場合があり、そのような条件下で性能を出すのは容易ではありません。また、音声認識技術1つをとっても、電話と会議では、音声をテキスト化するだけで事足りるのか、誰が話しているのかまで認識する必要があるのかなどの違いが出てきます。オンライン会議となるとさらに求められる性能や要件の違いが出てくる可能性もあります。
そこで、NTTメディアインテリジェンス研究所では、少量データから効率的に学習を行う技術、新しい効果を生み出す技術、既存技術の性能にブレークスルーをもたらす技術に着目して取り組みを始めています。…