更新日:2020/9/14

    あなたの声はどんな声?
    どんな声でしゃべりたい?NTTコミュニケーション科学基礎研究所

    NTT技術ジャーナル2020年9月号:特集「AIと脳科学であなたをもっと知る―人に迫り人を究めるコミュニケーション科学」より

    田中 宏(たなか こう)/ 金子 卓弘(かねこ たくひろ)/ 北条 伸克(ほうじょう のぶかつ)/ 亀岡 弘和(かめおか ひろかず)

    非言語情報を「変換」する

    音声は、言語情報だけでなく話者性などの非言語情報も伝達できるという大きな特徴を有し、利便性に特に優れたコミュニケーション媒体であるため、人々がお互いにコミュニケーションを取るうえで基本的なツールの1 つとなっています。発話することで、自分・相手の意図や感情を、伝える・理解することができるため、音声の特徴(例えば、抑揚や声質・リズム)をその時々で変化させることで、 相手へ与える印象を変えることもできます。 しかしながら、一個人の生成できる音声の表現力は身体的・能力的・心理的制約により制限されてしまいます。この制約を超え、発話者が所望の音声で思いのままに表現できるよう能力の拡張を行う技術が音声変換です。その適応先は、話者性の変換や発声障がい者補助、感情などの発話スタイル変換、語学学習のための発音・アクセント変換など、多岐にわたります。これらの利用シーンに応じて、 変換したい音声特徴・学習データ・リアルタイム性に関する要件など、さまざまな前提条件が想定されます。私たちは、高品質であること、少量データ・非パラレルデータで学習可能であり効率的であること、リアルタイムに音声変換が動作すること、声質だけでなく抑揚やリズムといった超分節的特徴などの柔軟な変換が可能であること、上記の4 点が音声変換において重要な要件であると考えています。以降、これら4 点に着目した私たちの具体的な取り組みについて紹介していきます(図1 )。

    1. 非パラレルデータ: 入力音声と目標音声とで発話内容が異なるデータ(非同一発話文)を示します。
    図1 音声× 深層生成モデルの取り組み
    図1 音声× 深層生成モデルの取り組み

    音声× 深層生成モデルの取り組み

    従来技術において代表的なものは、混合ガウス分布に基づく統計的声質変換(1)です。入力音声の特徴量から目標音声の特徴量への変換関数を得るために、事前に時間整合をとった入力音声と目標音声の同一発話文(パラレルデータ)を用意することで、両音声の特徴量の同時確率を記述したモデルです。また、 近年では、前述のパラレルデータを必要とする枠組みにおいて、性能改善のため、ニューラルネットワークを用いた手法や非負値行列因子分解などを用いた事例ベースの手法の検討も進められています。しかしながら、これら従来技術には、①学習データとして同一発話内容の音声ペアが必要であったり、②変換可能な音声特徴が声質に限られていたり、 ③音声の特徴量から波形を合成する際に古典的なボコーダを用いているため、合成される音声と実音声は容易に聞き分け可能であるなど、技術的制約があります。…

    ■参考文献

    1. (1)T. Toda, A. W. Black, and K. Tokuda: “Voice conversion based on maximum likelihood estimation of spectral para- meter trajectory,”IEEE Trans TASLP, Vol. 15, No. 8, pp. 2222-2235, 2007.

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