更新日:2020/8/21

    オールフォトニクス・ネットワーク、光電融合技術のめざす未来NTT先端技術総合研究所
    NTTデバイスイノベーションセンタ
    NTT先端集積デバイス研究所
    NTT物性科学基礎研究所

    NTT技術ジャーナル2020年8月号:特集「IOWN構想特集 ─オールフォトニクス・ネットワーク実現に向けた光電融合技術─」より

    寒川 哲臣(そうがわ てつおみ)†1/ 富澤 将人(とみざわ まさひと)†2/ 岡田 顕(おかだ あきら)†3/ 後藤 秀樹(ごとう ひでき)†4

    NTT先端技術総合研究所 所長†1/ NTTデバイスイノベーションセンタ 所長†2/ NTT先端集積デバイス研究所 所長†3/ NTT物性科学基礎研究所 所長†4

    IOWN構想とは

    NTT R&Dは、多様性を受容する豊かな社会の構築をめざしています。多様性に満ちた新たな世界を可能とするのは他者への理解であり、理解を深めるためには他者の立場に立った情報や感覚を得ることが大きな助けになるでしょう。研究開発を通じてこの世界を実現するためには、これまで以上に高精細で高感度なセンサにより多くの情報を得ることはもちろん、人間の感覚や主観にまで踏み込んだ情報処理が要求されます。
    このような将来像に向けて、NTT R&Dは新たなコミュニケーション基盤であるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を提唱しました。光を中心とした革新的技術で、超大容量・超低遅延・超低消費電力を特徴としたネットワークと情報処理基盤の実現をめざしており、2030年の実現に向けて、パートナーの皆様とともにさまざまな議論を始めています。
    IOWN構想は次の3要素から構成されています。ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクスベースの技術を導入する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、あらゆるものをつなぎその制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション(CF)」、実世界を表す多くのデジタル情報を掛け合わせ、モノやヒトの相互作用をサイバー空間上で再現・試行可能とする新たな計算パラダイム「デジタルツインコンピューティング(DTC)」です。対象となるレイヤはそれぞれ異なっていますが、これら3要素が組み合わさることで、新時代のネットワークと情報処理が実現できると考えています。

    APNの重要性

    IOWN構想の3要素の中で新たな光通信と情報処理の基盤となるのがAPNです。APNの大きな特徴は、従来の「エレクトロニクス」から「フォトニクス」への転換により、ネットワークから端末のエンド・ツー・エンドで、最大限光技術を導入することで、低消費電力かつ高速な情報伝送と情報処理基盤の実現をめざします(図1)。低消費電力化については、後述する光電融合技術の導入により、電力効率を100倍にすることが目標です。また、伝送容量については、1つのファイバ中に多くのコアを並べたマルチコアファイバやコヒーレント用光送受信器(COSA: Coherent Optical Sub Assembly )などの開発によって、125倍に高めることをめざします。さらに、例えば遅延が許されないデータ伝送についてはデータを圧縮せずに伝送することで、エンド・ツー・エンドでの遅延を200分の1に減らすことをめざします。

    図1 オールフォトニクス・ネットワークの目標可能性
    図1 オールフォトニクス・ネットワークの目標可能性

    APNのめざす世界観

    APNが実現すると新たな活用シーンの誕生が期待できます。革新的な大容量化により、これまではデジタル変換の段階で意図的にデータ量を削減していた情報を、より原信号に近い精細な状態で送受信することが可能になります。…

    関連するコンテンツ