更新日:2020/03/01
情報通信サービスの進化を加速する、新たな光アクセスネットワークの研究をチームで進めています。
システムの性能や柔軟性を抜本的に高める要素技術、アーキテクチャの研究、そして、グローバル連携の活動を通じて、新たな光アクセスネットワークの実現・普及をめざしています。現在の光アクセスネットワークでは、バスの乗客が駅で電車に乗り換えるように、通信ビルで中継ネットワークにトラフィックの乗せ換えをしています。将来的にアクセスネットワークと中継ネットワークを融合させることで、トラフィックを乗せ換えることなく、必要な場所まで光信号のまま伝送できるようなネットワークをめざしています(図1)。
光アクセスネットワークは、これまで、FTTH(Fiber To The Home)と呼ばれるブロードバンドサービスの発展を支えてきました。モバイルインターネットの時代になり、「有線の光ネットワークはもういらない」と思われるかもしれませんが、通信ビル内の設備と、5G(第5世代移動通信システム)のアンテナや次世代の無線LANのアンテナ等はすべて光ファイバのネットワークでつながっていきます。また、工場の機械や各種のセンサ、交通システムや電力システムなど、あらゆるものがネットワークでつながっていくことを考えると、帯域や遅延などの要件はこれまでよりも一層幅広いものになっていくでしょう。このような背景から、光アクセスネットワークは、FTTHの基盤から、多様なサービスやシステムに共通のアクセス基盤になるとの考えのもとに、将来に向けて光アクセスネットワークを進化させるべく研究開発をしています。
具体的な取り組みとして、まず、これまでよりも、広帯域、低遅延といった幅広い要件にこたえていくために、光アクセスネットワークの伝送性能の抜本的な向上にチャレンジしています(図2)。一例として、我々のチームでは、世界初となる光アクセスネットワーク向けのリアルタイムデジタルコヒーレント光送受信回路を実現しました。デジタルコヒーレント受信方式は、バックボーンネットワークの大容量伝送で用いられていますが、アクセスに適用する際には、別々のONU(Optical Network Unit)から送信されたパワー差の大きい間欠的な信号(バースト信号)を受信する必要があります。バースト対応のコヒーレント受信回路に加え、リアルタイム信号処理回路を考案・開発することで、パワー差20 dB(100倍)以上の20 Gbit/sの信号を誤りなく伝送することができました。光通信関連では世界最大級の国際会議ECOC2016において、アクセスネットワーク分野でトップスコアの評価を得ています。
さらに、ネットワークの柔軟性を抜本的に向上させるために、伝送機能のソフトウェア化に取り組んでいます(図2)。伝送機能をソフトウェア化して汎用サーバやPCといった汎用機器上で動作させることができれば、帯域や距離のニーズに合わせて伝送機能の入替、組合せ、チューニングといったことが圧倒的にやりやすくなり、最初にお話ししたような、好きなところまで光でアクセスできる新しいネットワークの実現のキーになると考えて、研究を進めています。東京大学と共同研究を行い、画像処理や機械学習で使われるGPUを活用するとともに、新しいアルゴリズムの検討も進め、現行のアクセスシステムではもっとも処理が重い誤り訂正に関して、処理速度10 Gbit/sを達成して、通信関連の基幹国際会議であるGlobecom2016にて伝送/アクセス/光委員会ベストペーパ賞の評価を得ました。さらに、デジタル信号処理(DSP)の高速ソフトウェア処理を実現することで、世界で初めてソフトウェアでデジタルコヒーレント光伝送を実現し、光通信で世界最大の国際会議OFC2018で、アクセスネットワーク分野においてトップスコアの評価を得ています。
チームメンバの頑張りで良い成果が出せています。光アクセスネットワークの性能向上に関しては、現在のFTTHシステムが導入された2004年ごろから、どうやってアップグレードしていくべきかという議論がありました。私もそのあたりから検討を始めて、10年以上研究しています。この間にモバイルネットワークが台頭しましたが、こうした時代の流れに先んじて、2010年前半には光アクセスネットワークの柔軟性向上に関する研究を開始しました。この間、常に良いチームで研究開発を進めてくることができました。…