更新日:2020/03/01
伊藤 耕大(いとう こうた)/ 菅 瑞紀(すが みずき)/ 白戸 裕史(しらと ゆうし)/ 北 直樹(きた なおき)/ 鬼沢 武(おにざわ たけし)
無線伝送容量のさらなる拡大のためには、広い帯域幅を確保できるミリ波*1などの高周波数帯の電波を利用することが効果的です。しかし、電波は高周波数になるほど伝搬距離が短くなるため、高周波数帯無線システムで広いエリアをカバーするためには、無線基地局を高密度に設置する必要があります。また、従来は無線システムごとに無線基地局を設置する必要がありました。そのため、多様化するニーズに伴って高周波数帯無線システムが多様化していくと、膨大な数の無線基地局が設置されることになってしまいます。
そこで、設置すべき無線基地局数や運用稼働の抜本削減を目的とし、複数の無線システムが無線基地局を共用できるようなシステム構成を提案しています。
本稿では、提案するシステム構成と、このシステム構成で高周波数帯無線システムを収容するときに必須となる遠隔ビームフォーミング技術について紹介します。
アナログRoF(Radio-over-Fiber)*2とは、光信号を無線信号で強度変調し、無線信号のかたちをした光信号を光ファイバ伝送する技術で、伝送した光信号をO/E(Optical-to-Electrical)変換*3するのみで元の無線信号を取り出すことができます(図1)。
このアナログRoFを適用することで、従来の無線基地局の機能を集約局(信号処理部)と張出局(アンテナ部)に分離することができます(図2)。従来の無線基地局は、アンテナ・増幅器・E/O、O/E変換・信号処理という機能を持っていました。アナログRoFを適用して信号処理機能を集約局に集約することで、張出局の機能簡易化が可能になります。これにより、張出局の小型化・低消費電力化による設置性や経済性の向上が期待できます。
また、無線システム依存の信号処理機能を集約局に集約することで、張出局には無線システムに依存しない共通機能のみを残すことができます。そのため、アンテナや増幅器の対応する周波数の範囲であれば、複数の無線システム間で張出局を共用することが可能になります。
さらに、無線システムの新設や更改などの対応も、集約局側のオペレーションのみで行うことができるようになり、効率的な無線システムの展開・運用が可能になります。
これらにより、無線基地局数や運用稼働・コストの抜本的な削減が期待できます。
伝搬距離の短い高周波数帯無線システムでは、ビームフォーミング*4が必須となります。従来の無線基地局は、信号処理部にこのビームフォーミング機能を持っていました。アナログRoFによる機能分離・張出局簡易化を行った場合、信号処理機能を持たない張出局のビームフォーミングをどう行うかが課題となります。そこで、張出局が形成するビームを集約局で遠隔に制御することができる遠隔ビームフォーミング技術を提案し(1)、(2)、検討を進めてきました。…