更新日:2020/02/01

    つくばフォーラム2019 ワークショップ
    多様なサービスを支えるワイヤレス技術
    鬼沢 武(おにざわ たけし)
    NTTアクセスサービスシステム研究所
    プロジェクトマネージャ

    はじめに

    無線通信システムを通信インフラとして活用するニーズや利用シーンは拡大を続けています。特に、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、移動通信のトラフィックは増加を続けています。無線サービスの発展と私たちの生活への浸透について図1に示します。過去の無線サービスは加入者系や中継系などに代表される電話サービスが中心でした。その後、無線サービスは生活により身近なものとなり、セルラシステム、衛星システム、無線LANなど、さまざまな無線サービスが独自に発展し広く普及してきています。今後は、これらの無線システムが連携、融合する時代が来ると考えられます。従来の無線システムに加え、UHF帯からミリ波帯まで幅広い低周波数帯から高周波数帯の活用、さらには、新たなシステムとして低軌道衛星技術、RoF(Radio over Fiber)技術の活用、高密度な無線LANなどが融合した時代が来ると考えられます。これらの無線サービスへの期待が高まる中で、NTTアクセスサービスシステム研究所では、あらゆるものが無線接続された、より利便性の高い世界の実現に向けて、無線の特長を活かした研究開発を進めています。
    一方で、特に、東日本大震災以降は、災害対策に向けた研究開発に注力してきました。お客さまへの影響が甚大な広域災害発生時に通信インフラを迅速に復旧、構築するための災害対策用無線システムに関する検討を進めています。従来の災対関連システムの老朽化やスプリアス規格の改正もあり、各種無線システムの高度化を図ってきたところです。
    これに加えて、無線通信システムの利用シーンが広がることに対応して、近年では、より高い伝送速度を実現するために、より高い周波数であるミリ波を活用した技術の検討も進めています。まず、都市部のトラフィック急増に向けた検討です。将来は多数の設置が必要になると推察されるスモールセル向け通信基地局に接続される無線エントランスへのミリ波の適用検討です。光回線の代替として無線エントランス回線をスモールセル向け通信基地局に接続することで柔軟な基地局配置を実現します。さらには、集中無線基地局でソフトウェアなどにより無線送受信機能を実現する高周波数帯アナログRoF技術の検討も加速させています。基地局の消費電力を抑えて、張出局の小型化、低消費電力化といった携帯基地局の利点を継承する方向で検討を進めています。
    また、衛星通信システムにおいても、東日本大震災以降、衛星通信システムが持つ本来の特長である通信の広域性や即時性などに注目が集まりました。当時の衛星通信システムでは、関連装置類の老朽化や保守運用性の陳腐化が課題となっていました。したがって、災害対策用、さらには、光回線の敷設が困難な離島用の地球局に適用する高効率な信号処理装置の開発を進め、システム化を推進してきました。近年では、将来の通信への活用を探るべく、低軌道衛星への衛星通信システムの適用検討を開始しました。
    無線LANでも、従来のアンライセンス帯での通信手段としてだけではなく、大きな飛躍を遂げています。無線LANはユーザの展開力が非常に大きなシステムです。新たな展開により豊かなサービスを提供しています。
    本稿では、私たちが取り組んでいる、これらの無線技術についての研究開発動向を紹介します。

    図1 無線サービスの発展と生活への浸透
    図1 無線サービスの発展と生活への浸透

    VHF/UHF/マイクロ波帯無線システム

    ここでは、VHF/UHF/マイクロ波帯を用いた研究開発について紹介します。まず、東日本大震災以降に注目をされた広域災害用のUHF帯を用いた災害対策システムについて説明します。次に、2018年7月に起こった西日本豪雨でのマイクロ波帯システム含めた活用事例を示します。
    NTTグループの重要課題として、災害に強いネットワークづくりと早期復旧手段の整備があり、無線通信技術の災対活用では装置の機動性や早期復旧に強みがあります。一方で、設備の老朽化や専門スキルを持った人材の減少が進んでおり、設備更改や作業性・保全性の向上が求められていました。…

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